そのストイックな姿勢から、かつては「軍曹」、タイトルを獲得してから「中尉」と異名が改まった永瀬拓矢二冠(27)が、将棋界初のドラフト会議でも真っ向勝負を挑む。超早指し棋戦「AbemaTVトーナメント」が、第3回大会からプロ将棋界では例のない団体戦に変更。さらにトップ棋士が自らチームメイト2人をドラフト会議で指名することになった。永瀬二冠は注目のドラフトには「初手は自然に。みなさんが重複指名になる方になるのでは」と発言。“重複上等”で人気棋士の名を書く。
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という独自のルールは、トップ棋士でも手を焼く者が多い。「練習を重ねてつかんでいかないと。相手に合わせて時間を貯めたり、フィッシャーに合わせた戦いになるのでは」とイメージした。一方、団体戦は「1度、小学生のころに出たことがある」といい、「個人戦以上に楽しんだ記憶があります。それから10何年以上経って、団体戦を真剣勝負で指せるのはうれしいこと、ありがたい機会だと思います」と、胸を躍らせた。
団体戦経験者の“中尉”永瀬二冠が選ぶのは誰か。「初手は自然に、みなさんが重複指名になる方になるのでは。2番目以降は、自分から見てガッツがある方ですね。基本的に年下になるのではと思います」と踏み込んで発言した。1巡目で重複指名といえば、第1回、第2回と個人戦で連覇を成し遂げている藤井聡太七段(17)の名が真っ先に浮かぶところ。重複となればくじ引きだが、外れることなどそもそも頭の中にない、といった雰囲気だ。
実際、永瀬二冠と藤井七段は、同じ研究会で棋力向上に励んでいるのは、詳しいファンであればチェック済み。他の棋士と研究を重ねることについて聞くと「いろいろメリットがあるんですが、やっぱりぶつかってみないと自分の弱点が分からない。それは公式戦が一番だと思うんですが、研究会でも全力でぶつかることで相手の強いところ、自分の弱点などが分かる。全ての能力が最大限という方はなかなかいないと思うので、まだまだ自分も未熟だと思っていますし、研究会では自分の弱点を少しでも見つけて、棋力向上していけたらと思います」と、一気に言葉が口を突いた。さすがはストイックさで知られるトップ棋士だ。
意中の棋士を見事に引き当てれば、若手有利と言われる早指し戦において、関係者・ファンが優勝候補に挙げるようなチームが完成する。
◆第3回AbemaTVトーナメント
第1回、第2回は個人戦として開催。羽生善治九段の着想から生まれた持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算されるフィッシャールールは、チェスなどで用いられるもの。1回の対戦は三番勝負。過去2度の大会は、いずれも藤井聡太七段が優勝した。第3回からはドラフトを経て構成される3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝チームには賞金1000万円が贈られる。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段 三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)