全国で一斉休校始まる 臨床心理士が推奨する「親と子のメンタルヘルスを保つ」7つのポイント
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 2日から全国の小中学校、高校などで一斉休校が始まった。教室はがらんとし、校庭にも遊ぶ子どもたちの姿はない

 一方、埼玉県内の小学校では、臨時休校となったものの子どもが自宅で過ごせない共働き家庭などのために、学校を開放し子どもを受け入れることにした。保護者からは「受け入れていただけるのは親としてはありがたい一面もあるので、(一斉休校には)なんとも言えない」と現状に困惑する声が上がる。

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 また、岐阜県内の小学校では、空き教室を利用した学童保育が開かれた。保護者からは「ありがたいですよね、見てもらえるのは。1年生と3年生の男の子で、まだ2人で家においておくのは心配なので。まだ学校で目が行き届くところで見ていただくほうがありがたい」「あまり預けたくないんですけど、仕事の関係で私にも負担がかかるので、できればということで」といった声が聞かれた。

 そんな中、休校を遅らせたり春休みまでとはしなかったりする自治体もある。島根県では、生徒の学習の遅れや家庭の負担を最小限にするため、県立の高校や特別支援学校の臨時休校はせず、県内で感染者が確認された場合できるだけ速やかに休校にするとしている。

 前例のない一斉休校で、親と子どもの精神面に悪影響は出ないのか。臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、「親と子のメンタルヘルスを保つ7つのポイント」として次のように解説する。

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【親が子に気をつけること】

(1)勉強、遊び、手伝い、留守番の家庭内ガイドラインを作る
→「急にフリーな生活になると当然、体調だけでなく心の面でもバランスが保てなくなることがある。自由すぎるのではなく、適度にタスクがあるという、良い意味でのストレスがあったほうがいい。つまり、毎日どういうスケジュールで生活をするかを決めた方が、精神的にも健康に生活できる」

(2)食事、衣服、清掃など生活環境の整備は子どもに依存しない
→「(1)に伴って、例えば家庭内で子どもにとって負担が重すぎない手伝いをするルールを決めるのはいいが、『あんたどうせ休みなんだから家のことをやりなさい』などと言ってしまうのはよくない。子どもにとって、基本的な生活環境である食事や衣服、部屋の清潔さなどが親によって整えられていることが、精神的な健康を保つためには大事。非常時だからこそ、日常を保つ一環として子どもに依存しすぎず、普段通りにすること」

(3)友達とは人数を絞って遊ぶなど社会的つながりを最小範囲で保つ
→「これが特に通常の長期休みとは大きく違うところ。例えば、夏季休業だと塾や習い事があったり友達と遊んだりできるが、今は一定程度以上の人数で会うこと自体が感染のクラスターを作ってしまうことになる。特に小学校の低学年だと親同士が連絡を取り合って遊びに行くことが多いと思うので、相談して少人数に絞るとよい。人間は子どもといえど社会的な動物なので、定期的に人とふれ合う環境を保つことが精神的な安定にもつながる」

(4)共同作業の時間を1日に最低1時間作る(分割もOK)
→「子どもと一緒に何か勉強や家事をやるでもいいし、1日の始めに『今日は何しようか』と計画を立てたり、1日の終わりに『今日は○○が楽しかったね』と振り返るのでもいい。そしてもちろん、お風呂や遊びでもいい。親との共有する時間があると、学校の授業で先生と共有する時間があることの代わりになるし、集団の中にいてみんなで一緒に生活することの代替にもなる。短い時間であっても、『ながら作業』ではない形で親子が向き合う機会があるかどうかが、特に非常時は大事」

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【親自身が気をつけること】

(5)新型コロナウイルスに関する情報収集は時間を絞る
(6)事実(ファクト)を把握することに努める
→「新型コロナウイルスに関するニュースはいまテレビで一日中やっているし、ネットニュースではほぼ必ずトップ画面に出てくる。専門家も毎日のように出ているが、新しい感染症であるがゆえに、科学的に信頼性が高いエビデンスを伴って言えることは時間を経て且つ相当数のデータが積み上がるまでは限られており、特に家庭内でできる対応は数時間で更新されるわけではない。人は不安になるとその気持ちを少しでも打ち消したいがために情報を検索する特性があるが、家にいるからといって情報収集を一日中する必要はなく、例えば朝昼夜などに絞って、それ以外は楽しむものも見ることも重要。実際、情報が多すぎると、逆に事実(ファクト)を見極めることも難しくなるので、シンプルかつ俯瞰的に情勢を捉えることが必要」

(7)時に互いの予定や1人の時間を尊重し、距離感を保つ
→「今回一番心配されるのが、親が仕事を休んでずっと家にいる場合があること。イレギュラーに仕事を休むストレスもあるし、経済的な問題を心配したり、子育てに直面しすぎることでフラストレーションが溜まることがある。また専業主婦(夫)であったり、仲のいい家族でも、四六時中一緒にいるとギスギスしてくることがある。子どもとはいえ1人の時間を作ってあげたり、親も自分の予定を優先させる時間があっていい」

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 さらに藤井氏は、「過去に宅配便を装った訪問者により子どもに危害が加えられた事例がある」とし、親が仕事を休めず、子どもだけで留守番をしている時間を狙った犯罪も懸念されると指摘。そのような危険も含め留守番時の子どもを守るため、特に小学生の子ども向けとして「るすばんやくそくカード」を紹介し、「ポイントは大きくは3つで、まずは身の安全。外からアクセスしてくる人から防御することもそうだし、家の中で火事を起こしてしまうようなリスクを少なくする。また、心身の健康を保つための部屋の温度調整や水分補給。子どもだと時間を忘れてご飯を食べないということもあり得るので、決まった時間などを対話によって決めておく。もう1つ、非常時にどこに連絡するかは大事なので、あらかじめ具体的に方法を話し合っておくこと。これをたたき台に、家庭のルールに合わせた形で活用していただければ」と推奨した。

 また、一斉休校期間の親の心の持ち方として「いま目の前の日々の対応が大変という短期的な視点ではなく、今後感染が拡大することで子どもたちの健康や社会全体により重篤なリスクがのしかかったり弊害が生じることを予防する、という長期的な視座を持って、全員が今同時に負荷を負うこと受け入れるべき。この機会に、しばしば親がなりがちな『学校ありきの子どもの教育』を見直す機会にもなるのでは」とした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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