ABEMAMIX出演の合間に、HIPHOPライター 渡辺志保 氏がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!
ーまずはアルバム『ZIP CLOCK』のお話から聞かせてください。めっちゃ大掛かりなプロジェクトでしたよね?
D.D.S:そうですね。去年の5月から丸一年かけて仕上げて行きました。
ーしかも、普通のレコーディングとは違う、変則な作り方で。どんなきっかけを経て作ったアルバムですか?
D.D.S:去年の先ごろって、みんな、コロナでスタジオに行けなくなっちゃったじゃないですか。今よりも状況が分からなかったし、「うわ、どうする?」って言いながら、だんだんスタジオに行けなくなったり、体調を崩し始めるヤツらがいたりして「リアルにヤバくなってきたな」と。
その時に、「これは長引く な」と思ったんですよ。で、俺の予測としては、この状況に対応して、適応して行かなきゃならない、と考えて。
それまで、普通に進めていたプロジェクトがあったんですけど、こんな緊急事態の時に今までと同じようにラップしていてもあまり伝わらないんじゃないかと思って。
もともと、AbemaMixのMCをやっていたこともあって、インターネットの可能性をすごく感じていたんです。 だから、こういう状況だからこそ全てリモートで楽曲を作っていこう、と決めて。ビートも公募で選んで、100曲とか200曲とか送られてきて。で、せっかくならその工程も記録に残そうと思って、一緒にインスタのライブを使って制作していく様子も公開していったんです。
ゲスト・ラッパーのみんなとはビートを選ぶところから一緒に始めて行きました。
ーしかも、みんなが訳も分からず閉塞感を抱えていた時期ですよね。今もそうですけど...。
D.D.S:そんな時期だからこそ、ラッパーはいい作品が生まれるってこともあるじゃないですか。現状に強く反発するからこそ、というか。
ー計24組ものラッパーが参加していますよ。MULBEさんやお馴染みの名前もあれば、S-KaineさんやJASS THA JOINTZさんといった若手も。
D.D.S:これまでに「曲作ろうよ」と声を掛けたけど、そのままになっていたラッパーにも声を掛けていって制作を進めました。みんな、認め合う瞬間があった人間ばかりだし、友達ですしね。
ーリリックの内容も、社会に物申すスタイルと言うか、いつもより鋭い切り口 で。今の時代だからこそ、こうした姿勢の楽曲を作るのは、ラッパーの使命でもあるのかなと思いました。今回は、『ZIP CLOCK』という大きなタイトルの下に、14曲入りの「ONE HALF AMAZING」と13曲入りの「SECOND SAGA」という二つの作品が分かれている、いわば二枚組のような形式を取っています。
D.D.S:最初は一枚にしたかったんですけど、27曲もあるので全て合わせると110 分くらいのボリュームなんですよね。 それで2枚組にしようと思って前半と後半”ONE HALF AMAZING”にはタイトル通り驚きと”SECOND SAGA”には意志を。
今回の作品では、ラッパーがPRODUCER・DJみたいに曲順を決めるっていうところも強調したかったんです(制作過程の中でBANDCAMPでプリプロとして曲を当日に発表していたのも相まって)。
「ONE HALF AMAZING」は1曲目から逆に聴いてみると、全然違う印象になると思います。 シングルとして楽曲を売ることを強く考えている人が多いと思うんですけど、 俺はアルバムを基準にして曲を作っているタイプ。
だから、曲順のヤバさ自体 も一つのスキルとして見せたかったんですよね。
ー今回、全てをリモートで制作してみて新たに発見したことは?
D.D.S:リモートは全然使えるなっていう。もちろんデメリットもありますけ ど、同じモチベーションの人間が同じようにやったら(リモートでも)絶対に悪いものはできない。
ー今や、D.D.SさんはAbemaMixのMCとしてもお馴染みの存在です。
D.D.S:今は週に二回、隔週で出演しています。
ー当たり前ですけど、クラブの現場でやるサイドMCとはちょっと勝手が違いますよね?
D.D.S:NOBU (DJ NOBU aka BOMBRUSH!)さんやIZOHさん、(DJ) SPITE...全員、色が違うじゃないですか。
だから、それぞれのDJが持っている雰囲気やスタイルを大事にしながら、あんまり自分が前に出過ぎないようにしています。 インターネットの視聴番組なので、画面を観てる人、音として楽しんでる人も 居るミックスの番組なのでラジオみたいな雰囲気を意識してますね。
あと、曲の元ネタについて喋ってみたりとか。最近ならSean PriceのFigure4ネタを DMXの最新のアルバムにGriseldaの面々と使ってたりとか、JIM JONESネタがKashi da handsome さんと被ってたり。
解り易く言うとPop Smokeも「What You Know Bout Love」でGinuwineの 「Differences」をサンプリングしていたり、、Pop Smokeしか知らない世代に向けてそのネタのことを補足情報として喋ったりしています。逆も然りですね。 面白いですよね。
ー今年の7月には、2014年にN.E.Nとしてリリースした1stアルバム『N.E.N』も アナログ化されましたが、このきっかけは?
D.D.S:元々、いつでも出せる感じだったんです。でも、MULBEも俺も、立ち止まれなくて振り返れなくて、うまくタイミングが掴めなかった。そこで、レー ベルのA&Rから改めて「出そう」と提案されて、「ここで一回蹴りをつけよ う」と。
よく聞かれるんですけど、N.E.Nは別に不仲になったわけでもないし、かと言って、現時点で2ndアルバムを作っているわけでもない。今、お互いがやるべきことをやる時期だと思ってるんですよね。
ー逆に、グループでの活動に執着しないスタイルがお二人らしいのかなと思いました。
D.D.S:N.E.Nがラップするのは、絶対にブーンバップのビートじゃいけないっていう法則みたいなものがあるんです。それは最初に作った二人の方向性でもあり、目標でもある。ルールを制限しているので、その中で暴れる面白さがある。それがモットーなんですよ。
ーアナログ化のタイミングで、BLAHRMYを迎えた「SQUARE ONE」のMVも発表されて。
D.D.S:この曲は、元々アルバムに入っていた曲。俺たちがストレートにヒップ ホップだと思っているものこそがブーンバップなんですよね。ブーンバップとい った時に出てくるのがBLARHMYで、彼らのことは同じ2MCのユニットとして、「あいつらすごいな」って思っていたんです。”square one”ってフレーズには、”振り出しに戻る”とか”一から始める“って意味がある。
だからタイトルの意味も込めて、BLARHMYを呼んで(N.E.Nを)締めようと思って。
ー逆にそういったエピソードを聞くとN.E.Nの新作が待ち遠しくなりますけどね。D.D.S さんとしての次のムーヴは?
D.D.S:今はもう、福岡のGQってやつと新しいアルバムを作ってます。現行のゴリゴリなヒップホップをやってる感じです。(ニューヨークの)クイーンズっ ぽさがあるかもしれないですね。思わず「うおーっ」てなるような。