“絵本の読み聞かせ”9割がツラいと回答… 親の理想と現実に臨床心理士「無理なく工夫することも大事」
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 子どもの豊かな心を育み、親子のコミュニケーションとして重要な役割を担っている「絵本の読み聞かせ」。しかし、子育てや絵本にまつわる記事を配信しているメディア・コクリコなどの調査によると絵本の読み聞かせを“ツラい”と感じている親が9割に上ることがわかった。

【映像】コクリコ編集部・日下部さんが教える「大人が“無理しない絵本”」2選(7分40秒ごろ~)

 文科省が作成し、子育て世帯などに配られる家庭教育の支援書『家庭教育手帳』を見てみると、「親が本を読んで聞かせる」「食事の時間のように『本の時間』を設けるなど工夫して、少ない時間でもいいから毎日本を読み聞かせること」が推奨されている。

 絵本を通じたコミュニケーション。まったりのんびりと過ごせる“親子の幸せタイム”のはずが、その実態は少し違うようだ。

「今日もゆっくり読んであげられなかった……」「家事をしたいから早く寝てほしい」

 いつの間にか親にとって大きな負担になっているという声。講談社・幼児図書出版部・コクリコ編集部の日下部由佳さんは、「9割くらいの母親が“読み聞かせが負担”だと答えている」と話す。

「最近は『とても読み聞かせが子どもにいい』とか、『頭がよくなる』『将来国語の成績がよくなる』と言われることが多くなってきて、皆さんとても意識されているんですが、でも『なかなか読めないよ』っていう声が上がっています」

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 実際にその実態調査をしたグラフの「理想の読み聞かせ量」に注目すると、なんと6割が「月に21冊以上」と回答している。しかし、実際理想通りに読めているのは半数程度。この数値に日下部さんは、「毎日読んであげたい気持ちがあるのだろう」とコメント。

「逆に、『一冊も読めていません』というお母さんもいらしたので、そのギャップで『(読み聞かせが)いい』とすごく言われるから、『してあげられていない』と(心が)ぎゅーってなるかもしれないですよね」

 ときには自分と周りを比較して“罪悪感”を抱いてしまう方もいるそうで、「ネットでは優秀なお子さんのお母さんが出ていらして『うちは毎日10冊ずつ読んでいます』といった話を耳にする機会が多いと思うので、『そんなの何もやっていない』と自分のことを責めちゃうかもしれないですね」と話す。

 読み聞かせをしてあげたくてもできない……。その理由は『時間のなさ』だという。

「頑張って早く帰ってきて、食事にお風呂、歯磨き、明日の準備などを終わらせて、寝るぞって時に“ここからゆっくりした時間ですよ”って中々切り替えられない。『早く寝てくれ』って気持ちを持っちゃうのは仕方がないですよね」

 そうした時間がない中、奮闘する親たちに向けて日下部さんはアドバイスを送った。

「『1冊どうしても読まなくちゃ』と読むくらいなら、よく知っている歌とか一緒に歌ったりして、じゃあ今日は寝ようねってしてあげた方がいいかもなと。疲れているのは子どもが一番よくわかっている。でも一緒に居ようとしてくれているのは伝わると思うので、そんな毎日、絶対3冊ずつ読まなきゃとか思わない方がいいと思います。だってすごく大変ですから」

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 そもそも「子どもと遊ぶのが苦手」な人はどうすれば良いのか……。日下部さんは「絵本はコミュニケーションの道具。力を借りてもらえたら」と話している。

 また、きょうはダメだという時のために“無理しない絵本”もあるそうで、子どもが好きな破裂音が多く文字が少なめの本や、とにかく絵が可愛いく大人も癒される本などをお勧めした。

 子を持つ親ならやってあげたいと思う気持ちがある反面、中には無理をしている方もいる「読み聞かせ」。臨床心理士で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏は、乳幼児健診を担当する機会があるそうで、「言葉が出てくるのが遅い子が居たりすると専門スタッフが『読み聞かせしてあげたほうがいいですよ』」とアドバイスすることがあるいう。

「人によって、親であっても読み聞かせが苦手な方もいますし。特にお母さん達は乳幼児期の発達や成長、あるいは何らかの問題が起きると“自分のせいだ”と自分を責めやすかったり、強い責任感を持ちやすいため、“いい”と言われるものは何でもやらなきゃと直感的に思ってしまう」

 しかし、無理してしている姿は子どもに伝わると話す。

「読み聞かせの効果はいくつかあると思っていて、その中で大きいものが“親子間のコミュニケーション”。絵本の読み聞かせを通じて、コミュニケーションをとる。『これどう思う?』『どこが面白かった?』などと、その絵本の内容に沿ったやりとりが付随することが大事だと思う。そこで、親が仕事など他の何かに追われてイライラして読んでしまったり、心に余裕がなくて疲れているということになると、本来の意義みたいなものが失われてしまうし、子どもも親の表情や顔色を気にして絵本以外のところに注意が向いてしまうこともあるだろう」

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「毎日、子どもから求められる状況になったとき、仕事や家事をされている方はヘトヘトになって、疲れて、一日の終わりにできるかといったらなかなかできない。あるいは、親は必ずしも読み聞かせされた経験が豊富なわけではない。幼少期にそうした経験が多ければ、それを今度は自分がやる側になって反映させることもできるが、経験があまりない人はどうしたら良いのかというのは現実にあることだと思う」

 藤井氏は「大人も無理なく読み聞かせできるような、工夫をすることも大事」といい、「お母さんが読んでみたい絵本でもいい。義務感や“させられている”という感じよりは、自分も読みたい、中を見てみたいといったものでもいい。親が楽しめれば、子供も一緒になって楽しめる。自分に合ったものを選ぶのがいい。YouTubeでも声優の方が朗読しているものもあるのでそれを利用するもの一つの手」とアドバイスを送った。

 最後に藤井氏は「確かに読み聞かせは、感情を司(つかさど)る大脳辺縁系をはじめとする脳機能の発達に寄与していることが指摘されていたり、言語能力や文字認識能力を向上させるという知見もある。しかしそれらの能力は読み聞かせだけで育てられるものではなく、さまざまな遊びやコミュニケーションを通じても培われるんだと、親が意識していければいい」と子育てを柔軟に考えることの重要性を指摘した。(『ABEMAヒルズ』より)

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