「高次脳機能障害」。脳がダメージを受けることで、記憶や感情、視覚などがうまくコントロールできなくなる障害だ。一見しただけではわかり辛く、周囲に理解されずに苦しむ人も少なくない。「命が助かる一方で、後遺症を持って生きていく人の割合が増えているのではないか」。専門家はそう指摘する。
 そんな「見えない障害」に向き合う人々を見つめた。
 福岡市に住む主婦の深町伊久美さん(当時45)と私たちが出会ったのは2016年のこと。マラソンへの出場に向けて練習に励む選手の一人として取材したのがきっかけだった。決して弱音を吐かない、前向きな女性だった深町さん。しかし3年後、彼女の人生が一変する。