いまだビジョンなき東京五輪 都医師会長の発言は「もう無理の“勧告”だ」
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 東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長が27日、都内で記者団の取材に応じた。開催に否定的な経済界の反発に、武藤氏は「開催した方がはるかに経済効果ある」と見解を語った。

【映像】「アルマゲドンが起きない限り東京五輪は開催する」IOC“重鎮”の発言(1分ごろ~)

 23日、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は「違約金が莫大だという話はあるけど、しかし、ワクチン遅れの日本に200カ国から選手と関係者10万人が来日して変異株がまん延し、失われる命や、緊急事態宣言した場合の補助金、GDPの下落、国民の我慢を考えるともっと大きな物を失うと思う」とツイート。今月14日には、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が米CNNテレビのインタビューに「五輪開催は自殺行為でやめるべき」と答えるなど、経済界の有力者らが開催に反対する意向を明かしている。

 27日、日本記者クラブでオンライン会見を開いた東京都医師会の尾崎治夫会長は開催に賛否について「感染者数を抑えるには今が最後のチャンスだ」と述べた。その上で尾崎氏は「五輪をやるには(東京都の新規感染数が)100人以下にならないと、安全なオリンピックにつながらないと思う」と発言した。

 すでに開催まで2カ月を切った東京五輪・パラリンピック。東京の1週間の感染者増加率を30%減らし続ければ、5週間後には100人に近い数字になるが、『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』などの著者でノンフィクションライターの石戸諭氏は「尾崎氏は、まずもって日本医師会の政治資金パーティー問題を批判すべきだと思うが、その見解は『開催はもう無理だ』といった勧告を突きつけているようなもの」と話す。

「これから30%も感染者を減らし続けるなんて、だれもできると思わないだろう。最大の問題はオリンピックをやるのかやらないのか、やるとしてのロードマップ、やらないときの基準を誰も示していないことだ。開催するなら、どういった形式でやるのか。これを東京五輪・パラリンピックの組織委員会と東京都が示していない。選手だけを移動させて完全無観客で、取材も代表取材やオンラインに限って、選手以外の来日、会場への入場を認めないというなら実現には近づくかもしれない。しかし、そういったビジョンも示されず、有観客と無観客どちらで開催するのか、選手以外の関係者をどこまで入れるのか、まだ決定がでてこない」

いまだビジョンなき東京五輪 都医師会長の発言は「もう無理の“勧告”だ」
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 28日、東京都の小池百合子知事は定例記者会見で「東京五輪・パラリンピックの再延長の可能性はあるか?」と聞かれると、「再延期は難しいと思う」と回答。「選手は4年に1回の体調を合わせてくる。(出場する)選手が変わってしまうという意味で別物の大会になる」と改めて再延期の可能性を否定し、来月に決まる観客数については、具体的な明言を避けた。

 有観客か無観客か、それすらも決まっていない状況に石戸氏は「何かしらのビジョンを示すべきだ」と苦言。「もし観客を入れてやるのであれば、人の移動が増えるに従って感染者数は上がるだろう。また、運営方針を示したからと言って『そこまでしてやるべきものか?』という議論は別の問題だ。そこまでしてやるものではない、という声も尊重される必要がある。組織委員会と東京都がどうしてもオリンピックをやりたいというのなら、何かしらのビジョンを今すぐに示さない限り、世論の賛成は得られないだろう」と語った。

 こまめな手洗いとうがい、密を避ける、ワクチンを打つ……対処法が限られている中、どのような方針で大会運営を行うのか。岐路に立つ組織委員会と東京都、判断の行方が注目されている。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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