新型コロナウイルスの流行をきっかけに、地方へ移転する企業が相次いでいる。総合人材サービスのパソナグループは、8月に東京から兵庫県淡路島へ主な本社機能を移転すると発表。企業の“脱東京”が加速している。

コロナ禍で“脱東京”の動きも…若新雄純氏「“居場所”としての職場はどこかに必要」
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 慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「お客さんとの打ち合わせや受発注内容の確認などはオフィスで集まってやらなくても、ネットで十分にできることが分かってきた。業種にもよるが、特にIT系は(コロナ禍で)どこにオフィスがあっても、お客さんや提携業者とのやりとりはネットで完結できると気づいた人はけっこう多いのでは」と推測。その上で、同僚同士が集まる“居場所”としての職場に言及する。

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「職場内の同僚同士の役割分担の確認や、進捗確認みたいなものはネットでも問題なくできると思う。ただ、聞いている限りでは、それだけだと同僚同士の仲が悪くなってしまったり、なんか微妙な空気になったりしてしまっていることが多いようだ。会社には上下関係や評価、競争、給料の違いもある。そのあたりのバランスをとりながら人間関係をつくってきているので、オンラインでただ用件だけ伝え合っていればうまくいくかというと、そうじゃないのかもしれない」

 お客さんとの打ち合わせはオンラインで問題ないが、会社の同僚メンバーとはたまに集まれる場所が欲しい――。そんな意見に若新氏は「昨日のテレビを見た感想や日々の愚痴を言うような場所」は必要ではないかと述べる。

「今までは、家賃の高い街中にオフィスがあることがお客さんに対しても信用だった。でも、会社のメンバー同士で集まるためだけだったら何も都心じゃなくていい。パソナグループの移転は、地域を盛り上げる意味もあったと思うが、ネットで繋がれるからといって全員在宅じゃダメで、家賃の高い都会ではなくてもみんなが集まるオフィスはちゃんとつくるということではないか。適当に昨日のテレビを見た感想や愚痴を対面して言えるような場所は拠り所としてどこかに必要なんだと思う」

コロナ禍で“脱東京”の動きも…若新雄純氏「“居場所”としての職場はどこかに必要」
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 国土交通省では8月~9月に都内に本社がある上場企業2024社にアンケートを実施。「オフィスの全面的な移転や一部移転・縮小について具体的な検討はあるか?」と聞いたところ、回答した375社の中で「検討している」が97社、「検討していない」が278社だった。

 「検討している」で多かったのは、不動産業、物品賃貸業、情報通信業で、移転先候補地(複数回答)について、東京23区が73%、埼玉・千葉・神奈川が21%、東京23区外が4%、地方圏が4%だった。そのほか関東近郊や名古屋圏、大阪圏などが挙がった。国交省は「単身赴任の廃止やテレワークの浸透は東京の一極集中是正に有効だが、地方の魅力向上など東京圏外への移転を促す取り組みが課題」としている。

 このニュースに前述の若新氏は「地方に移転する場合、土地があって、いい建物があっても、なかなかそれだけではうまくいかない」と指摘する。

「その地域の文化やコミュニティーと上手に結びつけてくれるコーディネーターが必要。受入れたい自治体は、企業は都会から来るから、都会の企業のことをわかっているような民間企業にコーディネートを委託しているケースがあるが、僕はそうじゃない方がいいと思う。その街のことを誰よりも詳しく知っていて、その人の紹介だったら話を聞いてもいいよっていう人がコーディネートをするべき。適任だと思うのは、役所の職員。なんだかんだ言って地元で信頼されていて、実は窓口として適切な人たちが多い」

 新型コロナウイルスの第3波流行で高まりつつある“脱東京”の動き。東京の人口が今後どのように変化するのか、気になるところだ。

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

【映像】カギは地元の長男? 企業の“脱東京”
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