すでに東京はピークアウト? クラスター対策班メンバー「感染者が多すぎて一部の接触者が見逃されている」
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 若者が予約なしでワクチン接種を受けられる渋谷の会場に、連日長蛇の列ができている。対象は都内在住などの16歳から39歳で、10月8日まで新型コロナのワクチン接種を予約なしで受けられる(※現在は先着ではなく抽選)。

【映像】“予約なし”でOK ワクチン接種会場に若者が大行列(現地の様子)※冒頭~

 東京都の直近7日間の1日あたりの平均は3784人で、前の週と比べて80%になった(※29日時点)。一部で「感染はピークアウトしたのではないか」といった声も上がっているが、専門家はこの状況をどのように見ているのだろうか。

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 ニュース番組『ABEMA Prime』に出演した京都大学ウイルス・再生医科学研究所特定准教授で厚生労働省クラスター対策班の古瀬祐気氏は「まず、単純に感染者の数が減ったことは喜びたい」とコメント。その上で「ピークアウトかどうかは分からない」と話す。

「感染者数が減ったのは、おそらく多くの方が自粛を頑張って、大勢で集まる機会を避けたり、会食の頻度を減らしてくれたり、協力してくれた結果だ。その点にまず感謝しなければならない。ただ、ピークアウトしたかどうか、断言できない理由も残念ながらたくさん思いつく。本当に感染者が減っているのかどうか、それが分からない。保健所の職員や友人の医師に聞くと、感染者の数をもう数えられていられないくらい増えてしまった現実がある。重症者に関しても、本当は重症で人工呼吸器をつけたいのに足りていないケースもある。そういう中で、数字が本当に実態を表しているかどうか、分からない」

 東京都が繁華街などで実施しているモニタリング検査では、コロナ陽性率が7月第1週の約18倍になり、テストした人の5人に1人が陽性だった。この状況について古瀬氏は「今は感染者数が多すぎて、接触者の調査が一部の自治体でできていない」と危機感を露わにする。

「接触者は、陽性者つまりウイルスを持っている人と一定期間、近くにいた人だ。そういう人たちを検査すると陽性になる確率が高くなっている。その人たちを検査して陽性率が高いということは、より一層、(陽性の可能性がある)接触者を見逃している可能性が大きい。数字は注意して見なければいけない」

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 発表されている数字の裏に隠れた“接触者”の存在。さらに、デルタ株だけではなくラムダ株といった新しい変異株の感染者も報告されている。

「ラムダ株は不安か、と聞かれると不安だが、新型コロナの対策をしっかり行えば、デルタ株もラムダ株も同じように減るはずだ。『デルタ株が減ったら、次はラムダ株が増えるのでは?』といった懸念が指摘されているが、デルタ株だけの対策はできない。だから、(デルタ株への対策は同時にラムダ株への対策となるため)デルタ株だけ収束して、ラムダ株だけ残る可能性はそんなに高くないと思う。ワクチンの効果は、従来株と比べてデルタ株に関してもラムダ株に関しても同じくらい低い。一方で、デルタ株と比べてラムダ株にワクチンが効きづらいといったデータはまだない」

 古瀬氏は厚生労働省のクラスター対策班で流行分析も行っている。古瀬氏によると「人が動く要素には“2つの確率”が入っている」という。

「1つは接触機会。1人の人が1日に会う数だ。それから、会ったときにウイルスが実際にあるかどうかの感染の確率。この2つの数を見てシミュレーションしている。みんながワクチンを打っても会う人の数は変わらないが、もし出会った相手がワクチンを打っていれば、そこで感染が起こる確率はぐっと下がる。マスクの着用率が上がっても同じことが起きる。また、飲食店などが時短営業になったときは、会ったときの感染確率は変わらないが、会う人数が減る。パラメータを出して、感染拡大の要素を分析している。もう少し細かく説明すると、同年代の人同士は会いやすいといった要素も入れて分析している」

 過去最大の第5波はこのまま下火になっていくのだろうか。今後の見通しについて、古瀬氏は「私のシミュレーションでは、感染者の数は増えていく」とコメント。毎日150万人近くの国民がワクチンを接種する前提で「あまり良くないシミュレーションだが、残念ながら、ワクチンをすごく速く打って効果が出る想定を入れても、この結果だ」と述べた。

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 飲食店などに求められた時短営業は、意味があったのだろうか。

「私がやっている計算は『接触機会が何%落ちたら1カ月後にこうなる』や『マスクの着用率が何%上がったら1カ月後ににこうなる』といったものだ。時短営業によって、接触機会を20%に抑えられるかどうか、それは一切示していない。私は、接触機会を20%に下げられれば『1カ月後に流行が1000人以下になりますよ』と数字を出しているだけだ。これに基づいて公衆衛生の専門家が『これを達成するために時短営業がいいのではないか』と考える。その案を持って今度は分科会に行く。(今は)分科会に行くと経済の専門家がいたり、企業の社長さんがいたり、自治体の首長さんがいる。そういう方々と話し合って『じゃあこうしましょう』と出た結果が時短営業だ。だから、私がやっている分析と、実際に行われた時短営業の間には、かなり大きな乖離がある」

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 また、自身が出しているシミュレーションについて、古瀬氏は「メッセージは込めていない」と断言。そもそもクラスター対策班に給料はなく「私たちは政府に雇われておらず、(政府への忖度を避けるために)無給でやっている。(シミュレーションが)外れたら『謝罪しろ』とか『辞めろ』と言われるが、そもそもお金をもらっていない状態で辞めるも何も、謝罪するも何もない」とコメント。シミュレーションを外したからといって、減給等は一切なく、一般の雇用とは違う旨を明かした。 (『ABEMA Prime』より)

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