相次ぐ「多頭飼育崩壊」臨床心理士が明かす“解決の鍵” 状況が好転する人の特徴
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 12日、犬5匹を劣悪な環境で飼育したとして46歳の女が逮捕された。東京・大田区にある女の自宅には、犬や猫のほか、ワニ、トカゲ、フェレット、うさぎなど24種類計58匹のペットがいた。動物愛護法違反容疑で逮捕された自称占い師・桑添亜紀容疑者は「コロナで趣味の海外旅行に行けなくなり、この1年で多くの動物を購入した」と話している。

【映像】衰弱した犬が運び出される様子(1分30秒ごろ~)

 先月、環境省は自治体や住民向けに「多頭飼育崩壊」の防止につなげるためのガイドラインを公表。ペットの多頭飼育崩壊によるトラブルは全国で相次いでおり、現場では繁殖過多や虐待などが問題になっている。2018年には多頭飼育に関する苦情が、全国で2149件(世帯数)寄せられた。

 多頭飼育崩壊の背景には飼い主の生活困窮、高齢化による判断力低下、社会的孤立など、複数の要因が挙げられる。環境省は「リスクの高い飼い主へのアドバイスや指導」「ペットの不妊去勢手術や譲渡の手配」などを対策案として、福祉部門と連携して取り組むよう自治体に呼びかけている。

 このニュースに明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は、桑添容疑者に必ずしも該当するわけではないとした上で、精神疾患である「ためこみ症」に言及する。

相次ぐ「多頭飼育崩壊」臨床心理士が明かす“解決の鍵” 状況が好転する人の特徴
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「アニマルホーダー(※間違った方向で動物を抱え込む人)とも言われている、非常に難しい問題だ。当然、心理的な背景はあるだろう。必ずしも桑添容疑者が該当するわけではないが『ためこみ症』という精神疾患がある。物や動物をたくさん自分の手元に置きたいと思って、物を捨てたり手放したりできない」

 また、心理的には自宅を“ゴミ屋敷”にする人とも共通点があるという。

「社会的に孤立していて家族がいなかったり、社会活動しておらず、自分のオリジナルな世界・生活を保っている人が多い。その人たち自身が、社会的なつながりを求めているかと言うとそうではないことが多い。これは自宅を“ゴミ屋敷”にしてしまう人とも共通性がある。わりと今の生活に満足している人たちだが、一方で孤立が深まりすぎて、どうにもならないと諦めている心理もある」

 多頭飼育崩壊や自宅をゴミ屋敷にする人たちは、最初から社会的つながりを強く求めているわけではない。中には完璧主義が原因で片付けられないケースもあり、行政、福祉、心理、医療など複数人が多面的に相手と長い期間付き合っていかないと、現実には改善は難しいという。

「散らかしと整頓は真逆に見えるが、普段は潔癖だったり完璧主義なのに『完璧には片付けられないからこのままでいいや』と思ってしまうケースもある。客観的に見たら散らかっているのに、自分は『自分のものだから大丈夫,汚なくない』と思ってしまう独特の心理がある」

 藤井氏は、孤立が物を溜める行動につながっているとして、社会的なつながりが解決の鍵になると話す。

「自分で孤立する環境を作っていて、自分に対して心が配れない。セルフネグレクトのような状態とも言える。心理的なカウンセリングは必須であることが多いがそれだけでは十分ではなく、解決には多方面、多分野からのアプローチが必要だ。たとえば、動物の愛護は性善説に基づいている。お金さえあればペットが買えてしまうのだから、購入時には身分証明書を提示して管理するなど、まずはアニマルウェルフェアの観点から動物福祉のルールを整備することも必要。

 あるいはたとえ多頭飼育になったとしても、いざとなれば手放せるようなシステムや受け入れる場所を作る必要がある。さらには社会生活が送れていない当事者への福祉的支援も大事。実際に状況が好転する人は、新しい社会的なつながりや人間関係ができたり、趣味等何らかのコミュニティへの参加などを通じて改善に向かうことが多い。『自宅に人が来るから片付けよう』『△△さんと会うから身綺麗にしたい』などと、他人の目や存在によって変わる人がほとんどだ」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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