「7時半になるとラストオーダーを伝える日々、もう耐えられない」時短営業をやめ、酒類提供を再開した焼肉店オーナーの憤り
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 緊急事態宣言の再延長初日を迎えた東京。都が映画館や博物館などに対する休業要請を時短営業要請に切り替えたことから、開館を待ちわびていた来場者や関係者からは安堵の声も上がった。

 その一方、今も大きな我慢を強いられているのが飲食業界だ。時短要請に加え酒類の提供禁止要請が続いていることから、“休業”を選択する店も少なくない。

・【映像】木戸オーナーが生激白

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 大田区にある焼肉店「板門店」では、入口でのアルコール消毒や検温への協力を呼びかける他、テーブル間を仕切るビニールシートの設置、メニューの消毒、卓上の調味料や爪楊枝の撤去などの感染防止対策を去年5月から講じ、都からの時短要請にも応じてきた。

 しかし木戸大碩オーナーは今回の再延長を受けて舵取りを変える決断を下し、午後8時までの時短営業をやめ、昨日からは営業時間を午後10時までに延ばした。

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 「先月は売上が3割~4割程度に落ち込んだが、それでもまだ比較的影響が少ない方だと思う。そもそも人流抑制の前には医療提供体制の逼迫、そして病床の確保ということが課題になっていたように思うが、それについてはどのくらい改善されたのか。そうした情報がきちんと開示されないまま、ダラダラと期間を延ばしているだけではないか、どこまで耐えればいいんだろう?という気持ちが非常に強くなった。

 そういう中で、オリンピックの選手村にはお酒の持ち込みができると聞いた。“治外法権”という言葉を真っ先に思いついた。路上飲みも含め、お酒がこれだけ規制されているのに、さすがに矛盾していると思うし、納得いかない。再延長の期間が6月20日までというのも、ちょうどオリンピックまで1カ月前というタイミングなので、あまりにもでき過ぎだと思う」。

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 酒類の提供も再開、「もうコソコソやる必要はない」と、店の前には“のぼり”も用意した。

 「僕自身、全ての飲食店を平等に救えるとは考えていない。それは理想論だと思う。中にはお酒も出して、協力金ももらって、という飲食店もある。影響の大小も含めて、全て一緒くたにされていることが飲食業界関係者の抱える不満の一つだと思う。僕の場合は、お酒を出す以上、もちろん協力金はもらわない、という決意の表れというか、言い方は悪いが半ばケンカを売るぐらいのつもりでのぼりを立てた。

 今後、都に弁明書の提出する機会があると聞いているので、その場で質問をしてみて、納得できるような回答があるのかどうか。都の出方次第だと思うし、もし罰金みたいなものがあるのなら、その時にはまた対応を考えたい」。

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 ただ、こうした決断には葛藤もあったという。行政に対し大っぴらに反旗を翻すことに対する社会の反発が懸念されたからだ。

 「僕だけが言われるのは構わないが、僕が“やる”と言えばついて来てくれるスタッフの皆が誹謗中傷を受けないとも限らない。そのことは非常に悩んだ。それでも従業員の生活も支えなければいけないので、とにかく安心・安全を維持しながら、どれだけお客様に満足してもらえる環境を作っていけるかだとう思う。

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 お客様からは、“電車の本数を減らしたことでかえって混雑が生まれた。それなら電車の本数を増やせば利用者が分散されて良かったんじゃないか”という話をされたこともある。現実に起きたことを認め、じゃあこう改善していこうと提示していただければ、僕らだって納得しやすいのではないか。しかし小池都知事からは“従ってくれないのは都民のせいだ”という空気感すら感じてしまう。

 僕は毎日7時半ごろになるとお客様のところへラストオーダーのお知らせやお会計のお願いに行く。その時には、床に膝をつけてでもお客様よりも低い目線で“ちょっと早いんですけれどラストオーダーです”“申し訳ないですけれど、お会計だけ先によろしいでしょうか”とお声がけをする。従業員にはそこまでしろとは言わないし、それを負担しなければならないのは経営者として責任を負っている僕だと思うからだ。国政や都政の方々にも、仮にパフォーマンスであったとしても、皆に気持ちが伝わってくるお話をしていただきたい」。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「コロナ対策というのは、いくらやっても必ずどこかで犠牲が発生してしまうもの。つまりは“壮大な退却戦”であって、“勝利の美酒”というものはない。“こんなに苦しんでいる。何やってんだ国は”と感情を吐き出すのは構わないが、それだけでは問題は解決しないので、メディアにおいてはその先にどのような議論をし、どのような施策につなげていくかが大切だ」と指摘する。

 「個人経営の店の中には“協力金バブルだ”と言っている店もあるという話なので、やはり飲食店が絶対善というわけではない。公正ではないということだ。一方で、飲食業界の知人に聞いたところ、競争が厳しくなり、美味しくて安い料理を出さないといけないので、食材の原価率が年々上がってきていたという。そこで原価率の低いお酒とミックスして、なんとか収益を維持していたということだ。つまり、感染防止を考えれば隅の方で一人ノンアルで食べてくれるのがありがたいが、それはお金を落としてくれるお客さんではない。そういうコスト構造、ジレンマの中、我々の見えない所で飲食店の人たちが工夫してきたおかげで、我々は美味しくて安い飲食店文化を享受することができていた。そのことをちゃんと知り、議論すべきだ」。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「8時以降に飲食店が開いていたとしても、みんなが“行かない方がいい”と考えれば、お店は儲からないわけだ。飲み食いしに行くということについて、消費者の側がどう考えるか、という非常に難しい問題もある。ただ、会社経営をしてきた立場としては、飲食店の方々の気持ちも分かる。例えばバイトの場合、シフトに入れなくなると給料がゼロになるだけだ。しかし経営者の場合、経営ができないと借金が膨らんでいくことになる。どの業界でも、経営者というのは、その恐怖に向き合い続けないといけない。オリンピックという大きな事業についても、中止になると大変なことになってしまう経営者がいっぱいいる。それでも一番苦しい思いをしてきた飲食店の経営者からすれば、“だったら我慢してきた俺たちの苦しみは何?”となってしまうということだ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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