菅総理の退陣で、携帯電話料金は値上げに進む? 公共インフラと寡占市場の難しさ
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 菅総理が自民党総裁選挙への不出馬を表明、事実上の“退宣言”をした3日、日経平均株価の上げ幅は一時600円を超え2カ月ぶりに2万9000円台を回復。中でも目立ったのが、通信事業会社の株価の上昇だ。菅政権が推し進めてきた携帯料金値下げの圧力が弱まるのでは、と思惑からだ。

・【映像】再び値上げ? 菅総理退陣で携帯料金どうなる

 武田総務大臣は7日、「この携帯料金改革については今後もしっかりと総務省として対応していく。この方針には変わりはない」と述べているが、果たしてその行方は。

■「上がっていく方向に進むのではないか」

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 スマホジャーナリストの石川温氏は「もちろん来月からいきなり値上げというようなことにはならないと思うが、5Gスマートフォンが普及すると今のデータ容量では足りないという人がたくさん出てくると思うし、結果的に支払いが増えることになるだろう。やはり長期的に見れば、2年後ぐらいからジワジワと上がってくるのではないか」との見方を示す。

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 「この十数年間、総務省は野田さんや高市さんが大臣だった頃もずっと競争戦略をやり、MVNOを一生懸命に育てきた。しかし料金が一向に下がらない中、ようやく菅さんになって下がった。菅さんは総務大臣を務めていた10年以上前からこの問題に取り組んできたし、総理大臣になり、その集大成として出てきた形だ。“2年縛り”や解約がオンラインできるようになるなど、やめやすさ、乗り換えやすさは改善されてきているし、これらはやはり菅さんの功績といってもいいと思う。

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 一方で携帯電話3社からすると、3000円を切るオンライン専用プランを出しても菅さんに“まだまだ値下げさせるぞ”と言われていた。この1年間、携帯電話会社は苦しめられてきたが、その圧力から解放されるのではないかということで株価が反応したのだろう。今後も総務省としてはいろいろやるだろうが、携帯電話会社側はのらりくらりとかわし、あまり料金は変わらない、むしろ上がっていく方向に進むのではないかと思う」。

 元NTTドコモ執行役員の慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「携帯電話業界というのは、競争政策があまりうまくいっていない寡占市場だ。MVNOはそこにチャレンジすることを前提に総務省が導入したはずだったが、基本的には携帯電話会社傘下のサブブランドになることを認めてしまったことで、競争政策としては破綻してしまった」と話す。

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 「そこに菅政権が出てきて色々なことを言ったことで、一気に値下げプランが出てきた。しかしこれから関心のない政権が生まれれば、寡占市場の特質として、また利益最大化の方に動いてしまうと思う。今の構造を総務省が変えない限り、料金が上がっていくことは間違いないだろう。もっと言えば、みんなに関心がない。しょうがないことだし、それも携帯電話会社の戦略だったりするが、自分に合っている料金な何なのかも分かりにくい。圧倒的に安いahamoが出てきたのは一歩前進だし、これだけしか加入者がいないのも、分かっている人にとっては分かっているソリューションだからだ」。

 石川氏は「最近でいうと、楽天モバイルが4社目として参入した。本来であれば3社から4社体制になって競争が加速するというところがある。ただやはり携帯電話は繋がってナンボ、どこも圏外ではなく繋がってナンボだったりするので、なかなか4社目としては戦えないという状況があったりもする。そもそも競争していくというのは携帯電話業界でいうと難しいのかな。結局、寡占状態になってしまうというのがこの業界だと思う」と説明した。

■5G普及のための投資にも影響?

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 去年から今年にかけて、月額2000円台のMVNO・格安サブブランドを相次ぎ発表、契約も伸ばしてきた大手キャリア。ところが先月までの決算を見ると、NTTドコモはahamoによる収益への影響を2500億円規模と見込んでいるほか、KDDIとソフトバンクもユーザーからの収入が600~700億円減る見通しとなっている。こうした状況が、5G(第5世代移動通信システム)普及・発展に影響するとの見方もあるという。

 石川氏は「今までが儲けすぎだった、という指摘は当たっていると思う。一方で、全国に通信インフラを提供するためには、それなりのコストがかかる。コロナ禍でも皆さんスマートフォンを使って仕事ができる、ビデオ会議で繋がれるというのも、通信会社がインフラとしての責務を担っているからだと言える。今後KDDI、ソフトバンクは2兆円規模の設備投資していくことになっているので、値下げが続くようであればそこに影響も出てくるのかなと思うし、地方でショップがなくなってしまえばシニアの人がITにデビューするきっかけがなくなってしまうといったこともある。5Gの遅れが、日本全体のDXの遅れに繋がるのではないかという危惧もある」と話す。

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 夏野氏は「石川さんは優しいから強く言わないが、1年間で8000億円の利益を出している企業にとって、10年間で2兆円の投資なんて比較的小さなお金だ。別にそこに憂いはないと思う。例えば電力料金やガス料金なら、安い料金体系を出したら基本的に既存の契約者も全て対象になる。それに対して携帯電話料金というのは、新しいプランが出ても要望した人以外、適用されない。しかし公共の電波を利用している事業者である以上、そこはちゃんとやった方がいいんじゃないの?という意見だってあるはずだ。寡占市場を野放しにしすぎている弊害というのは多少あるのではないか」と指摘。

 「ただ、携帯電話事業に限らず、やっぱり民間の力と政府の力をどういうバランスでやるのかというのは、この自由主義世界、資本主義の世界においては難しい。その意味では携帯電話業界はインフラの整備などがうまくいっていた方だ。日本は光回線の普及率も日本はすごく高い。いいところは残していってほしいなと思っている」。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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