新型コロナウイルスの感染拡大により逼迫を続ける医療提供体制。実は現在、ほとんどの病院でコロナ感染症以外の入院患者との面会が制限されており、終末期のガン患者などが苦痛を和らげるため入院する緩和ケア病棟に至っては、実に98%の病院が面会制限を行っている。
去年3月に大規模な院内クラスターが発生して以来、より一層の注意を払って治療を続けてきた永寿総合病院のがん診療支援・緩和ケアセンターでは、“オンライン面会”のサポートを行っている。患者とその家族に残された、限りある時間。それを一緒に過ごすことができない現状に、医師としてどう向き合っているのだろうか。センター長の廣橋猛医師に話を聞いた。
・【映像】家族と過ごせない...コロナ禍で苦しむ終末期医療の現場とは
「最期の時間を大切なご家族や友人と一緒に過ごせない、あるいは亡くなる間際に手も握ってあげられないということについては、自分自身、ひどいことをしている、人権侵害なのだろうなと思っている」と話す廣橋医師。面会をめぐる葛藤と苦悩について、つぎのように明かす。
「面会は患者さんの権利だし、できるだけ面会させてあげようという気持ちは人間なら当たり前のこと。それを大事にしながらも、病院の機能を維持していくためには感染を広げないということも大切だ。この1年半、そこにどう折り合いをつけるか模索を続けてきた。現在は一定のルールの下、コロナ以外の方も含め、亡くなる時期が近づいた場合にたまにお会いいただけるようにしている。事前に発熱がないか、濃厚接触はないかということを電話でお聞きした上で、玄関まで来ていただいた際にも問題がないか診察し、その上でマスク、手袋、ガウンを着ていただき、時間、人数を制限してお会いいただく。
みなさん“ようやく会えた”と喜んで下さるものの、事前にそういった病状であるということはお伝えしているし、15分で終わり、ということもあり、お帰りになられる時には感謝されつつも、やはり暗い表情されている。玄関までお見送りをする時には、“我々が悪いわけではない”とは思いながらも、“あまり会わせてあげられなくてごめんなさいね”と謝ってばかりだ。医療者はみんな会わせてあげたい、でも会わせてあげられないので謝るしかない。患者さんもご家族もつらいし、我々もつらい。
また、以前なら“そろそろ臨終が近いからみなさん集まってください”と言われたご家族が泊まり込むというようなこともあったが、今はできない。“呼吸が止まられました。お顔を見に来てください”という形で、お別れをしていただく状況だ。“それでも全く会えないよりは”と感謝してくださるが、自分としてはすごく切ない気持ちになる」。
そんな中、廣橋医師らは“オンライン面接”を導入させるため、クラウドファンディングを実施。およそ200の施設にタブレット端末を配布することができた。
「電話では声を聞くだけだが、やはり“百聞は一見にしかず”で、意外と元気そうな顔をしているとか、笑ってくれたと安心してくださる。一方で、触れるということができないことでの限界も感じていて、本当の意味での喜びにつながってはいないと思っている。ルールに関しても、“こうすれば大丈夫”という答えがない以上、全国的に統一されたものはなく、感染対策の部署からすればできるだけ厳しくしたい、患者さんの気持ちを大事にしたい立場からするとできるだけゆるくしたいというせめぎ合いの中、互いに尊重しながら話し合って決めるということを続けてきた」。
ワクチン接種が進んでいけば、いずれ面会のあり方も変わってくるのだろうか。
廣橋医師は「ゼロコロナというのは難しいだろうというのは、みんながコンセンサスとして持っていると思う。そうなると、これは政治の仕事なのかもしれないが、ある程度のリスクを容認しつつ、コロナで重症化しなくなった、死なない病気になったという共通認識を誰かが強く発し、“強めのインフルエンザ”くらいのイメージになれば、病院も対応できるようになる。もちろん感染対策はしなければならないが、面会についても多少の制限はあっても一応できる、という世の中が来ることを祈っている。
現時点では、また以前のように面会ができるようになるのはだいぶ先なのかなと思っているが、これまでのように話し合いをしながら、ワクチン打った人、検査をこまめにやって大丈夫な人については、今の波が終わったらできるだけ面会できるようにしたいと思っている。ただ、ワクチンを打っていても人に感染させるという可能性が分かっている以上、もう1つプラスアルファの工夫が必要だろうと思う。飲食店やイベントの門戸がITの技術によって開かれるのであれば、病院の面会についても開いてほしいし、国で細かいルールを決めるといったことも必要ではないか」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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