“組織を率いる資質がある” フェンシングに武井壮、バスケットに河瀬直美監督…企業再生のプロが見る、スポーツ競技団体の“抜擢人事”
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 公益社団法人「日本フェンシング協会」が次期会長にタレントの武井壮を抜擢するなど、斬新な顔ぶれになるが大きな話題を呼んでいる。

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 陸上十種競技の元日本王者の経歴も持つなどスポーツに造詣の深い武井だが、フェンシングは未経験。それでも武井に白羽の矢を立てたオリンピック銀メダリストの太田雄貴会長は会見で「会長にとって一番必要な能力は、ビジョンを掲げられることだと思っている。半年、1年と後任を考える中で、“この人だったら”と思えたのが武井さんだった」と説明。

 これに武井も「スポーツ自体を、アスリート自体を世の中に知らしめて、たくさんの人に愛していただけるようにするという作業に関して、僕自身がたどってきた道のりが少しでも助けになることがあるのではなかろうか」と応じている。

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 柔軟な人事は別の競技団体でも。女子バスケットボール「Wリーグ」は今月、新会長にカンヌ映画祭など、数々の受賞歴がある映画監督の河瀨直美氏が就任することを発表した。同氏は高校時代にバスケットボールで国体出場の経験があり、「素敵なバスケの輝くべき選手たちをみんなに紹介したいと」意気込む。

 一方、こうした動きに対しては「“客寄せパンダ”みたい」「そのスポーツのこと一番知っている人がなるべきでは?」といった厳しい見方をする人もいる。企業の“再建請負人”として知られ、現在も社外取締役などの立場で8社の経営に関わる片山龍太郎氏は。組織に外部の血を入れるメリット・デメリットについて次のように説明する。

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 「その企業や業界のことをよく知らないという場合でも、目的や理念、企業文化や意思決定の仕方、内実、さらに外部の環境などを勉強すれば既存のメンバーと同じ目線に立つことができるし、同時に一段高い目線を持つことができる。特に再生が必要な企業に入っていく場合、スピーディーに勉強し、最優先して改善すべきイシューを見出すことで、いち早く成功事例を出し、周囲を“やればできるじゃん”みたいな気にさせていくことが必要だ。

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 もちろん言うは易しだし、自分のアジェンダを無理に押し通そうして空回りしたり、トンチンカンなことになってしまったりすることはある。結果として一過性の広告塔のようになったり、“総論はごもっともだが、当社の場合は?”みたいなことを言われてしまうこともある。それでも特にトップに外部人材を登用すると、しがらみがない、あるいは過去に囚われない斬新な発想が出てくるし、取り込まれすぎない、染まりすぎないというのは変革を要求される組織のリーダーシップには必要なことだと思う。

 近年では取締役などに女性を積極登用する動きもある。

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 「社外取締役だけではなく、社内取締役についても女性を登用していこうということになってはいるが、人材のプール、つまり供給サイドが追いつかず、本来であれば能力や経験が不足していたとしても起用しないといけないというところも出てくると思う。また、社外取締役が経験豊富な特定の人ばかりに集中してしまっていることもある。これは過渡期ならではの問題なので、時間をかけて段々解決していくしかないと思う。

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 また、これは性別に限らず、役割が人を作るという面はあると思うし、本流、あるいは現体制にとって大事な部門の出身者が良い経営者になるかといえば、そうではない。特に改革が必要な場合、しがらみに囚われていては伸びないので、あまり日の当たる部門の出身ではない人に重要な役割やチャンスを与えることも必要だし、短期間で“やっぱりダメじゃないか。経験不足じゃないか”という結論を出してはいけないと思う」。

 その上で片山氏は、武井や河瀨氏の起用について、次のような見方を示した。

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 「フェンシングの場合、太田選手が銀メダルを獲るまでは、どちらかというとマイナーな方の競技だったと思うので、仮に武井さんが“広告塔”的な役割であったとしても、それは理に適っていると思う。太田さんが若くして会長になられたことで、いい意味でショーアップされ、人々の心の中のマインドシェアを高めた。それを武井さんが受け止めればいいと思うし、陸上十種という練習計画も大変な競技に取り組んで2、3年で日本一になられたという、類まれな向上心、努力家でもある。相当な自己管理能力があると思うし、それは総合力、リーダーとしての資質にも繋がると思う。

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 バスケット協会では前任の斎藤聖美さんも実業界の出身で大変見識のある方。就任後、組織の様々な問題を改革されていった。河瀨さんについても、映画作りというのは大変なプロジェクトマネジメントだ。スポーツ選手並か、それ以上に個性の強い役者やスタッフをまとめ上げ、限られた時間で作品にし、しかも結果が興行収入や観客動員数といった数字としてバシっと見えてくる、そういう厳しい世界でやって来られた方であれば、十分務まる資質があると思う。

 両競技ともに国際的な競技なので、日本を代表してプロモートしていくような、ある種の外資系企業の支社長さんみたいな役割も要請されるのだと思う。もちろん、いいビジョンや構想があっても、実現出来なければ絵に描いた餅になりかねない。そこは実務をこなす幹部やスタッフを配置した方が良いだろう」。

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