ミラクルレスターを支えた屈指のダイナモ

今回はチェルシーで背番号7を背負うフランス代表MFエンゴロ・カンテのこれまでのキャリアや代表での活躍、プレースタイルについて紹介する。

「ミラクルレスター」の一員として名を馳せたカンテは、圧倒的な運動量と対人守備能力の高さでチェルシーの中盤に欠かせない戦力に定着している。

今季も開幕から2試合連続で先発出場するなど絶対的な主力選手として存在感を発揮していたが、2節のトッテナム戦で負傷交代。チェルシーが不調に陥ったのは、カンテがいなくなってからであり、この試合では試合終了間際に同点に追いつかれ、3節リーズ・ユナイテッド戦では0-3の完敗を喫した。

そしてカンテの復帰を前にトーマス・トゥヘルは成績不振などの影響で解任されてしまった。ジョルジーニョやマテオ・コヴァチッチも重要な選手だが、カンテはその中でも一際スペシャルな存在であり、彼の不在がトゥヘルのチームに与えた影響は大きかった。

3部リーグから始まったサクセスストーリー

今でこそ高い給料を受け取り、世界を代表する選手の1人に成長を遂げたカンテだが、そのキャリアは全くエリートではない。最初にプロ選手として出番を得たのは当時3部リーグに所属していたブローニュだった。ユース時代から過ごしていたこのクラブで成長したカンテは2013年夏に当時2部に所属していたカーンへ移籍し、加入初年度から全試合に出場してリーグ・アン昇格に大きく貢献した。

2014-2015シーズンは自身初のリーグ・アンでの戦いとなったが、国内最高峰の舞台でも結果を残し、いつしか他クラブからも注目を集める選手となっていた。

そして2015年夏に実現した、イングランド・プレミアリーグに所属するレスターへの移籍がカンテの運命を変えた。当初レスターはナンパリス・メンディの獲得を目指していたが、移籍金で折り合いが付かず破談。その代役としてカンテに白羽の矢が立ったのだった。

初のプレミアリーグの舞台で抜群のボール奪取能力を発揮し、ジェイミー・ヴァーディやウェズ・モーガンらカンテ同様に下部リーグからの叩き上げの選手が多いチームが一丸となって奇跡のプレミアリーグ優勝という快挙を成し遂げた。

カンテは2015-2016シーズン途中にフランス代表デビューを果たすなど、わずか1年足らずで国際的に無名に近かった存在からスター選手へと駆け上がった。そして2016年夏にチェルシーへと引き抜かれている。

チェルシーでもレスター時代同様に抜群のボール奪取能力を見せつけたが、それと同時にドリブルでの持ち運びやシュートなど攻撃的な能力が大幅に伸び、世界屈指のMFへと成長を遂げた。

だが、その一方で2019-2020シーズン以降は負傷離脱を繰り返していることが気掛かりで、シーズンをフル稼働することは困難な状況となっている。それでも能力自体に衰えは全くなく、試合にさえ出場できれば安定したパフォーマンスを発揮している。

レスターでのプレミアリーグ優勝に続き、チェルシーでもプレミアリーグやFAカップ、そしてUEFAチャンピオンズリーグ(CL)と数々のタイトルを獲得しており、選手として大成功を収めたキャリアと言えるだろう。

チェルシー移籍でプレーの幅が広がる

ボール奪取がカンテの代名詞である。レスター時代は「潰し屋」の印象が強かったが、チェルシー移籍後はフィルターとしての役割はもちろん、ボールを奪ってからそのままドリブルで持ち運んでチャンスを演出したり、ゴールを決めきったりするなどスーパーな選手になりつつある。

相手の懐に入る対人守備が抜群に上手いのはもちろんだが、それを支えているのが豊富な運動量である。90分間走り続けられる走力は魅力的で、まるでピッチに何人もいるかのようにあらゆる局面に顔を出してボールを刈り取っている。

先述した通り、怪我の増加は心配な点で、シーズンを通してのフル稼働が期待できないのが残念だ。カンテが欠場するたびにその重要性が明らかになるなど、替えの効かない選手であることは間違いない。

余談だが、どんなに高い給料を受け取っていてもミニクーパーに載り続けていることや、終電を逃してファンの家に泊まるなど庶民的なエピソードでも有名なカンテだが、実は遅刻癖が酷く多く罰金を支払っているお茶目な一面もある。

前回大会優勝の立役者がカタールの地でも輝くか?

カンテはレスターに在籍していた2015-2016シーズン途中の2016年3月にフランス代表デビューを飾っている。3部でプレーしていたこともあって年代別代表の経験は一度もない。レスターでプレミアリーグ優勝を経験した直後のユーロ(欧州選手権)の代表メンバーに選出されると、2018年のロシアワールドカップでは全7試合で先発出場して優勝の立役者の一人となった。

直近は怪我が多く、代表メンバーから外れることも多いが、コンディションさえ整っていれば招集されることが確実だ。11月に控える2022 FIFAワールドカップ カタール(カタールW杯)の前には何としても調子を万全にしておきたいと思っていることだろう。

FIFA ワールドカップ カタール 2022 完全ガイド by ABEMA
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