“自分のありたい姿で撮り直し”大学院生の女性3人が始めた「卒アル上書きプロジェクト」に若新雄純氏も賛同「正解より納得が大事」
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 卒業時に配布される大切な卒業アルバム。学生時代の懐かしい思い出が詰まった卒業アルバムだが、ネット上では「化粧も絶対だめな高校だったから無理すぎる」「自分の顔嫌いすぎていまだに開けないまま」「卒アルの写真が黒歴史すぎて好きな人に見られたくない」と、他人に見せたくないと思う人も少なくない。

【映像】卒アル写真を「好きな自分」で撮り直しする女子高校生(撮影イメージ)

 実際に、文科省が18歳を対象に「悩みや不安」について15項目を提示し調査したところ、女子では「自分の容姿に関すること」を選んだ人が、「進路」に次ぐ2番目の多さになった。

 そんな中、話題になっているのが「卒アル上書きプロジェクト」だ。人に見せたくない卒業アルバムを、メイクをした「好きな自分」の写真で上書きするこのサービス。9月25日にクラウドファンディングを開始し、すでに目標額の20万円を上回っている。あまりメイクをしたことがない人には、簡単なメイク講座付きの撮影プランも用意し、撮影した写真の中にはアルバムに貼って剥がせる仕様のものもあるという。

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 このプロジェクトを発案したのは、東京大学大学院1年の小野万優子さんだ。発案した経緯について、“化粧一切禁止”の高校に通っていた自身の経験がベースになっていると話す。

「先生たちの中で『高校生はすっぴんが一番きれいだからしなくていい』とか『高校生らしくあったほうがいい』というようなことを言う人がいた。人生のどのポイントが一番きれいかどうかは、他人に決められることじゃない」

 「すっぴん」を強制された高校時代。一方、卒業後は「女性はメイクをすることが当然」という風潮に疑問を抱いた。支援やサービスの申し込みをする人も、容姿へのコンプレックスに悩む人が多いという。

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「卒業アルバムを通じて、メイクの価値観をみんなで考えたい。もっと、1人1人が自分を幸せにするために、メイクという選択肢を取ったり取らなかったりする価値観が広まればいいなと思ってこの活動をやっています。コンプレックスとの向き合い方に悩んでいる人や、高校時代に本来自分のありたい姿で写真を撮ることができなかった悩みを抱いている人もいる。卒アルを塗り替えるとか過去を否定して新しい写真を撮るということではなく、本当に自分がありたい姿で写真を撮る、それが今後自分の外見の悩みを持っている人たちに対して、もうちょっと生きやすい社会になればいいなと思っています」

 小野さんたちは今回の活動を通じ、「外見に関して自分が生きやすいと思える選択肢を選べる」よう訴えたいとしている。

 このニュースに慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「10代の犠牲や我慢が必ずしも将来に結びつくとは限らない」と見解を示す。

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「学校生活は社会の中でも特別な空間。世の中とは少し違う常識や特殊なルールで動いている部分があると思う。なぜ、特殊なルールで動いているかというと、先生たちは『今我慢しておくと将来いいことがある』『将来のために今を犠牲にできた人が勝つ』と、進学校であればあるほど言う。僕も地方の進学校でそういうことを言われてきた」

「10代の時間は二度と返ってこない。どう過ごすのは人それぞれで、将来のためにすべてを捨てて勉強だけするのもいい。でも、大切なのは本人が納得して決めるべきだということ。高校生は思春期後半で、自分の意思がある。親や先生の言うことが妥当だとしても、100%の正解はないのだから、誰かに自分の過ごし方を決められるべきではない。10代を犠牲にしたり、我慢したりして将来が100%約束されるものではないのだから、どれが正解かよりも、納得が大事ではないか。本人の納得のないまま、10代をこう過ごすべきと言われて育った人が、今疑問を持って、『違ったのではないか』と自分たちなりのメッセージ・アンチテーゼを発信しているところが素敵だと思う」

 若新氏の解説にテレビ朝日田中萌アナウンサーも「私も山形県の高校で、3年間部活と勉強を頑張って国公立大学に行くことが優秀だとされていた」と共感。「私はそこから外れてしまったけれど、本当にその道だけが正しいのか、振り返ってみてもいいのではないか、と思うときはあります」と明かした。

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 正解のない10代の過ごし方。その上で、若新氏は「10代をどう過ごすかについてもっと尊重されるべき」と語る。

「高校生はメイクをするべきか、しないべきか、という話ではない。人によっては『高校生だからしない方がいい』っていう人もいる。大切なのは、10代をどう過ごすかについて、もっと尊重されるべきということ。大人になって自分が間違っていたと知ったとき、誰かに言われて損をしていたら取り返しがつかない。大人になって『先生に言われたのに』『親に言われたのに』と思ってしまうことが一番悲惨。ちょっと間違ったと思っても、自分で考えて、自分で納得してやったことであれば、遠回りしても納得できる。高校生にもっと“選択”できる機会があっていいのでは。そういう意味では意義があるプロジェクトだと思う」

 他人が決めた価値観に捉われるのではなく、自分の価値観は自分で決めるもの。このプロジェクトで、救われる人もいるかもしれない。

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

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