「菅総理が土俵際いっぱいに追い詰められているのは間違いない」 “9月中旬解散説”は“誤報”だったのか?
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 「最優先は新型コロナ対策だ。今のような厳しい状況では解散(総選挙が)できる状況ではない」「総裁選挙の先送りも考えていない」。1日朝のぶらさがり会見で、記者たちにそう答えた菅総理。

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「菅総理が土俵際いっぱいに追い詰められているのは間違いない」 “9月中旬解散説”は“誤報”だったのか?
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 この前夜、“9月中旬解散意向”、あるいは“9月中旬解散検討”との報道が相次いだことを受けてのコメントだが、自民党総裁選と衆議院の任期満了が迫る中、それぞれがスケジュール通りに実施されるのか、あるいは菅総理が解散総選挙に打って出るのか、水面下では様々な思惑が駆け巡り、駆け引きが行われているようだ。

 来週6日にも自民党の役員人事、内閣改造に踏み切るとの観測も出ており、「殿ご乱心。いや、ご乱心どころじゃない」と話す自民党関係者もいるようだ。菅総理の胸の内について、1日からフリージャーナリストとしての活動をスタートさせた元日本テレビ政治部記者の青山和弘氏に話を聞いた。

■封印せざるを得なくなった菅総理のシナリオ

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 青山氏は今回報じられた“9月中旬電撃解散説”について「実は一つのシナリオとしては検討されてきた」と話す。

 「本来であれば、自民党総裁選の日程が先に来ればそれを済ませてから総選挙をするというのが王道だろう。しかし総裁を続けることと総選挙で勝つことのどちらが難しいを天秤にかけながら政権を維持する戦略を考えというのが政治家の性だ。その点、今の菅総理にとっては、総選挙よりも総裁選の方がハードルは高い。

 総選挙に関しては、70議席は減るだろうという予測が自民党内の世論調査でも出ていた。ただし公明党が議席を減らさなければ、与党で過半数割れを起こすことはなく政権も維持することができる。一方で総裁選については、政権支持率が低下する今、強力な候補が出てくれば自民党総裁、さらには内閣総理大臣ではなくなってしまう可能性も出てくる。そこで先に総選挙を行い、ギリギリでも勝てれば、“総選挙で一応は勝ったんだから、総裁選はやらなくてもいいよね”という説得もできるだろうと。これがもともとあったシナリオだ」。

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 これに狂いを生じさせたのが、横浜市長選挙(8月22日投開票)での、自らが支援した小此木八郎・前国家公安委員長の大敗だったという。

 「このまま総選挙に突入すれば、自民党は70議席減以上の大惨敗を喫する可能性も出てきた、やはり総選挙の前に予定通り総裁選を行い、国民世論も巻き込んで自民党を盛り上げなければならなくなった。しかし先ほども言った通り、自民党内の方が難しい。そこで党内人事によって“化粧”を施し、一気に解散するというシナリオが出てきたということだ。

 問題は、菅さんが“このシナリオに決めた”というところまで行っていたかどうかだ。検討をして決定し、もう戻らないということなのか、それとも戻る可能性もあるのか。これが8月31日夜に出てきた報道が正しかったかどうかに関わってくるが、おそらく菅総理としては決めきっていないのに、誰かが“総理はもうこっちで行くんだ”という話をしたことで報道が先走ったのだろう。

 結果、党内から出てきた反発に抗えず、“考えていなかったとまでは言わないが、そんなことはしないよ”と否定し、このシナリオは封印せざるを得なくなったということだろう。やはり電撃解散のような戦術は、“もう変えられない”ところまで行ってから発表しないと、ひっくり返されてしまう可能性がある」。

■メディアがプレーヤーの一員になってしまった?

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 自民党の中谷元防衛相は1日午後、「総裁選の日程はもう決まっていて、勝手な個人の都合とかで変更すれば、自民党の信頼を失ってしまうんじゃないかなと」と指摘、ある自民党中堅議員は「総裁選回避のために解散ってあり得るか?敵前逃亡の烙印を押される」。さらに野党・立憲民主党の安住国対委員長は「一言で言えば自分の選挙、自分の党のこと、国民は背にしてその自分たちの内輪のことを必死にやっている」と批判している。

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 青山氏の説明を受けたパックンは「面白い」と反応。「総選挙のタイミングを決められるという日本の総理大臣の特権は、アメリカの大統領が持っているものとは違う武器だと思う。それを自分のために使うのか、それとも国のために使うのかが問題だが、今回は両方が重なったんじゃないか。つまり、総裁選を先にやってから総選挙を行った方が、国民のためにもなるんじゃないかということだ。

 一方で、先に解散総選挙に打って出られると損をする現役議員に対する、“総裁選で俺に投票すると約束しないと解散するぞ”という菅総理からの圧力だったのかもしれないとも思う。もしかしたら、自らリークして票を固めた上で否定したんじゃないか」との見立てを披露。

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 一方、慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「今回の一連の動きは、菅さんにとっていいことは何一つない。むしろ“誤報”で一番損をしたのは菅さん自身だ。だから自分からリークしたということもないだろう。やはり背景には政権支持率が下がっていることで、党内から厳しい目が向けられている。“このままではダメなんじゃないか”と騒いでらっしゃる地方組織や党内派閥の中から話が出てきたのかもしれないし、(シナリオを潰そうという)誰かの意思があったのなら怖い」と指摘した。

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 青山氏は「たしかに解散権をちらつかせて与党の引き締めに使うというのはよくある手法だ。しかし今回に限っては、“このタイミングで解散しようと考えているのか”“暴走し始めた”“ご乱心”という声が党内に広まっていて、むしろ菅総理の立場を追い詰めている。間違いなくマイナスの効果を生んでいる。やはり国民不在のまま政権維持が目的になっているのではないかと党内にも見透かされてしまったという問題は根深い。

 一方で、やはり政治家にとって、解散総選挙は政治生命を左右するもの。だから菅総理のシナリオを潰すため誰かがリークした可能性も否定できない。結果的に踏み込んだ報道によって誤報を打ってしまったメディアの見極めが甘かったと言わざるを得ないし、むしろメディアがプレーヤーの一員になってしまうこともよくあることだ」。

■総裁選は岸田元政調会長に有利に?

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 党内の強い反対を受け、小泉環境相らからも「解散すべきでない」との進言を受けたという菅総理。青山氏は、菅総理自身にとっても驚きの展開の可能性があると話す。

 「現時点では総裁選が先に来ることになっているが、党内の雰囲気からして、菅総理が出馬できなくなる可能性も出てきていると思う。本人は出ると言い続けてきたし、どのような政策やビジョンを訴えるのか、その構想を練っている最中だ。

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 しかし今回の総裁選は、ほとんどが議員票だった前回とは違い、半分は党員票になる。この党員票というのは世論調査と同じような動向を示すので、菅総理の人気が落ちていれば、それに応じて票が減ると予想できる。国民の2割の支持率しかない総理総裁が議員票によって再選されたとなれば、自民党は国民の声を聞かない党なのか、となってしまい、ひいては総選挙にも影響してくる。

 さらに言えば、総裁選では勝てたとしても、菅総理とは総選挙で一緒に戦いたくないという議員たちが反乱を起こす可能性も出てくる。そうなれば、むしろ潔く撤退した方がいいのではないかという声も出てくるだろう。総裁選の告示(17日)まで2週間以上あるし、菅総理としては東京都の新規感染者数が減ってくることに期待をしているようだが、世論調査や地元の雰囲気が集約されてくれば、“誰が鈴を付けるのか”という話にもなるだろう。

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 ただし、菅さんは自信家で強気な人なので、直言できる人もあまりいない。安倍前総理や、今まで味方をしてきた二階幹事長が“ここまでだ、降りろ”と言えば応じるかもしれない。しかしそれすらも聞かなかった場合、何が起こるのか。最後まで突っ張って、解散権を振るうことも無くはない。そのときは大混乱に陥るだろう」。

 当面の焦点となる総裁選に関して、現状では派閥単位での票読みが全くできない状況だというが、青山氏は「どう考えても岸田さんに有利に働いている情勢だ」と分析する。

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 「河野さんが出ることになれば一気に台風の目になる可能性があるし、世論調査での支持が高く、党員票を集められる可能性の高い石破さんが出ることになれば構図が変わってくるだろう。しかし河野さんは菅内閣の閣僚だし、石破さんは20人の推薦人を集められるかどうかが不透明だ。2人が出ないとなれば、やはり岸田派を率いる岸田さんが一歩リードだろう。

 仮に菅総理が出馬断念に追い込まれた場合、同じ神奈川選出で大事にしてきた河野さん、小泉進次郎さんへの影響力を残すことを考えるかもしれない。もし河野政権が誕生すれば仕事を与えてもらえる可能性もある。その意味では、撤退するなら河野さんの流れを作った方が、岸田さんや高市さんになるよりも院政を敷くことができる可能性は高い。菅さんにそういう計算が働くときがくるかもしれない。いずれにしろ、土俵際いっぱいに追い詰められているのは間違いない」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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