11月20日にFIFAワールドカップカタール2022が開幕する。今大会は、2002年に行われた日韓大会以来20年ぶりとなるアジアでの開催。さらに22回の歴史の中で、初めて冬に行われるなど、例年に比べるとイレギュラーな大会だ。

そんなカタールW杯を楽しむべく、今大会の注目選手をポジション別に5人ずつ選出。今回はトップ下&シャドー編として、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ、ブラジル代表のネイマール、フランス代表のアントワーヌ・グリーズマンン、デンマーク代表のクリスティアン・エリクセン、ドイツ代表のトーマス・ミュラーを紹介する。

アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン)

リオネル・メッシは、サッカーファンなら誰もが知る世界最高の選手の一人だ。10度のラ・リーガ、7度のコパ・デル・レイ、4度のUEFFAチャンピオンズリーグ優勝など、バルセロナ史上最多となる35回のタイトル獲得に貢献し、バロンドールも7回受賞している。

メッシのスゴさはたくさんあるが、まずはドリブルに触れないわけにはいかない。まるで足に吸い付いているかのようなボールコントロールとスピードで相手を置き去りにする。常に自分の足元近くにボールを置いているため、小回りが効き、瞬間的な方向転換ができることで、相手はなかなかボールを奪うことができない。

シュートの精度も非常に高く、ラ・リーガで記録した2011-2012シーズンの50得点数は、欧州5大リーグで最も多い数字である。ゴールキーパーとの1対1を冷静に沈めるシュートも、コントロールされたミドルシュートも、直接FKも、彼に不得手はない。

さらにパスの技術にも優れるため、アシスト数も多い。総じて、ゴールを演出するあらゆるプレーに長けた選手である。全てを持つメッシが唯一手にしたことのないタイトルが、W杯だ。それだけに、35歳で迎える今大会にかける思いは相当なものがあるだろう。

ブラジル代表FWネイマール(パリ・サンジェルマン)

ネイマールは、ブラジルのサントス所属時代に南米年間最優秀選手賞を2度獲得してスペインへと渡り、バルセロナでの活躍を経て、現在はパリ・サンジェルマンで絶対的なポジションを手にしている世界的なスタープレーヤーだ。18歳でデビューしたブラジル代表のキャリアはすでに12年目を迎え、歴代得点記録も単独2位を誇る“現役レジェンド”だ。

ネイマールの代名詞は、高いテクニックを生かしたドリブルだ。巧みなボディフェイントで相手の重心をずらし、ダブルタッチやシザースを駆使して相手を抜き去っていく。とは言え、ネイマールの武器はそれにとどまらない。パスやシュート、ボールコントロールなどのキック精度が高く、その他あらゆるスキルも一級品だ。

決定的なパスを味方に通してゴールのお膳立てをすることも多く、なおかつ自らゴールも奪える。これまで何度も、得意のFKから直接ゴールを決めてきた。サッカー選手として必要な技術を全て兼ね備えるフットボールの申し子、ネイマール。彼自身はまだ経験したことがない悲願のW杯優勝を果たすために、セレソンの攻撃をけん引する。

フランス代表FWグリーズマン(アトレティコ・マドリード)

グリーズマンは、フランス代表の各年代でプレーし、2018年のロシアW杯で大会通算4得点を挙げてブロンズボール賞(優秀選手賞)と、シルバーブーツ賞(得点ランキング2位)を受賞し、フランス代表の優勝に大きく貢献した。

グリーズマンは、攻撃のリズムを変えられる選手だ。足元の技術が高く、ボールがない時の動き出しに優れているため、相手の中盤とディフェンスラインの間でボールを受けてターンし、チャンスメイクするプレーが得意である。アシストも多く、ゴールにつながる決定的なパスが出せる選手としてピッチで存在感を放っている。

距離に関係なくコースを突くシュートを狙うことができるなど、決定力も兼ね備えている。フランスが優勝した2018年のロシアW杯のウルグアイ戦で決めた無回転のミドルシュートは記憶に新しい。とりわけ攻撃面で違いを生み出せる選手として、フランスのW杯連覇の鍵を握るプレーヤーと言えるだろう。

デンマーク代表MFクリスティアン・エリクセン(マンチェスター・ユナイテッド)

クリスティアン・エリクセンは、UEFA EURO 2020の試合中に心停止で倒れた悲劇の当事者だ。当時、彼の悲運にサッカー界は震撼したが、U-17から各世代のデンマーク代表として活躍し、2010年からA代表でプレーし続けているエリクセンは復活を遂げた。

チームの司令塔であり、強弱や長短を使い分けたパスで味方の決定機を演出する。所属先のマンチェスター・ユナイテッドでで多くのアシストを記録していることからもパスの精度の高さが伺える。両足を遜色なく使いこなすパス技術こそが彼の最大の武器であることに疑いの余地はないが、それを生かすための視野の広さと状況判断も強みだろう。

さらには、パスの精度のみならず、シュートの技術にも秀でているため、自らスコアを動かせる選手でもある。直接フリーキックもエリクセンの武器の一つと言える。

守備面でもハードワークでき、自陣までプレスバックして相手のチャンスを潰すなど、攻守に欠かせない存在だ。今大会では、デンマークを高みに導く活躍が期待される。

ドイツ代表MFトーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)

トーマス・ミュラーは、バイエルン・ミュンヘンの中心選手として活躍し、10度の優勝経験と、クラブ通算200ゴールを達成したスコアラーだ。代表チームではU-16から各世代別のチームに選出され、2010年にA代表デビュー。2014年のブラジルW杯では母国の優勝に大きく貢献した。

ミュラーは、オフ・ザ・ボールの動き出しとポジショニングに優れ、ボールを受けてからの決定的なパスで得点をアシストできる選手だ。フリーランニングの質が高く、相手のマークを外す動きを武器にタイミングよくゴール前に入って決めるゴールも多い。

アシストやゴールを生み出すためのあらゆる技術、つまりドリブルやパス、トラップ、シュートといったあらゆる基礎技術が高い。ピッチを駆け回る運動量も豊富で、自陣までプレスバックし、献身的な守備でチームを助ける献身生も備えている。円熟味を増す33歳でで迎える今大会は、自身2度目となるW杯のタイトル獲得を目指す。

文・渡邉知晃
 

写真:アフロ