個性派揃いのシティをまとめるキャプテン
ギュンドアンは現在、マンチェスター・シティのインサイドハーフの主力としての座を確立している。ポルトガル代表のベルナルド・シウヴァと出場機会を分け合っているが、彼の重要度の高さは一目瞭然だ。
2021-2022シーズン、プレミアリーグ優勝を懸けた最終節のアストン・ヴィラ戦では、途中出場にも関わらず決勝弾を含む2ゴールを決めた。スタメン起用で試合のリズムを作るだけでなく、大事な場面で流れを変えるジョーカーとしての起用も可能なのだ。
以前より、試合中にキャプテンマークを巻くことも多かったが、今季は正式にチームのキャプテンへ選出された。シティではキャプテンを選手とスタッフの投票によって決定しており、クラブ内におけるギュンドアンへの信頼の厚さがうかがえる。
ピッチ内外において今季もプレミアリーグ王者マンチェスター・シティの中心選手の一人であることは間違いない。
クロップ率いるドルトムントで大きく羽ばたく
ギュンドアンは20歳の時、当時ドイツ1部のニュルンベルクでリーグ戦25試合5ゴール3アシストを記録しブレイクを果たす。
一気に頭角を現したギュンドアンに熱烈ラブコールを送ったのが、当時ドルトムント指揮官でゲーゲンプレスでドイツを席巻していたユルゲン・クロップ監督だ。この前年のドルトムントは9シーズンぶりのリーグ優勝を果たし、ブンデスリーガ連覇を目指して新戦力を欲していた。
結果、期待の若手としてギュンドアンは2011年7月にドルトムントへ550万ユーロ(約10億円)という金額で完全移籍を果たす。そして加入1年目から適応が難しいとされるクロップのサッカーに難なく適応。公式戦37試合4ゴール4アシストの成績で、ブンデスリーガ連覇とDFBポカールの2冠に貢献した。
また翌年の2012-2013シーズンには国内タイトル獲得には至らずもクラブはUEFAチャンピオンズリーグ決勝へ進出。決勝は惜しくもバイエルンに敗れてしまったが、決勝では重圧のかかる場面で同点弾となるPKをしっかりと沈めた。
その後もギュンドアンは活躍を続け、情熱的な監督が率いるドルトムントの勝利に貢献し続けたが、2015年の夏、ドルトムントで一つのサイクルが終わったとしてクロップが退任。後任は戦術家として名高いトーマス・トゥヘルが就任した。ドイツ人監督の下でも、主力として素晴らしいパフォーマンスを見せたギュンドアンだが、翌年には挑戦のタイミングとしてドルトムントを退団を決める。
結果、2016-2017シーズンには、マンチェスター・シティへ2700万ユーロ(約40億円)の金額で移籍。この時、恩師クロップ率いるリヴァプールからも誘いがあったそうだが「新たな挑戦をしたい」という理由でギュンドアンは恩師と違う道を選択した。
その後、シティでは適応に1年以上の時間を要したものの、その後の活躍ぶりは冒頭の通りだ。名将ペップ・グアルディオラのもと、マンチェスター・シティで充実したシーズンを過ごしている。
サッカーIQの高さを武器に中盤のあらゆるポジションをこなす
ギュンドアンは、クロップ、トゥヘル、ペップという世界でも屈指の名将たちの下でプレーしたことがある稀有な選手だ。彼らの指導を受けたからなのか、非常にサッカーのIQの高い選手として有名だ。あるいはIQが高いからこそ、名将たちに愛されてきたのかもしれない。
いずれにしても頭のいい選手だからこそ、アンカー、2ボランチの一角、インサイドハーフなど、中盤ならどこでもプレー可能なのが、ギュンドアンの魅力だ。
そしてどのポジションでも質の高いプレーを披露できる。身体能力が高いタイプではないが視野が広く状況判断も良いためリズムよくパスをまわすことができる。加えて守備でも的確なポジショニングをとるため、攻守において信頼性が高い。
加えて、流れの中で相手ボックス内にスペースを見つけて潜り込み、難しいボールもいとも簡単に決めてしまう得点能力も圧巻である。特に2020-2021シーズンは圧巻でリーグ戦28試合13ゴールとストライカー並の成績を残している。
またロッカールームにおいてもチームの全体のバランスをとることを心がけているようだ。ときに控えの時期が続いても、腐らずチームのために何か助けになることはないかを常に探す姿勢をペップも高く評価している。
激しいポジション争いを制してカタールW杯へ
ギュンドアンは20歳にしてドイツA代表デビューを飾ると、その後も長らく代表には招集され続けている。ただしこれまで絶対的なレギュラーという立ち位置になったことはなく、常に厳しいスタメン争いを強いられている。これはギュンドアン本人というより、ドイツ代表の中盤の層の厚さを感じさせられる。
現在のドイツ代表では、4-2-3-1が基本システムで2ボランチの一角はバイエルン・ミュンヘン所属のMFヨシュア・キミッヒが不動の地位を築いている。そのため同じくバイエルンに所属するレオン・ゴレツカ、ボルシア・メンヒェングラートバッハ所属のフロリアン・ノイハウスと残り1つの席を争っている。
今年の11月から開催する2022 FIFAワールドカップ カタール(カタールW杯)は、ギュンドアンにとって最後の国際舞台になる可能性もある。そう考えると意気込みは普段以上のはずだ。大舞台でどのようなパフォーマンスを見せるかに注目していきたい。
(文・熊谷和浩)