中国の国家新聞出版署は「女性的な男性、ボーイズラブを徹底的に排除する」とホームページ上で発表した。中国共産党の中央宣伝部は8日、複数のオンラインゲームの運用企業にボーイズラブの断固排除を指示。中国当局は「ボーイズラブは“不良文化”」「誤った価値観や違法な内容を含むコンテンツ」と厳しく批判した。さらに、問題を放置している企業へは厳しく処分するとも警告した。
【映像】耽美系、おっさん系、少年系…「ボーイズラブの分類」まとめ(12分ごろ~)
中国当局は今月2日にも「男らしくない」アイドルが出演する番組の中止を求めていて、中国のSNS・微博(ウェイボー)では「政府が規制して当たり前だ。男は男らしくしなければならない」「私は女性的な男性を全力で支持します。何も問題ありません」と賛否の声が上がっている。
世界が多様性を受け入れる中、その真逆とも言える考えを打ち出す中国。そもそもボーイズラブは不良文化なのだろうか。
中国当局がボーイズラブを規制する流れについて、ニュース番組『ABEMA Prime』に出演した漫画家のピクピクン氏は「完全にナンセンスだ」と苦言。「食べ物の嗜好や思想は規制できないと思う」とした上で「ボーイズラブが好きな人を腐女子・腐男子といった表現をするが、いくら側(がわ)を排除したところで、ボーイズラブが好きな人は魂が腐っている。規制は無理だ。絶対に根絶やしにはできない」と考えを示した。
ライターで漫画シナリオ研究家の一色ちま氏も「私もピクピクン先生と同じ意見だ。これを規制したところで、中国当局が狙っているものとは違う効果が出るのではないか」と述べる。
性的表現を含むほかのカテゴリー作品もあるうち、なぜ中国はボーイズラブだけを規制の対象にしたのだろうか。
ピクピクン氏は「例えば中国の『陳情令』や『天官賜福』という有名な小説作品もボーイズラブが題材だ。中国の腐女子にコンタクトを取って話を聞いたが、彼女は『我々は昔から迫害されている。これは慣れっ子だ。ただ今回は規制が厳しすぎる』と言っていた」と話す。
「日本は表現に(規制するかどうか)判断の重きをおく。性器描写がどれくらいあるか、モザイクがどれくらい入っているか、物理的なものだ。だが、今回の中国の規制で恐ろしいのは、先ほど言った小説など、いわゆる性器描写がないコンテンツにも、規制をかけてきている。思想や趣味・嗜好の部分の規制はどうなんだと思う」
さらに、ピクピクン氏は「物理的な本よりも、ダウンロードコンテンツの方に行ってしまっている」とした上で、紙媒体からネットにユーザーが移行している現代では「同人誌はいくらでも地下に潜れてしまう。いくら規制かけようともできない」とコメント。むしろ、中国当局が規制をかけることで、ダウンロードコンテンツの売上が増える上がるといった構造もあり得ると語った。 (『ABEMA Prime』より)
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