アベノミクスの継承、どこまで?「いつまでも今のまま、という話にはならないだろう」石破氏に聞く金融・財政政策
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 自民党総裁選に向け「納得と共感」のスローガンとともに掲げた『石破ビジョン』で、「令和新時代のポストアベノミクスへの展望」として、「デフレに後戻りしないマクロ経済政策を継続。格差是正、地域分散と内需主導型経済への転換」を主張する石破茂氏。

 “ポスト安倍”として、安倍政権の経済政策をどこまで継承するのか。『ABEMA Prime』で話を聞いた。

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■「金融政策を突然変えるつもりはない」

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佐々木俊尚(ジャーナリスト):石破さんは以前から“財政健全化論者”だと言われている。どのぐらい財政に力を入れていくのか。

石破:金融政策も財政政策も、“社会をどう変えていくか”ということのために用いられるべきもの。確かに円は安くなった。円ベースで換算すると、売り上げは伸びていないけど、企業は利益を上げている。そして株価も上がった。だけども低所得の方々の可処分所得は上がらず、生活保護受給者数は制度が始まった昭和25年と同水準になってしまった。そして金利はほとんどゼロだ。私は銀行員だったが、昔は定期預金に預けると利息が7%くらいついてきた。しかし今ほとんどつかないので、金融所得がずいぶん減ってしまった。このままではお金にマーケットメカニズムが働かない。必要なところにお金が行かず、そうじゃないところに滞留するんじゃないか。金融政策を突然変えるつもりはないが、それによって社会構造がどう変わっていくのかということを考えれば、いつまでも今のまま、という話にはならないだろう。

平石直之アナウンサー:大規模な金融緩和策も方針転換するのか。

石破:当面は続けていかなければならない。そうするとやがてハイパーインフレが起こるぞという人がいるが、それは第1次世界大戦後のドイツとか敗戦後の日本のように、供給力が徹底的に破壊された時に起こること。日銀の当座預金に積みあがっている国民の金融資産をどうやって有効活用するか、低所得者で消費性向の高い方々の消費をどう喚起するかという金融政策でありたい。

■消費税率の引き下げは「安定財源を見出さなければ無責任」

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佐々木:アベノミクスの“3本目の矢”である構造改革に切り込まない限り乗り越えられない部分があるのではないか。

石破:漁業、農業、林業などもそうだが、色々なところの潜在成長力を活かし切ったか。21世紀は世界の人口が倍になって日本の人口は半分になる。農業にもっと付加価値を付けて売ることはできるはずで、コロナ禍の間にどうやってその構造改革をやるか。また、魚が獲れる海の面積は世界第6位、海水の体積は世界第4位だ。漁業もどうやって付加価値を付けて売るか。羽田市場みたいな流通のあり方、あるいはテクニカンがやっているような冷凍技術を活かし、少量多品種高付加価値という体制、流通があるべきではないか。1年に成長する木の量だけで日本の木材需要はみんな賄えてしまう。そうすると林業にもすごい伸びしろがある。そういう部分がいっぱいあるのではないか。

佐々木:第2次安倍政権では、それが岩盤規制に阻まれてずっとできない状況にあった。

石破氏:例えば“株式会社が農地保有すると何をやるか分からないよね”と言われるが、本当にそうだろうか。兵庫県の養父市では土地をどうやって有効利用するかという取り組みをやっているが、これを広域的に展開することが可能なのでないか。木のコンクリートと言われるCLTの建築を飛躍的に拡大させるためには建築基準法を見直していくことが必要ではないのか。あるいは漁業も市場の役割を見直していけないだろうか。

平石:コロナによる経済の落ち込みが大きい中、消費税を下げて欲しいという声も上がっている。

石破:それに代わる安定財源を見出さなければ無責任だ。消費税には逆進性があるから、低所得の方々の消費を抑制する面がある。そこをどう考えるかだ。すぐにベーシックインカムにはできないが、低所得者の方々の所得をどう増やしていくかということを考えながら、消費税の持っている役割をきちんと認識し、それに代わる代替財源はあるか、法人課税の部分ではありはしないか。ただ、その研究はまだ十分ではない。いずれにしろ、どんどん消費税を下げていくという話にはならない。

■党内・国会対策は?「難しい法案でも成立させられる自信はある」

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佐々木:石破さんの『日本列島創生論』は非常に興味深く、すばらしい内容だと思ったが、実際に実行しようとすると大変だろうなと思う。国民、党員の支持率は高いが、なぜか議員の間では低い。それには根回しをせず一人で全てをやってしまうからだという評価もあるようだ。

石破:私は防衛庁長官の時も、防衛大臣の時も、農林水産大臣の時も、地方創生大臣の時も法律案はほとんど成立させてきた。有事法制に至っては反対したのは社民党と共産党だけだった。要は、国会答弁の場でどれだけ分かってもらえるか、ということだ。野党の方々に“もう分かったよ”と言ってもらえるまで丁寧に答弁しなくてはダメだ。インド洋に護衛艦を派遣した時の参議院は野党の方が多く大変だった。だったら街頭演説をやって納得してもらおうと努力した。そういうことによって、難しい法案でも成立させられる自信はある。

佐々木:党内の調整はどうか、政調会などの手綱を握ることはできるのか。

石破氏:それは闊達な議論をすることだ。私が議員になった頃は“ひな壇”と言って、ひとりひとりが心ゆくまで演説をして議論を戦わせるから、幹部は最後まで黙っていろと。そうすれば自ずと議論は収斂するものだ。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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