新型コロナで進む“リモート社会”はコミュニケーション&評価に課題 夏野剛氏「アウトプットを出せない中間管理職は困るはず」
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 新型コロナウイルスの感染拡大の収束に向け、政府は人との接触を避けるよう、自宅勤務の推奨や催しの中止・延期要請、さらには一斉休校の要請など、種々の対策を進めてきた。こうした状況は、見方を変えれば“人と関わらない未来社会”に向けた社会実験という見方もできる。

 社員たちを直ちに在宅勤務に切り替えたドワンゴ社長の夏野剛氏は「これは壮大な社会実験だ。今までの常識を取っ払って、あらゆることを見直し、何が一番未来につながるのかということを考えるいい機会だと思う。学校で遠隔教育が認められていないのは先進国で日本だけだ。中国も含めて、みな生き生きと自宅学習している」、幻冬舎・編集者の箕輪厚介氏は「日本人は空気で生きている部分が大きいので、外的要因がなければ一気に変わるということはない。無駄な会議や必要のない仕事後の飲み会など、100%必要ないとは言えないから、誰も言い出さなかった。しかし今回のように緊急事態になったらやらなくていいよねとなるし、それで誰も困っていない」と指摘する。

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 神奈川県座間市に住む中学1年生の早川創名君は、先週から中学校の休校が続いているため、タブレットを使って自宅学習中だ。「学校で勉強しているよりもこういう方が楽しいっていうか、それぞれに合った問題が出せるので良いと思う」。そこで両親が心配するのが、勉強しているのか、ゲームをしているのかがわからないところだ。本人に任せきりになりがちな自宅学習について、担任教諭は「何回ログインしたか、ログインした時間は何分続いたかも全部見られるようになっているので、実は助かっているのは教員なのではないか」と話した。

 ただ、東海大学付属相模高校中等部の犬塚孝一教諭は「人と交流するための力は、やはり集団じゃないと身につかないし、できた時に褒めてくれたり、やってなかったときに注意されたりということも重要なのかなと思う」と懸念も示す。

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 同様の課題は、リモートワークへの切り替えが行われた企業の中にもあるようだ。READYFOR株式会社の若林岳人氏は、会議も遠隔、必要な資料もモニターに表示して共有。通勤による時間のロスもなく、いつでも休憩を取って自分のペースで働ける。良いことづくしのように思えるが、社員同士が離れているため、緊急時の対応が遅くなる、仕事の進捗状況に問題がないかどうかが見えづらいといった難しさも感じているようだ。

 「表情だけであればTV会議でもある程度は掴めるが、その人が醸し出す雰囲気は画面越しで伝わりにくいもがあると思う」。そして何より課題だとされるのが、評価が難しいことだ。「部下に要求しているのは、過程などをドキュメントに全て残していこうということだ。それがないと僕は定性的な評価はできないと言っている」。

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 コミュニケーションの減少、サボり、評価…。こうした課題について、ITジャーナリストの久原健司氏は「言葉で伝える時にかなり短い文章で的確に言った方が齟齬はないが、逆に雑談が無くなってしまう。だからグループチャットとは別にダイレクトチャットで“大丈夫?”とか、ちょっと関係ない話を意識的にするようにしている」と話す。

 また、孤独を感じるという点について、中国で活躍する動画クリエイターの山下智博氏は「意識的に仕事や時間との折り合いをつけて、サークル、コミュニティ、行きつけの飲み屋、オンラインサロンなどのサードプレイス、本当の自分でいられる場所を自分で作っていかないといけないと思うし、そういうものが見直され始めると思う」と話す。

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 幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏は「感覚値だが、7割のことはオンラインで良いと思う。定期的にリアルがあって、日常的にはオンライン上にコミュニティがあるというのが今の人たちには自然な形だと思う。ニコニコ超会議もそうだ」と指摘。「サボるということについては、むしろリモートワークによって結果主義、成果主義が露わになると思う。会社員の場合、そこが曖昧で、結果を出さなくても無駄に走っていれば“頑張っているね。給料あげるよ”ということがなる。しかし、例えばメッシがどんなにサボっていても、試合で点を取れば良いのであって、本当に練習しているか、食事を節制しているかなんて誰も見ていない。だからサボっているかどうかを見なきゃいけないというのは、“ビフォー・コロナ”の考え方だと思う」と持論を展開した。

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 夏野氏は「うちの娘がずっとLINE通話しながら友達と一緒に勉強をしていが、これが良いらしい。だからリアルでいなきゃいけないというのは嘘。元々うちの会社はリアルな会話よりSlackでの会話が多い会社だから全然変わらない。ただ問題は全体的に太っているらしいということだ。そして、ツールの問題が一番問われているのは中間管理職だと思う。今頃、在宅勤務にしている汐留あたりの企業は大パニックだろう。困っているのはアウトプットを出せていない中間管理職だ」と一喝する。

 「携帯電話が出てくる前には、“そういう世界になると、ちょっとリアルなコミュニケーションが…”等と言っていた。メールやSNSでやり取りするようになる前は、“そういうものは味気ない”と言っていた。要は慣れの問題で、うちはリモートワークを3週間やった結果、今度は家に大画面が2つないからとか、電気代は大丈夫なのかという不平不満が出てきた。一般的なパソコンの消費電力を計算したエンジニアがいて、1週間に500円だというので、電気代は払ってあげることにした。そしたら国税が出てきて、これは給料としてしか費用化はできないというので、税金を乗せて払うということにした。社内食堂では安いランチが食べられるのに自宅ではウーバーイーツで高いと言うから、それも補助しようとしたら、また所得になると言われた。ここに来る前、規制改革推進会議の会議があったがきつい。そんなこと何も考えていない文部科学省と厚生労働省を相手に今日(9日)の会議は大変だった。今日、俺は戦ったが力及ばずだった」。

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 一方、ウイルスの発生源とされる中国では日本に先行する様々な取り組みが広がっており、ドローンによる市民への警告、監視カメラによる顔認証や携帯電話の位置情報を活用した感染者の行動履歴の特定などが導入されている。教育分野でも、中国最大の動画共有プラットフォーム「ビリビリ動画」が小学校から大学までの教育機関と連携、授業の生放送・無料配信に取り組んでいる。“AIドクター”による初期診断など、遠隔医療も活用されているようだ。

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 山下氏は「ビリビリ動画に2年前に行ったとき、すでに社内でオンライン診療が導入されていた。今は観光地や大学の中にもある。どのような症状でどういう処方箋を出しているかというビッグデータを用いて診断、処方された薬もオンラインマネーで買える。難しい病気であれば来院してくださいということになる」、クリエイターの陳暁夏代氏も「中国に関してはコロナ以前に整備されていたあらゆるシステムが今回生きたと思う。授業や会社のリモートワークもそうだ。日本に関しては利権で止まっていたものを、今回コロナを言い訳にしてクリアしていけば良いと思う。今だったら国も突破できる機運になっている」とコメントする。

 夏野氏は「中国のすごいところは、医師会などの意見を聞かずにやってしまうところだ。日本の場合は“医師会の皆さんどうですか。薬剤師会の皆さんどうですか”と言うから、皆“俺たちの仕事がなくなる”と反対する。今、世界中で問題になっているのは、民主主義はちゃんとした政治ができるのかという話だ。これを今回のコロナの問題は我々に問うている。反対する人がいてもそんなの知らない」と憤っていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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