アスピリクエタが所属するチェルシーは、ロシアによるウクライナ侵攻でロマン・アブラモヴィッチ前オーナーが退任した。さらに今年9月には、前監督のトーマス・トゥヘルを電撃解任し、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンからグレアム・ポッターを引き抜いた。新オーナーの下で夏の補強も手堅く進め、新指揮官が就任してからは9試合負けなしと好調を維持した。負傷者の多さは悩みであるものの、新戦力のDFカリドゥ・クリバリやDFマルク・ククレジャ、FWラヒーム・スターリングらが上手くチームにフィットし安定した戦いを見せている。

こうした転換期を迎えた中でも、アスピリクエタはチェルシーでキャプテンマークを巻き続けている。3バックの層が厚みを増し、リース・ジェームズの台頭でRWBのポジション争いが激しくなったことで絶対的な地位こそ確立できていないが、DFチアゴ・シウバに次ぐ2番目の年長者としてピッチ内外でチームをまとめあげている。

チェルシーではキャプテンとしてビッグイヤーを掲げる

アスピリクエタは地元のクラブであるCAオサスナのカンテラ(下部組織)に加入。ユース時代は右ウイングを本職としており、2007年4月のレアル・マドリード戦で17歳という若さにしてリーガ・エスパニョーラデビューを飾った。

2007-2008シーズンから右サイドバックとして定着したアスピリクエタは、2008-2009シーズンには献身的な守備と安定感を武器にリーグ戦で36試合に出場し、さまざまなクラブから関心を寄せられた。

2009-2010シーズンもオサスナでリーグ戦33試合に出場すると、シーズン終了後にはフランス・リーグアンの名門オリンピック・マルセイユに移籍した。

加入後すぐに右サイドバックのレギュラーを掴んだアスピリクエタだったが、11月の試合で前十字靭帯断裂という大怪我に見舞われ、結局は初年度の大半を棒に振る結果となった。

ケガから復帰した翌シーズンは見事レギュラーに返り咲いて公式戦44試合に出場。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)での準々決勝進出やリーグカップ3連覇に貢献し、2012年8月にチェルシーへとステップアップを果たした。

新天地で移籍1年目から定位置を確保すると、リーグ戦で6アシストと攻撃面でもインパクトを残すシーズンとなった。また、2013/14シーズンには当時の指揮官であるジョゼ・モウリーニョ監督からユーティリティ性を評価され、左サイドバックとしても起用された。

すっかりチームの主力として定着したアスピリクエタは2016-2017シーズン、新監督に就任したアントニオ・コンテの下で3バックの一角に抜擢されると、リーグ戦全試合フル出場という鉄人ぶりを発揮し、自身2度目となるプレミアリーグ制覇を成し遂げた。2015/16シーズンからは5季連続でチーム最多の出場時間を記録している。

キャプテンに就任して迎えた2019-2020シーズンはUEFAヨーロッパリーグの決勝に進出するも、ライバルであるアーセナルに敗れ、主将としての初タイトルはならなかった。しかし2020-2021シーズン、マンチェスター・シティとのCL決勝にキャプテンマークを巻いて出場すると、相手の強力な攻撃陣を見事に抑え込みビッグイヤーを高らかに掲げた。

最終ラインの全てのポジションでプレー可能なユーティリティ性

アスピリクエタの魅力は、最終ラインの全てのポジションをこなせるユーティリティ性とその抜群の戦術理解度である。

クロスの精度に加えて攻撃参加の質が高いことから、プレミアリーグ移籍後はアシスト数を増やしている。90分を通してハードワークを怠らず、試合終盤でも攻撃のサポートや直後のプレスバックを止めることはない。

守備力もプレミアリーグ屈指で、一対一では抜群の強さを誇る。また近年ではスピードの低下を指摘されることもあるが、戦術理解度の高さと献身性を活かして重要な局面では全力でプレスをかけに行く。チームの守備陣に絶対的な安定感をもたらす貴重な存在だ。

さらには人格者としても知られ、チームメイトや監督、ファンから絶対的な信頼を得ている。チェルシーで指揮したモウリーニョには「アスピリクエタが11人いればチャンピオンズリーグで優勝できる」とまで言わしめた。

スペイン代表に欠かせないベテラン選手の一人に

スペインの各世代別代表にも選ばれており、2013年2月にA代表デビューを飾った。2014 FIFA ワールドカップ ブラジル(ブラジルW杯)の登録メンバーにも選出され、グループステージ2試合でフル出場を果たした。その後、代表ではなかなか定位置を獲得するには至らなかったが、UEFA EURO 2020からは主に右サイドバックとして定着し、UEFAネーションズリーグでもチームの決勝進出にも貢献している。

FIFAワールドカップカタール2022(カタールW杯)でも登録メンバー入りが確実視されている。センターバックとしても右サイドバックとしても計算が立つアスピリクエタは、指揮官のルイス・エンリケにとって心強い存在になるはずだ。

文・東方かなと