初めての出会いから24年、ノアで共に過ごして21年…2人の人生ドラマが詰まった丸藤正道と杉浦貴のGHCヘビー級選手権は32分9秒の大熱闘になった。なかでも目が離せなかったのは丸藤のパーフェクト・キーロックと杉浦のフロント・ネックロックの読み合いの攻防戦だ。

 今回のタイトルマッチは、6・13TVマッチで丸藤のパーフェクト・キーロックをフロント・ネックロックに切り返して勝った杉浦が挑戦表明して実現したもので、その後6・27TVマッチでは丸藤がフロント・ネックロックをジャックナイフ式のエビ固めで丸め込んで勝利、7・3横浜のシングル15分1本勝負では読み合いの末に杉浦のフロント・ネックロックがガッチリ決まったまま時間切れのゴングになっている。このタイトルマッチ本番でもスリリングな読み合いが展開された。

 そして杉浦のオリンピック予選スラム、丸藤の雪崩式不知火が炸裂しても決まらない大勝負を動かしたのは、丸藤の様々なバリエーションの虎王だ。杉浦の鉄壁のディフェンスを崩して虎王、ボディへの虎王、ローリング式虎王の3連打でカウント2、続く後頭部へのコブラクラッチ式虎王も杉浦はカウント2で肩を上げた。「ならば!」と武藤敬司からGHC王座を奪取した虎王・零を発射!

 これにはさすがに大の字になった杉浦だが、丸藤はフォールにいかなかった。仕上げは杉浦をフィッシャーマンバスターの体勢で高々と抱え上げてのポールシフト式エメラルド・フロウジョン!“こだわりの技”で杉浦との戦友対決を制したのである。

 ポールシフトは、06年9月に秋山準を撃破してGHC王座を初戴冠した丸藤が、KENTAとの「ノア新時代の完成形のプロレス」と呼ばれた2度目の防衛戦で初公開したオリジナル技。そしてエメラルド・フロウジョンは三沢の代名詞。それをミックスさせて14年6月13日の三沢メモリアルナイトの齋藤彰俊戦で生まれたのがポールシフト式エメラルド・フロウジョンだ。

 実はポールシフト式エメラルド・フロウジョンは、彰俊にポールシフトを仕掛けようとした時に体勢が崩れてエメラルド・フロウジョン式に叩きつけて偶然生まれた技。考案した技ではないからオリジナルの名称を付けていないが、その後“ノアの大一番”の時に丸藤の守護神となった。

 14年7月5日、有明コロシアムで新日本プロレスの永田裕志に奪われていたGHC王座を奪回して7年7か月ぶりに頂点に立った時のフィニッシュがこの技だった。15年に勃発した鈴木軍との抗争で「鈴木軍の選手が優勝したらノアを解散する」と公約した『グローバル・リーグ戦』の優勝戦で鈴木軍のシェルトン・X・ベンジャミンに勝ったのも、同年12月23日の大田区体育館で鈴木みのるからGHC王座を奪回したのもポールシフト式エメラルド・フロウジョンだった。さらに16年に新日本の『G1クライマックス』に参加した時に開幕戦でオカダ・カズチカも撃破している。

 ノアのピンチを救い、外敵をことごとく倒してきた必殺技で戦友・杉浦を倒した丸藤。この技で丸藤が杉浦に勝ったのは『方舟新章』と呼ばれた14年の最後のビッグマッチの12月6日の有明コロシアム以来。永田からGHC王座を奪取した丸藤に「ノアに残った2人で最高の試合をしましょう」と杉浦が挑戦した試合である。あれから6年8ヵ月…大切な戦友対決のフィニッシュにポールシフト式エメラルド・フロウジョンを使ったのも頷ける。いや「この技でなければ倒せない」という切羽詰まった気持ちが駄目押しの一発になったのかもしれない。それほど杉浦は強かった。

 これで2人の対戦成績は丸藤の5勝9敗2引き分け。花道を引き揚げる杉浦に丸藤は言った。「杉浦さん、21年目のこれからもどうぞよろしくお願いします!」。2人のリング上の人生ドラマは続く。

文/小佐野景浩

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