プロレスリング・ノア年間最大のリーグ戦「N-1 VICTORY 2021 ~NOAH NUMBER ONE PRO-WRESTLING LEAGUE~」が9・12後楽園ホールで開幕した。
ノアのシングルリーグ戦史上最高ともいえる豪華メンバーが揃った今回のN-1 VICTORYは、A~Dブロック各4名、計16名が参加。各ブロックのトップ通過選手4人が、最終戦の10・3後楽園ホールでワンデイトーナメントを行い優勝が決定する。その開幕戦であるこの日は、それぞれのブロックで優勝戦線を大きく左右する注目の一戦が組まれた。
まず、マサ北宮、齋藤彰俊、船木誠勝、藤田和之がエントリーしているDブロックは、ノア正規軍の大将格であるマサ北宮と、野獣・藤田和之が対戦。試合は北宮が、藤田のヒザを徹底的に攻めて試合を優位に進める。そしてブレーンバスターから監獄固めをガッチリと極めると、藤田はなかなか逃げることができず、さらにダメージを負ってしまう。
そしてロープブレイク後、北宮がとどめのサイトースープレックスにいこうとするが、藤田はこれを未然に防ぎ、顔面へのニーリフトから逆にバックドロップで投げ捨てる。そして強烈なラリアットで形勢逆転すると、ビーストボム(高角度パワーボム)から顔面蹴り3連発で逆転勝ち。藤田が大事な初戦を制したが、控室に戻る際に足を引きずっており、今後のリーグ戦への影響が懸念される結果となった。
続いて、拳王、望月成晃、ケンドー・カシン、稲葉大樹がエントリーしているBブロックは、優勝宣言をしている金剛のリーダー拳王が、くせ者ケンドー・カシンと対戦。序盤から再三場外戦を挑み、花道奥まで連れていきリングアウト勝ちを狙おうとするなど、あの手この手で撹乱してくるカシンに対し、拳王は冷静に対処。カシンがシューズの紐を緩めて、シューズが脱げることでアンクルホールドから抜け出した時も、逆に脱げたシューズをカシンの顔面に投げつけて、ハイキックで倒してみせた。
そして最後はスリーパーでがっちりと捕獲。これで勝負あったかと思われたが、ここでカシンのマスクが脱げてスリーパーがすっぽり抜けてしまう。なんとカシンは通常のマスクの上に、脱げやすいオーバーマスクをかぶっていたのだ。そして一瞬呆気にとられた拳王をスモールパッケージホールドで丸め込み、まんまとカウント3。拳王はあまりにも痛い1敗を喫してしまった。
Cブロックは、前年度優勝者の中嶋勝彦が、ZERO1の看板王座である世界ヘビー級王座を盟友・杉浦貴に奪われたばかりの田中将斗と対戦。予想通り中嶋の得意の蹴り、田中がエルボーを叩き込むバチバチの試合となったこの闘いは、田中のスライディングDをカウント2で返し、サッカーキックからバーティカルスパイクを決めた中嶋の勝利かと思いきや、田中はこれをカウント2で返す。
そして中嶋の蹴り足をキャッチすると、後頭部にスライディングDを決め、さらに正面から正調スライディングDを叩き込みフォール勝ち。前年度優勝者が初戦を落とす結果となった。
そしてメインイベントは、武藤敬司、杉浦貴、清宮海斗、征矢学がエントリーした最激戦区と言われるAブロックで、前GHCヘビー級王者・武藤と、GHCナショナル&ZERO1の世界ヘビー級の2冠王者の杉浦貴が対戦。同じブロックでなければ、決勝戦で当たってもおかしくない優勝候補の筆頭同士がいきなり激突した。
試合は、「瞬殺」を予告していた杉浦がゴングと同時にラッシュをしかけ、フロントネックロックで絞め落とそうするが、武藤はこれをなんとか逃れ、場外へエスケープ。そして武藤はここから得意の寝技でじっくりと攻め、ダブルリストロック、キーロックと腕への関節地獄でペースを奪い返す。そして杉浦のコーナーへの突進をかわすと、ロープ越しのドラゴンスクリューを決め、ここからは足関節地獄に移行。アキレス腱固め、足4の字固めで長時間にわたりとらえ、杉浦をギブアップ寸前に追い込む。
なんとかロープに逃れた杉浦は、フロントネックロック、投げっぱなしジャーマン、そしてエルボーの連打で反撃。しかし武藤は、杉浦のオリンピック予選スラムをヒザ蹴りで未遂に終わらせると、前から後ろからシャイニングウィザードを乱れ打ち。
それでも杉浦は、4発目のシャイニングを両腕でガードすると、逆に走り込んでのヒザ蹴りから、フロントネックロック。意地でもギブアップしない武藤に対し、杉浦は自ら技を解き、オリンピック予選スラムをついに決めるがカウントは2。そしてもう1発、オリンピック予選スラムにいこうとするが、ここで30分時間切れのゴング。
「全勝優勝」を宣言し、武藤戦の「瞬殺」を予告していた杉浦だったが、武藤の老獪さを切り崩すことができず、ドロー発進となった。
文・堀江ガンツ
写真/プロレスリング・ノア