9月10日に開催された『Road to ONE 3rd:TOKYO FIGHT NIGHT』のベストバウトは、セミファイナルの猿田洋祐vs内藤のび太だった。
両者ともに修斗のストロー級世界王者となってONEへ。ONEで世界タイトルを獲得しているのも同じだ。ただ無敗でONEのトップに立った内藤に対し、猿田は挫折を経験。階級を下げて波に乗ったという経緯がある。ストロー級転向にあたって、猿田が強く意識したのが内藤の活躍だった。
「いつか倒してやる」
そんな思いで猿田は修斗、ONEで出世街道を進んでいった。そして今回、念願かなっての対戦だ。
序盤から内藤は細かく打撃を放ちながらタックル。しつこく、しぶとく食らいついてグラウンドに持ち込んで相手を“根負け”させるのが真骨頂だ。
だがディフェンスに回る展開も猿田にとっては「想定内」。苦しい試合になるのは避けられないと覚悟をしていた。
「尻もちをつかされるところまではいくだろうと。そこから背中をつけて完全に寝かされない、バックを取らせないというのが重要でした。それはうまくいったと思います」
スタンドでは左右のフック。「どこかでフィニッシュしたかったけど、気持ちが入りすぎてパンチが膨らんでしまった(軌道が大きくなってしまった)」と試合後には反省点を口にしていたが、それだけ強いパンチだからジャッジの印象に残ったという面もあるのではないか。
「最後まであきらめない、やり通す。そういう闘いはできたかなと思います。飛びヒザや壁際でのヒザは感触あったんですけど、内藤選手はそれでも食らいついてきた。やっぱり本物でしたね」
攻め込まれそうなところで踏みとどまり、高い集中力を発揮し続けて“削り合い”をしのぎきった猿田。判定3-0でストロー級日本人頂上決戦を制した。
「内藤選手と、まだまだこの階級を引っ張っていきます。もう一度、ONEのストロー級チャンピオンになりたい。もっと稼ぎたいし有名になりたい。それが素直な気持ちです」
派手ではないが強い決意をマイクで語った猿田。修斗時代から続くストーリーを完成させた今、「狙いは一つです」と言う。もちろんジョシュア・パシオが持つONEの世界王座だ。
「内藤選手とONEのチャンピオン。この2人とは引退までにやらなきゃと考えてきました。できるなら11月でも。パシオ選手じゃなくても強い相手なら。僕の仕事は試合なのでやりたいですね」
ハイペースでの試合を臨むのは、それだけ心身ともに充実している証拠だろう。内藤のび太という強敵を乗り越えた今、猿田はキャリア最強の状態にあると言っていい。
文/橋本宗洋
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