東京オリンピック・パラリンピックの“無観客開催”に関する議論が注目を集めている。7日のABEMA『NewsBAR橋下』に出演した神戸大学の岩田健太郎教授は、「非常に難しいミッション。ただ、橋本聖子会長が“他のスポーツ大会でも観客を入れているから”、あるいは川淵三郎さんも同じようなことを言っていたのは完全に間違い」と指摘した。
「Jリーグの観客は、ほとんどがホームの人たちだし、人の移動もその地域圏内だけ。プロ野球や他の大会でもそうだ。ところがオリンピック・パラリンピックは世界中から人が集まってくるので、多様性が出てくる。仮に海外からの観客は受け入れなかったとしても、47都道府県からの人が東京に集まれば感染が起きる。多くの方が宿を取るはずだし、外食をして観光をして…ということもセットになっているはずだ。そうなると東京でのクラスターの要素が高まるし、地元に持って帰ったウイルスによる感染が広がり、さらに再び東京に感染が持ち込まれるということにもなると思う。つまり観客数が5000人だとか1万人だとかというのは本質的な問題ではない。また、仮に無観客でやったとしてもスタッフやボランティアも47都道府県から集まってくるわけだから、同じ問題が起きる。
アスリートはPCR検査を定期的にやっているし、空港や宿舎やスタジアムなどの間しか移動しないという計画ようなので、他に広げようがない。加えて元気で健康だから、感染したとしても軽症や無症状ですぐに回復する人が大多数だろう。しかし組織委員会やスタッフには高齢の方や持病を持っている方もいる。彼らなしに開催は不可能だが、一方で安全に東京に集める方法は確立されていないと思う。ものすごくハードルが高い」。
これに対し橋下氏は「年末のラグビー選手権なんかも観客を入れてやったが、このときにどう感染が広がるのか、なぜ政府はモニタリングしなかったのかと思う。ただし、大都市部であのような大規模イベントをやった後で爆発的な感染拡大があったという報告は今のところない。お正月の駅伝も、あれだけ人が集まっていたけれど、観に行ったことで感染しました、という報告はない。もちろん経路不明というのもあるけれど、飛沫感染を抑えられれば、それほどリスクは高くはないのではないか。100歩譲って危ないというのであれば、例えば島根県など、感染者数がゼロに近い地域の人達が観客として入るのも苦肉の策としてはアリではないか。もちろん、その後で観光に行ったり、飲んだり騒いだりするのはナシで。僕も3月からは東京に毎週行く予定だが、ホテルに閉じこもることにしている」と打開策があるのではないかとコメント。
ところが岩田氏は「感染がない地域で動くのは問題ない。旅行も宿泊も外食もそうだ。だから島根からの観客を入れる場合、東京で感染が落ち着いているという前提条件がなければならない。島根の人が東京に行って感染し、持ち帰ってクラスターを広げてしまう可能性もあるからだ。実際、国立感染症研究所の遺伝子解析では、去年の第2波以降は東京から各都道府県にウイルスを持った人が移動したのが感染拡大の遠因だったということがほぼ明らかになっている。橋下さんのご指摘のように、確かにスタジアムの中で観戦してる間に感染するリスクはそんなにない。ただ、やはり観戦だけして帰る人はそんなにいないし、宿泊などがついてくる。現に高校バレーや高校バスケでも、他地域から集まった複数の高校生のクラスターが確認されている。残念ながら日本は保健所単位になっているので、県をまたぐ感染の調査は苦手。だから高校スポーツのクラスターについてもほとんど報道されなかったし、僕が知る限りで系統的な調査もできていない。やはりスポーツイベントはリスクにはなってしまう」と話していた。(ABEMA/『NewsBAR橋下』より)