DaiGoさんの弱者侮蔑発言の背景に“勝ち組負け組論”や“自己責任論”か…EXIT兼近大樹「子どもたちが攻撃の理由にしてしまうのが怖い」
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 「自分にとって必要のない命は僕にとって軽いんで」。「メンタリスト」として活動するDaiGoさんが発した、ホームレス生活を送る人や生活保護受給者への差別的発言。

・【映像】ホームレス蔑視発言、現場で何が?EXIT兼近大樹と考える

 「インフルエンサーが“辛口”と言えば許されるかのように差別発言を行うのは度し難い。強く軽蔑する」「勘違いしている若い人は賛同してそうで怖い」といった批判の声が殺到する一方、偏見に基づく言動は昔から無くなることはない。実際、去年11月には東京・渋谷区のバス停で60代の女性が男に殴られ死亡、今月23日には新宿区歌舞伎町の路上で60代男性の頭を踏みつけたなどの疑いで15歳の少年が書類送検されている。

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 DaiGoさんの発言、その後の議論を受け、生活困窮者への支援を行う「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」では、若者によるホームレス襲撃事件が相次いでいた2009年に制作されたドキュメンタリー作品『「ホームレス」と出会う子どもたち』の無料公開を始めた(YouTubeで9月30日までの期間限定)。映像には、「簡単には寝れない。1mくらいの所からエアガンで撃たれるんだから。まともに当たったら目が潰れるよ」と恐怖を訴える当事者の生の声も。

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 宮下公園(東京・渋谷区)で一時期、ホームレスとして暮らしていた経験のあるEXIT兼近大樹は「僕は仕事に就けなかったわけでも障害があったわけでもないし、社会的に見捨てられていたわけではないので、戻れる場所もあった。その意味では、自ら選んでホームレスになった側だった。実際にホームレスの人たちに触れてみると、それぞれ理由、背景が違っていた。DaiGoさんの場合、ちゃんとした家庭に生まれて、真っ当に生きてきた人だろうから、そういうことが全く想像できなかったんだろうし、同じような人は世の中にいっぱいいると思う。逆に言うと、僕も最初に“何でこんな事を言うんだよ”と思ったが、実はDaiGoさんの背景を知らないことに気がついた。そういうことも含めて、社会全体の問題だなと感じた」と話す。

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 埼玉市を拠点に生活困窮者の支援活動を行ってきたNPO法人「ほっとプラス」理事の藤田孝典氏は「兼近さんもおっしゃったように、生活保護を受けている人やホームレスの人たちのことを知らない人は非常に多い。中には精神障害や知的障害などの困難を抱えている人もいる。そういった事情、背景を抜きにして、全てを一括りにして“いない方がいい”だとか“税金の無駄で邪魔だ”などと扱うのは許されることではないと思っている。まして影響力の強い方なので、今回のことによって新たに酷い事件が起きないか危惧している。実際、DaiGoさんの発言の後、ホームレスの当事者の方や生活保護を受けている方から不安の声が寄せられている。多いのは、精神疾患のある方からの“不安で眠れなくなった”、“生きていていいのだろうか、自殺を考えてしまった”といった相談だ」と話す。

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 こうした差別的言動が繰り返される理由について藤田氏は「勝ち組・負け組」「落ちぶれたのは自己責任」といった思想があるからではないかと指摘する。

 「ホームレスへの暴行事件などを起こした少年には、頑張って働いて、収入がたくさん得られている人が素晴らしい人、税金をたくさん払っている人が価値ある人なんだという誤った価値観、そして、そうではない人や負けた人たちはいなくなるべきなんだという価値観をもとに、それを手助けすることが良いことなんだ、正義だと考えている部分がある。そこは繰り返し、しつこいぐらいにダメなことなんだ、いけない思想なんだと強調する必要があるし、当たり前のことだが、全ての人が平等で、人権があるということを伝えていかなければならない。我々はそういうことをどうしても忘れてしまい、“頑張ればなんとかなるんだ”と思ってしまいがちだ。おそらくコロナ禍が終われば、“怠けていたから倒産したんでしょ”という意見も出てくると思う」。

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 厚労省は今年、1月時点で全国のホームレスの人数が3824人と、2003年に調査を始めて以来、最も少なくなったと発表している。しかし藤田氏は「実態よりも少ないと思う」との見方を示す。

 「厚生労働省に対しても、調査のやり直しを要望している。例えばネットカフェで生活をされている方や友人宅を転々としている方もいるし、季節によって外で生活できるかどうかが変わるので、夏は比較的増えやすいといった事情もある。コロナ禍によって、飲食店を経営していた方がホームレスになってしまったという事例もある。あくまで"最低でも"という数字として認識してもらった方がいいし、他人事として見てはいけない。自分はいつどうなってもおかしくない、ということを知ってほしい」。

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 生活保護という制度そのものへの無理解もなかなか解消されていない。

 「日本の生活保護受給者の比率は全人口の1%~2%と、5%~10%程度いる欧米各国に比べて低い。そういうこともあって、教育の場面も含め、当事者の声が聞かれることはほとんどない。だからこそ生活保護を受けることは恥ずかしいことだと感じてしまう状況にも繋がっている。我々も時間をかけて説得しているが、本当はもっと多くの方に窓口に相談に行って欲しいし、行政が用意している様々な制度を利用してほしいと思っている。いきなりは不安だという方は我々のような支援団体やNPOによる相談窓口や炊き出しもある。そういったものを利用することは恥ずかしいことじゃないんだと強調したい」。

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 藤田氏の話を受け、兼近は「それこそ少年時代に非行に走っていた側としては、やっちゃダメだということはある程度、理解はしている。その上で、でもやりたいという時に、何が必要かと考える。弱者をいたぶりたい子どもたちが何を言い訳にしようかと考えた時に、“いや、僕らは正義なんだ”と、後付けの理由に使ってしまうんだと思う。大人たちが正義だと言っているのだから、それを理由にすれば攻撃していいだろうと。それがすごく怖い」とコメント。

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 また、実業家のハヤカワ五味は「大人の中には、なんで自分が稼いだお金を人に渡さなきゃいけないんだと、他の誰かがもらっていることを受け入れられない人もいると思う。DaiGoさんの場合も、“自分には関係ない”ということを話していたが、むしろ生活保護というセーフティーネットを受けられる人が増えれば増えるほど治安も良くなっていくのではないか。ホームレスの方が家に住めるようになれば、DaiGoさんが“臭いから嫌だ”ということも無くなるのではないか」。

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 フリーアナウンサーの柴田阿弥も「自己責任論にも繋がるかもしれないが、昔から日本では努力・根性とか、コツコツ頑張れ、と言われてきたこともあり、真面目な人が多いと思う。かつ、他の国に比べて人種のバリエーションも少なく、終身雇用。だから格差はあったとしても、他の国に比べたら大きくはない。そういう環境にいるので、貧困は個人の問題だと思ってしまう人が多いのかもしれない。でも、努力したくてもできないという境遇の方だっているし、そこを改善していくことが社会で活躍する人材も増え、将来の国の利益にもなってくる。変化が早い時代になって、大きな会社であっても潰れるかもしれないし、自分が5年後にどうなっているかも分からないというのは、コロナ禍で多くの人が実感したことだと思う。貧困の問題は努力よりも社会的な要因が大きい。誰しも病気になるし、高齢者になる。だから社会全体で支えて生存権を保障する。そういう社会の仕組みが、ゆくゆくは自分のためにもなるという理解が広がれば変わるのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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