将棋界のタイトル戦線は、この夏から秋にかけて大きなターニングポイントを迎えている。それが豊島将之竜王(叡王、31)と藤井聡太王位・棋聖(19)による戦いだ。お~いお茶杯王位戦七番勝負では、豊島竜王が挑戦したが1勝4敗で挑戦失敗。叡王戦五番勝負では、防衛する立場としてカド番から2勝2敗のタイに持ち込み、9月13日の最終第5局で初防衛を目指す。さらに10月には竜王戦七番勝負で、藤井王位・棋聖の挑戦を受ける。豊島竜王は「やっぱりタイトル戦の防衛戦2つで、藤井さんに対してしっかり戦っていけたらと思います」と、明確な目標に掲げた。快進撃が止まらない天才棋士とタイトル戦で戦い続けることで、自身のレベルアップにもつなげるつもりだ。
【動画】「将棋日本シリーズ」二回戦第一局 豊島将之JT杯覇者対広瀬章人八段
強者になればなるほど、自分の課題は見えにくくなる。相手のレベルが自分より低ければ勝ててしまうからだ。近年では将棋ソフト(AI)の発展もあり、豊島竜王のようなトップ棋士でも気づかない手をソフトから提案されるようにもなったが、それをそのまま対人の対局に活かせるかどうかも、また別問題。対人ならではの難しさもある。「課題はいろいろ見えてきている。これからも戦いが続くので、短期間で修正できるところは修正したいです。結構全体的に、いろいろなところでミスや疑問手が出ています。一番はやっぱり王位戦の2局目。いけそうな内容での逆転負けなので、ああいう感じで指せている時に高確率で勝てるようにしないと、かなり厳しいだろうなと思います」。将棋界の序列2位にいる棋士ながら、全体的な課題を感じているという。
藤井王位・棋聖からは「押されている内容の将棋が多くあった」という言葉もあったが、豊島竜王自身はさほどそう感じてもいない。「王位戦の3局目は一瞬だけ、ソフトだけが気づいているすごくいい手があったんですが、それもお互い気づかないままスルーしていた。感触としては、そんなに押しているというか、多少模様がいいぐらいの話なので、そこまでうまくいっている感じではないです。叡王戦なら第1局のように序盤から工夫されて、押される展開もあるので」。将棋ソフトの評価を見れば差が出ていても、対局者からすればそれほど感じないというのもよくある話。超トップレベルの対戦であれば、些細なことが数手、数十手、さらには対局の結果を変える。そんなぎりぎりの戦いが両者の中では繰り返されている。
13日の叡王戦第5局、勝てば二冠維持、負ければ竜王の一冠となる。さらに竜王まで失冠すれば、無冠にもなり、現在の「4強」体制から遅れを取ることにもなる。「順位戦もあるし、王将リーグも始まります。挑戦権に絡むような活躍ができればと思います」と、防衛だけでなく三冠、四冠の獲得にもはっきりと意欲を示した。早指しの将棋日本シリーズ JTプロ公式戦でも、前年覇者として出場し初戦を突破。連覇に向けて好スタートを切った。藤井王位・棋聖が目立ちまくる2021年度。まもなく迎える下半期、ずっと主役の座を譲るつもりはない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)