日本代表はキリンカップの決勝でアフリカのチュニジアと対戦する。くしくもちょうど20年前の日韓ワールドカップ、大阪で日本はグループステージでチュニジアに勝利。初のベスト16を決めた相手という縁もあり、当時は11歳だったという原口元気も「わかりやすく比べてもいい環境になっている。日本代表が発展してきたというのを証明できる試合にしたい」と意気込みを語った。
重要なのは、チュニジアも日本と同じくカタールW杯に出場すること。本大会まで半年を切った今、しっかりと戦術や戦力をチェックしておきたいのは彼らも同じだろう。アフリカ予選のプレーオフでは躍進著しいマリに2試合合計1-0という手堅い試合運びで突破を決めたことが、チュニジアのチームカラーを端的に示している。
北アフリカ特有のフィジカルとテクニックを融合した攻撃の特長はあるが、やはりベースになるのは堅実なディフェンスだ。4-3-3をメインに4-2-3-1、相手によっては4-4-2も採用するが、タイトな4バックのベースを崩すことはなく、長身CBのモンタサル・タルビを中心に統率が取れている。
キリンカップサッカーの準決勝、チリ戦は2-0で勝利。GKのアイメン・ダーメンが大活躍したが、本来の守護神はこの試合でベンチだったベシル・ベン・サイドであり、本大会に向けて競争になっていくかもしれない。
左SBも主に予選で起用されていたベテランのアリ・マールールがベンチから見守るなかで、アリ・アブディが粘り強い守備と豪快な攻め上がりからのダイビングヘッドで決勝ゴールをもたらし、ジャレル・カドリ監督を良い意味で悩ませそうな活躍を見せた。
チリ戦は4-3-3をベースに勇気を持ってラインを高くすることで、チリのパスワークをかなり制限することに成功したが、全体的には少しダイナミックさを欠く部分もあった。やはりアフリカ・ネーションズカップの予選を2試合戦って、直後に長距離の遠征をしてきた疲労や時差の影響はあるだろう。そこから中3日で臨んでくる日本戦は、より良いコンディションで彼らの良さを発揮してくることは想像に難くない。
日本を相手にどの形で来るかは蓋を開けてみないと分からないが、大きな展開を織り交ぜたサイドアタックと、マンチェスター・ユナイテッドに所属する若き司令塔ハンニバル・メジブリを起点とした中央突破の両方が危険だ。
一発のロングボールでディフェンスを脅かしてくるようなことは少ないが、何本かパスを繋ぎ、そこに縦のドリブルを織り交ぜてくるスタイルはチュニジアならではで、SBの攻撃参加も要注意だ。
中盤はチリ戦でアンカーを担ったアイサ・ライドゥニが攻守の軸だが、スタートからハンニバルを起用してくるのか、それとも活動量の豊富なモハメド・アリ・ベン・ロムダン、キャプテンのフェルジャニ・サシという構成で来るのか。創造性の高い攻撃センスを持つハンニバルがスタメンなら、4ー2ー3ー1で来る可能性もある。
前線はワールドクラスのストライカーこそいないが、チリ戦で途中出場からゴールを決めたイサム・ジェバリなど、シュートのパンチ力がある選手は揃っており、日本としては警戒するべきポイントだ。
チュニジアもこの試合を終えると、日本と同じく9月の2試合しか明確な強化の機会がなくなるため、カドリ監督もチリ戦で使えなかったメンバーを含めて、より多くの選手にチャンスを与えるかもしれない。それでも本大会を見据えたシミュレーションでもあり、キリンカップというタイトルを獲得して自信をつける意味でも、単なる親善試合とは違った緊張感のある試合が期待できそうだ。
取材・文●河治良幸
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