週刊文春によるEXIT兼近の逮捕歴報道は「権利侵害」なのか?「報じる自由はあるが、問題はどういう形で報じるかだ」佐々木俊尚氏
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 「この度は、お騒がせして大変ご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございません」「今回の事で改めて自分の過去としっかり向き合おうと思いました。兼近は過去の法律違反を美談とする気も肯定する気もありません」。が5日、自身のツイッターに「関係者、応援してくれている皆様へ」と題した1000文字近い文章を投稿した、お笑い芸人EXIT兼近大樹

 発端は、兼近の芸能界デビュー前の逮捕歴を同日発売の『週刊文春』(文藝春秋)を報じたことだった。同誌は報道の意図について、『文春オンライン』上で「テレビ番組に出演し、人気を集める芸人は社会的影響が大きい存在」「記事は、現在の兼近さんを否定するものではない」「兼近さんという芸人がいかに生まれたのかを伝える記事であることは読者に理解してもらえる」と説明している。

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 兼近の相方のりんたろー。は「記事の本人が言っている事に関して、僕はコンビを組む時に聞いていました」「過去は決して変えられないけどその過去を悔い改め応援されるよう今を歩むことはできるはずです。だから僕は彼と一緒に目標に向かって走ることを選びました」と1600文字を超える文章をツイッターに投稿。兼近自身も「今回の未成年の罪を報道されてしまったことに関しては自分のした事なので、ルールはどうあれ受け入れます。むしろ世に事実を伝えられたので多少の感謝もあります」としている。

 その一方、EXITが所属する吉本興業は、事前に逮捕歴のことを相談されていたが、本人が反省・更生しており、未成年時の前科であることから公表していなかったことを明らかにした上で、過去の逮捕歴を正当な理由なく実名で公表するのは著しい権利の侵害であるとして、文藝春秋社に法的措置を検討しているという。

 今回の報道について、ネット上には「残念すぎる。今後の見る目も変わる」「最初はショックだった。でも、罪を背負っているから今の兼近さんがある」「更生した人が活躍するのを見ることほど嬉しいことはない」といった意見の他、「立ち直った後もたたくの?しかも全国発売の週刊誌で?何のために」「これは“知る権利”でも“表現の自由”でもない」など、『週刊文春』の報道姿勢を批判する声も少なくない。

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 5日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演したジャーナリストの佐々木俊尚氏は「法的制裁が終わった話を蒸し返すのは倫理的にどうなのかという問題があるが、過去に起きた事実を書いてはいけないということはない。それは表現の自由だ。一方、編集部は批判が集まった後に出したコメントで言い訳をしているが、『文春オンライン』に掲載された記事を見てみると、"吉本芸人EXIT兼近が少女売春あっせんで逮捕されていた"という見出しになっていた。そうではなく、"実はこんなことがあったが、ここまで更生して素晴らしい有名な芸人になれてよかったよね"というものにすれば何も問題はなかったのではないか。例えば『婦人公論』では、本人の納得の上で"私は、実は過去にこういうことがあって、ここまで立ち直った"というような形で女性を取り上げているが、読者は悪いイメージを持つことなく、"良かったね"と感じている。逆に5年前のツイートをほじくり出して、どういう文脈で語ったことなのかを引き剥がして批判するということも行われている。つまり、事実にまつわるコンテキストや、それをどういう形で報じるかの問題だと思う」と話す。

 さらに佐々木氏は「『週刊文春』は一時期やたらと"不倫報道"をやっていたが、ある次期から皆の興味が無くなり、反応しなくなってきた。『週刊文春』という正義の味方と、不倫をした著名人=悪人という構図だったのが、"書いている方がおかしいのではないか"というイメージも出てきた。インターネットの時代には、そのようにして報道する側の信頼度が下がるということが起やすい。こういうもので憂さ晴らしをする人がいるのも事実だろうが、文春が今回のような報道をし続ければ"もう読まなくていいのでは"という話にもなってくるかもしれない。それでも、週刊文春が書くことは自由だ。問題は、これをもって"もう兼近を使ったらまずいだろう"と、テレビなどが起用を自粛する方向にいくことだ。これは良くない」と指摘した。

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 慶応大学特任准教授で若新雄純氏は「表現の自由の問題としてひとくくりにされがちだが、一方的に報道を押し付けるのではなく、"こういうふうなことが明らかになってきたが、あなたはどう思うか"という本人の反論や、他の人の意見も含めたセットの形で表現するというように、そろそろ表現の質を上げていくべきだと思う。一方で、まだまだ買う読者はいると思っている。ちょっと頑張っただけでガンと給料が上がったり、生活が劇的に豊かになったりする時代ではないだけに、成功している人を落とすことでストレスを発散し、快感を覚えてしまう人も多いと思う。兼近さんを落として喜んだところで、その人の人生は1mmも良くはならないが、それでも慰められる感情があるのではないか」とコメント。

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 また、EXITにとっては吉本興業の先輩でもある、お笑い芸人コンビ「インパルス」の板倉俊之は「やはりお金になるからやってしまうのだと思う。嫌だと思う人は買わないしかない。ただ、本当に漫画や小説が好きで編集者をしている人たちもいるわけだし、雑誌や出版社を一括りにして批判するのはどうか」と疑問を呈しつつ、「EXITはめちゃめちゃいいやつら。法に触れてこなかったけど嫌なやつよりも絶対にましだ。あいつらを突くとしたら、こんなことじゃなくて、黒いマスクが付けづらくなったことをつついてほしい」と笑いを誘っていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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