11月20日にFIFAワールドカップカタール2022が開幕する。今大会は、2002年に行われた日韓大会以来20年ぶりとなるアジアでの開催。さらに22回の歴史の中で、初めて冬に行われるなど、例年に比べるとイレギュラーな大会だ。
そんなカタールW杯を楽しむべく、今大会の注目選手をポジション別に5人ずつ選出。今回は右サイドバック編として、ポルトガル代表のジョアン・カンセロ、フランス代表のバンジャマン・パバール、ブラジル代表のダニーロ、スペイン代表のダニエル・カルバハル、アルゼンチン代表のナウエル・モリーナを紹介する。
ジョアン・カンセロ(ポルトガル/マンチェスター・シティ)
ジョアン・カンセロは、ベンフィカの育成組織出身で、2012-2013シーズンにトップチームでデビューを果たすと、その後はバレンシア、インテル、ユヴェントスを経て2019-2020シーズンにマンチェスター・シティへ移籍した。ドリブルの能力に長け、縦への推進力やクロスの精度が高い。そのことは数字でも証明されており、昨季は公式戦52試合に出場して3ゴール・10アシストを記録した。
基本は4バックながら、ビルアップの際は3バックを使い分けるマンチェスター・シティにとって欠かせない存在であり、パス回しを円滑するためにスペースに動き、攻撃を構築する技術の高さを兼ね備えている。
カンセロが背負う背番号には意味がある。シティでは、加入以来着けていた「27」を今季から「7」に変更し、代表では「20」を着けることが多い。これは幼い頃に交通事故で亡くした母親の誕生日「7月20日」を意味している。亡き母への思いを背負って戦うカンセロは、今大会で母国の飛躍に貢献できるか。そのプレーに注目だ。
バンジャマン・パバール (フランス/バイエルン・ミュンヘン)
バンジャマン・パバールは、2018年のロシアW杯において、FIFAの選ぶ大会ベストゴールを決めた選手である。ノックアウトステージ1回戦アルゼンチン戦の1点ビハインドで迎えた57分、逆サイドの味方からのクロスに対し、縦にスライスするような形でボレーシュートを放つと、ボールは美しすぎる軌道を描いてゴール左へと吸い込まれた。
何度見ても魅了されるゴールはチームを勝利へ導くきっかけとなり、そのまま母国フランスの優勝へとつながっていった。パバールは、これ以外にも豪快な得点を決めてきた選手だが、本来はサイドバックに加えてセンターバックもこなす守備職人だ。堅実なプレーでディフェンスラインをコントロールするプレーこそが、彼の持ち味である。
ダニーロ(ブラジル/ユベントス)
ダニーロは、レアル・マドリード、マンチェスター・シティ、ユヴェントスなど各国のビッググラブを渡り歩いてきた超攻撃型サイドバックだ。クラブや代表チーム併せて20以上のトロフィーを獲得してきたタイトルコレクターでもある。
ダニーロを語る際に、最もフォーカスされるのが攻撃面だ。長い手足を駆使した躍動感溢れるドリブルは見る者を魅了する。攻め上がってから見せるクロスの質も高く、状況に応じてストレート系やカーブ系を使い分けたキックでゴールチャンスを演出できる。さらには、カットインから自らゴールを陥れるフィニッシュワークも見どころの一つだ。
もちろん、守備能力も高い。ユベントスでは、センターバックとしてもプレーするなど、DFの複数ポジションに対応できることは強みだ。粘り強いディフェンスでバックラインに安定感をもたらせる選手として、攻撃でも守備でも異彩を放っている。
ダニエル・カルバハル(スペイン/レアル・マドリード)
ダニエル・カルバハルは、長らくレアル・マドリードの右サイドを支えてきた職人タイプのDFだ。クラブのレジェンド、ミチェル・サルガド氏も「現役最高の右サイドバック」と称えるほど、攻守において高いクオリティを発揮する選手である。
173cmとサッカー選手としては小柄だが、体格を補って余りあるほどのハードなディフェンスを信条としている。特にサイドバックとして重要なタスクである1対1の対応では、豊富な運動量と圧倒的なスプリント力で相手を封じて見せる。レアル・マドリードやスペイン代表で名だたる猛者を抑え込んできた信頼感は揺るぎない。
同時に、攻撃面でもチームに欠かせない存在だ。スペイン人らしく足元の技術に優れ、正確無比のロングボールで数々のチャンスを生み出してきた。ここ数年はコンディション不良に苦しむも、昨季終盤に復調。まだまだ第一線で戦えることを証明している。
ナウエル・モリーナ(アルゼンチン/イタリア)
ナウエル・モリーナは、アルゼンチン代表、アトレティコ・マドリードで進化を続ける24歳、新進気鋭の攻撃型サイドバックだ。前所属ウディネーゼの2シーズンで64試合、9ゴール・10アシストを記録し、今夏にアトレティコへとステップアップを遂げた。
モリーナの最大の特徴は、爆発的なスピードと、右足から繰り出されるキックの正確性だ。トップスピードに乗ってしまえば追いつくのは困難であり、敵陣まで一気に攻め上がり、あらゆるボールを蹴り分ける右足のシュートやパスで決定機を演出できる。
モリーナの本職は右サイドバックながら、右ウイングバックや左サイドバックとしてもプレーできるなど、ユーティリティ性が高い選手だ。アルゼンチン代表としては、2021年6月の南米予選でデビューしたばかりだが、すでに替えが効かない選手となっている。
文・舞野隼大/川嶋正隆