ウナイ・シモンが所属するビルバオは、スペインのバスク州出身者や同州をルーツに持つ選手らでのみチームを構成するという「属地主義」を貫く非常に珍しいチームで、リーガ・エスパニョーラではレアル・マドリードとバルセロナ同様、降格経験がない名門だ。
しかし、ここ数年はリーグ中位に沈み欧州のカップ戦からも遠ざかっている。そんなチームの立て直しを図るべく、今年6月にはジョン・ウリアルテ氏が新会長に就任し、かつて2度にわたりクラブを率いたエルネスト・バルベルデを公約通り指揮官に招聘した。
そうした状況の中、シモンはビルバオで守護神として絶対的な地位を築いており、スペイン代表でも定位置を確保している。
ビルバオ生え抜きの絶対的守護神
バスク州に生を享けたシモンは2011年にビルバオのカンテラ(下部組織)に加入。下部リーグに所属するCDバスコニアへの移籍を経て、ビルバオのBチームにあたるビルバオ・アスレティックに昇格すると、2シーズン連続でリーグ戦29試合に出場。中でも2017-2018シーズンはクリーンシート15、失点18という驚異的な数字を記録した。
2018-2019シーズンの開幕前にはエルチェFCへのローン移籍が発表されるも、トップチームで守護神を務めていたケパ・アリサバラガの移籍とイアゴ・エレリン負傷により、急遽ビルバオに呼び戻されることになった。迎えた開幕戦でトップチームデビューを果たし、第7節までゴールマウスを守ったが、その後は復帰したエレリンにポジションを奪われた。
しかし、2019-2020シーズンに正GKの座を獲得すると、リーグ戦34試合に出場して失点を29に抑えるなど好パフォーマンスを披露。クリーンシートは13試合もあり、シーズンの最優秀GKに贈られるサモラ賞のランキングでも3位に入った。
チームの絶対的守護神となったシモンは、2020年8月にビルバオと5年間の契約延長にサイン。プレミアリーグのトッテナムが補強に動いたとも報じられており、今後の動向も注目されている。
反射神経を生かした高いセービング能力
シモンの魅力は、長い手足と超人的な反射神経を活かした抜群のセービング能力だ。至近距離からのシュートも苦としておらず、クラブと代表で幾多のピンチを救っている。
ポジショニングミスも少ない他、後方から攻撃の組み立てに参加できるだけの足元の技術も備えている。
3番手から一躍、守護神へ
スペインの各世代別代表に招集されてきたシモンは、主に控えだったもののU-19とU-21の欧州選手権で優勝を果たした経験を持つ。東京五輪でも全試合にフル出場してチームの銀メダル獲得に貢献し、準決勝では日本の前に立ちはだかった。
2020年11月にA代表デビューを飾ると、監督を務めるルイス・エンリケからの信頼を一気に掴む。その後はUEFA EURO 2020の全試合に出場するなどほぼ全ての代表戦で起用されており、ダビド・デ・ヘアとケパに次ぐ3番手という序列から瞬く間に正守護神の座へと登り詰めた。
FIFAワールドカップカタール2022(カタールW杯)でもスペイン代表のゴールマウスを守るものと思われ、日本にとっても手を焼く存在になりそうだ。
文・東方かなと