「冤罪だったら」「トラブルに巻き込まれたら」…見て見ぬ振りをしがちな痴漢やナンパ被害、まずは協力のマインドで性暴力が起きにくい社会に
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 警察庁がまとめた「電車内の痴漢撲滅に向けた取組みに関する報告書」(2011年)によれば、痴漢を目撃した時、「何もしない」と答えた人が45.2%に上り、「被害者に声をかけた」(32.1%)、加害者にやめるよう働きかけた(26.2%)を上回っている。

・【映像】加害者や被害者でなく第三者の行動変容を促すYouTube動画が話題に

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 高校1年生の頃、満員電車の中で毎日のように痴漢被害に遭っていたという殿岡たか子さん(20代)は、「頭が真っ白になってしまって、声も出せず、相手の手も掴めず、泣き寝入りしていた」と振り返る。後に防犯ブザーを携帯するようになったが、「大きな音を出せば他の乗客から白い目で見られるんじゃないか、迷惑がられるかなとか考えて押せなかった」。そしてある時、やっとの思いで「助けてください」と声を上げたが、周囲の反応は、まるで殿岡さんの声が聞こえていないかのように冷やかだったという。「頑張って声を出したのに。パニックでフリーズしてしまって」。

 ジャーナリストの堀潤氏も、「高校生のとき、バスを降りると潜んでいた男性にいきなり手を握られて、“行こうよ”と言われたことがあった。これって痴漢だと思ったけれど、怖くて声が出なかった。こういう時って、本当に出ないものなんです。そして他に降りてきた人たちは、誰も僕のことを気に留める事なく、去ってしまいました」と振り返る。

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 一方、街で話を聞いてみると、「助けた方がいい」と分かっていながらも、もしも誤認だったら自分がトラブルに巻き込まれるのでは、といった考えから、なかなか行動に移せない人々の心理も浮き彫りになる。カンニング竹山は「僕の場合、“どうしたの?何かやってない?”と、逆にワーッと言っちゃって、むしろトラブルになることもある。でも僕のような人はきっとマイノリティだろうし、どうすればいいのかが分からない人の方が多いはず。僕だって、こういう仕事をしていなければ、傍観者になっていたかもしれない」と話す。

 こうした状況に対し、日常で起きる性暴力を見過ごさず、第三者が声を上げようと呼びかけるネット動画「#ActiveBystander(行動する傍観者)」が話題を呼んでいる。

  すれ違いざまの痴漢行為や執拗なナンパなど、身近な性暴力に遭遇する度に視線を逸し、見て見ぬふりをしてしまう主人公の男性。しかし、もしも痴漢被害を目にした時に「僕見てましたよ。警察行きますか?」と声をかけていたら?あるいは、ナンパに困惑する女性を目にした時に「お久しぶりです。元気でした?」と咄嗟に声をかけていたとしたら?

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 “傍観者視点”のこの動画を手掛けた助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさんは、「その場で拒絶したり、大きな声を出したりするのは難しいこと。実際、身体がフリーズしてしまって何もできなかったというのは多くの性暴力経験者が証言している。また、そうした話を聞いた第三者に、“拒否すればよかったじゃないか”とか“声をあげればよかったじゃないか”みたいに言われて苦しむケースも多い。そして、被害者に“頑張って自衛して下さい”と求める情報発信も多い。そうではなく、そもそも性暴力が起こりにくい環境をつくることが大事なはずだし、そのためには第三者の力が必要だと思った」と話す。

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 「“自分にも攻撃の手が向くんじゃないか、何時間も警察にいなきゃいけないんじゃないか”みたいな懸念を抱けば、手を掴んで警察に、といった具体的なアクションを起こすのはハードルが高いと思う。でも、“もしかしたら”と思った時に2人の間にちょっと割り込んでみるとか、知り合いの振りをしてみるとか、小さな一歩から被害者が救われるということをぜひ知っていただきたいと思うし、実際に動画が参考になったというコメントが寄せられているのは嬉しい」。

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 痴漢抑止活動センターの松永弥生代表理事も「やはり加害者は犯罪者なわけで、一般の人が単純に“近づきたくない”と思ってしまうのは当たり前のことだと思う。また、加害者が“冤罪だ”と叫んだ場合、どちらを信じていいのか、現場をきちんと見ていなければ分からないと心配する声もある。その場合は加害者側に声をかけるより、被害者の方に“ご気分が悪いんですか?”とか“大丈夫ですか”と声をかけるのでもいいと思う」。

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 他方、シオリーヌさんは「女性からは、自分も同じ被害に遭ったことがあるよとか、友達が経験したという声があった一方、男性からは、“こんなケースがあるんだ…”という驚きのリアクションも多かった。撮影スタッフの男性も、私の夫もからも同じような声があった。そういう情報のギャップもあると思う」、松永さんも「私のところにボランティアに来てくれている男性の場合、被害者を助けたところ、周りの大人がニヤニヤしているのを見たり、警察の聴取に何時間も付き合ったりしたという。さらに帰宅すると、親に“危ないから、そういうときは見て見ぬふりをしろ”と言われたという」と課題も指摘する。

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 堀氏は「会社員時代、廊下で同じ会社の人とすれ違っても、知らない人同士であれば無言ですれ違っていくのを見て、そういう環境の中でセクハラやパワハラというのは起きてしまうのかも知れないと感じた。顔見知りでなかったとしても、普段から“お疲れさま”“どうも”みたいに言い合う、そういう日々の積み重ねとして大事なのではないか。それは近所や地域でも同じだと思う」とコメント。

 シオリーヌさんも「私の場合、医療職の経験があるせいか、電車内で泣いている赤ちゃんを見かけると、お母さんに“大丈夫ですか”とつい声をかけてしまう。やはり初めての人と会話することへの慣れというのは必要なことだと思う。その意味では、“何かあったら協力するというマインドが大切”。映像にも描かれているように、まずはアクションを起こした人の横に立って“乗っかる”だけでもいい。そうした経験があれば、次からは声をかけられるようになると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

加害者や被害者でなく第三者の行動変容を促すYouTube動画が話題に
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