11月20日にFIFAワールドカップカタール2022が開幕する。今大会は、2002年に行われた日韓大会以来20年ぶりとなるアジアでの開催。さらに22回の歴史の中で、初めて冬に行われるなど、例年に比べるとイレギュラーな大会だ。

そんなカタールW杯を楽しむべく、今大会の注目選手をポジション別に5人ずつ選出。今回はインサイドハーフ編として、ベルギー代表のケビン・デ・ブライネ、エクアドル代表のモイセス・カイセド、ポルトガル代表のベルナルド・シウバ、クロアチア代表のルカ・モドリッチ、スペイン代表のペドリを紹介する。

ベルギー代表MFケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)

ケビン・デ・ブライネは、名将ジョゼップ・グアルディオラに「ゲームメイクに関して、最高の選手の一人」と言わしめたゲームメーカーだ。プレミアリーグでは3度のシーズン15アシストを達成しており、決定的なパスを供給できる選手である。デ・ブライネが繰り出すスルーパスは、芸術的なほどに美しく、相手にとっては残酷だ。

パスのみならず、デ・ブライネはシュート精度も高い。ミドルシュートからの美しいゴールを何度も決めてきた中で、とりわけ2018年のロシアW杯において、準々決勝でブラジルを撃破した決勝点となった強烈なシュートは記憶に新しい。

得点に直結する仕事以外にも、フリーランニングで相手の嫌がるポジションでかつ味方を助ける場所に顔を出すことができ、円滑なパス回しの起点となることもできる。ベルギーをけん引する、まさに世界最高峰のインサイドハーフの一人だ。

エクアドル代表MFモイセス・カイセド(ブライトン)

日本代表MFの三笘薫が所属するブライトンでチームの心臓として活躍しているのが、エクアドル代表MFのモイセス・カイセドだ。弱冠二十歳のダイナモは、フランス代表MFエンゴロ・カンテを彷彿とさせる運動量でプレミアリーグを席巻。その活躍ぶりからビッグクラブの注目を集めるなど、期待の若手だ。

絶え間ないプレッシングや闘志むき出しのタックル、積極果敢なインターセプトなど攻撃的なディフェンスが持ち味。さらに攻撃参加も得意としており、低い位置まで降りてきてからバックラインと中盤とのリンクマンの役割を果たす。ビルドアップに加わったかと思えば、隙を突いた飛び出しや強烈なミドルシュートなど自らがフィニッシャーにもなれる。マルチプレーヤーである“エクアドルのカンテ”の活躍に注目だ。

ポルトガル代表MFベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)

ケビン・デ・ブライネと共にマンチェスター・シティの中盤を支えているのがベルナルド・シウバだ。ピッチを縦横無尽に駆け回り、豊富な運動量を生かして攻守にわたってチームに貢献できる。中でも長短自在のパス技術が高く、ゲームを作り、チャンスを演出する司令塔タイプの選手だ。

ドリブルの能力も非常に高く、細かなボールタッチで相手を抜き去ることを得意とする。特に、サイドから中へとカットインして放つシュートやパスを出すシーンは、彼の十八番だ。キープ力があるため、タメを作り、複数の相手を引きつけてから繰り出すパスで戦況を一気に帰ることができる。ボールロストも少なく、味方からの信頼は絶大だ。

ピッチ全体を見渡す広い視野を備え、スルーパスやサイドからのクロス、裏に通す浮き球パスなど、配球パターンも多彩。ポルトガルの攻撃のタクトを振るう選手だ。

クロアチア代表MFルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)

ルカ・モドリッチは、2018年にバロンドールを受賞した誰もが知る世界最高の中盤の一人だ。身長172㎝と上背はないものの、抜群の技術を武器に体格差を補ってきた。

ボールコントロールに長け、テクニックを生かしたボールをキープや的確な判断力でパスをピッチ全域に展開していく。キック精度も抜群にうまく、サイドチェンジや、勝負を決めるパスを供給できる。相手ゴールに近ければ近いほど脅威となり、自らフィニッシュを狙っていくミドルシュートも彼の真骨頂の一つである。

攻撃面の特徴が際立つ一方で、守備面のハードワークもいとわない。相手ボールを素早く奪い返すシーンも多く、持ち前の体力でピッチを走り回り続けることができるのも強みだ。2018年のロシアW杯ではクロアチアを準優勝に導いただけに、今大会は悲願の優勝へ。37歳で迎える今回が最後のW杯になる可能性が高いだけに、強い思いがあるはずだ。

スペイン代表MFペドリ(バルセロナ)

大会期間中の11月25日に20歳を迎えるペドリは、バルセロナですでに中心選手の一人であり、10代とは思えないほど落ち着いたプレーで中盤を支配する。戦術理解度も高く、常に相手が嫌がるポジションを取り、ボールを受けると精度の高いパスを味方に届ける。

足元の技術も高く、狭いスペースでも相手をかわして自らボールを持ち運び、チャンスを広げるプレーメーカー的なプレースタイルだ。決定的なパスや、自らシュートを打攻撃性も兼ね備え、とりわけゴールに直結する仕事において異彩を放っている。

守備面では、ボールを奪われた後に素早く相手に寄せて回収し、カウンターを受けた際には、フルスプリントで自陣に戻れる運動量も十分だ。今後のスペインを引っ張っていく存在であるペドリにとって、初のW杯は自身の存在価値を結果で証明する大会となるか。

文・渡邉知晃