身体の動きを遠隔共有する「ボディシェアリング」 若新雄純氏「『自分とは何か?』という哲学的問いとセットで盛り上がる」
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 ベンチに座りながら腕を動かす男性。男性がVRゴーグルで見ているのは沖縄のマングローブでカヤックに乗る映像だ。実は遠隔地から映像を見ているだけではなく、操縦者が感じているカヤックを漕ぐ重さや、揺れなど、身体の動きまで共有、体験している。

 沖縄に行かなくても沖縄のアクティビティが体験できる――そんな夢のような体験をかなえる「ボディシェアリング」という研究に注目が集まっている。

【映像】「まるで攻殻機動隊の世界」遠隔地で“身体の共有”を実験する様子

「体の動きや筋肉の緊張具合といった今まで提供できなかった情報を新しいセンサーであったり、アクチュエーションの1つとなる電気刺激であったり、そういう技術を使ってコンピュータにインプットしたり、コンピュータからアウトプットしたりしています」

 そう語るのはベンチャー企業「H2L」の創業者で早稲田大学理工学術院・准教授の玉城絵美さん。玉城さんは「ボディシェアリング」によって、観光やアクティビティだけではなく、他者とさまざまな動きを共有することができると話す。

「教育関係で『こういう風に体を動かしてほしい』と教えるのは、なかなかリモートではできなかった。でも、コンピュータを介して体を制御することによって『手指をこういう風に動かすんだよ』と遠隔から教えてあげることができるようになる。映像と音声だけのテレビ会議から、さらに先の体の動きまでリモートで伝えられることによって、リモートワークやリモートエデュケーションの可能性が広がってくる」

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 遠隔地での身体の共有が実現できれば、第三波が押し寄せるコロナ禍において、“究極のリモート”手段になるかもしれない。玉城さんは、今回のパンデミックに直面することを昨年から予測して研究を進めていたという。

「研究自体は2010年よりも前から準備をしてきました。2019年頃には、今回のコロナのようなことが10年以内に起きるんだろうと考えていたんです。移動に関する研究をして、シミュレーションを行った結果、あまりにも近代の移動が活発になりすぎていました。人間の移動速度が速くなれば速くなるほど、伝番速度も速くなる。そうしたときにパンデミックというのは起きやすいと。もっともっと速くなっていけば、今後危険な状態になるんだろうなというのを感じ取りました」

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 高校時代、病気で入院生活を送り、外出や旅行ができなかったことが研究を始めるきっかけになった玉城さん。「ボディシェアリング」が描く今後の未来についてこう話す。

「登山している人や宇宙に行っている人など、もう10年経てば我々の人生で100年生きても体験できなかったことが、体験できるようになる。宇宙に行けたり、エベレストを登れたり、みんなで身体をシェアしあって、人類として面白い体験ができる世の中を作っていきたい」

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 このニュースに慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「まさに『攻殻機動隊』の世界」と興味津々。『攻殻機動隊』は、士郎正宗氏による漫画作品で、過去には劇場用アニメやテレビアニメも公開された人気SF作品だ。

 20年以上前に『攻殻機動隊』を知ったという若新氏は「人間の肉体的な動きは脳との電気信号で行われていることが細かく描かれている作品。作品の中では遠い未来のSFのように描かれていたが、いよいよ技術が追いついてきた。コードがなくても、5Gなど通信技術が進んでいけば、理論的には、他人の身体すらも電気信号で動かせるようになる日が来るのだろう」

身体の動きを遠隔共有する「ボディシェアリング」 若新雄純氏「『自分とは何か?』という哲学的問いとセットで盛り上がる」
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 その上で若新氏は「身体の拡張は哲学的な問いとセット」と語る。

「究極のリモートの世界では『どこまでが自分なのか』という議論が起きてくるだろう。今までは自分の身体は自分にしか動かせなかった。時間や空間に制限されていたからこそ、自分は今ここにいて『この身体を持っている私が自分』だったけれど、他人の身体まで借りることができるようになれば、その境界はすごくあいまいになってくる。そうなると、どこまでが自分だと言えるのか。まさに攻殻機動隊で描かれたようなテーマでもあるが、身体の拡張は『自分自身とは何か』という哲学的な問いとセットになって盛り上がっていくのだろう」

 リモートの発展によって「哲学的なテーマも盛り上がってくる」と話す若新氏。今後の「ボディシェアリング」の研究に注目が集まっている。

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

【映像】沖縄にいながら...ボディシェアリング
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