安倍総理の星野源“コラボ動画”心理学専門家が挙げる賛否両論の理由「捉え方の余白が多い」
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 新型コロナウイルスによる自粛ムードの中、歌手で俳優の星野源の呼びかけから始まったコラボ動画から、思わぬ賛否両論が起こっている。「外に出られない」「人に会えない」暗い自粛ムードが続く中、自宅で過ごす人たちが、明るい気持ちになるつながりを生んだのが、星野の「うちで踊ろう」という楽曲。「この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな」とコメントしたところ、これに賛同した人々とのコラボ動画が次々に誕生し話題になっているが、安倍晋三総理の動画については国民の反応が異なっている。

▶【動画】藤井氏は「安倍総理のイメージがよく映るのはそもそも無理」とも

 ミュージシャン、俳優、お笑い芸人、アスリートなどが次々とコラボする中、安倍総理が自宅でくつろぐ様子を加えて投稿したが、これに対して、「休業補償もなく休業要請された人はこんなに心にゆとりのある時間が持てるでしょうか」「意図はどうあれこのタイミングでこの動画をあげたらどう見られるか分かってないのかな」と批判的な意見が見られた。また一方で「総理はこういうのやっちゃダメなの?」と批判に対する疑問を投げかけるものも相次いだ。

安倍総理の星野源“コラボ動画”心理学専門家が挙げる賛否両論の理由「捉え方の余白が多い」
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 「みんなに楽しんでもらいたい」、そんな気持ちで呼びかけたコラボだが、星野自身は安倍総理の動画に対して「ひとつだけ。安倍晋三さんが上げられた“うちで踊ろう”動画ですが、これまで様々な動画をアップして下さっている沢山の皆さんと同じ様に、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」とコメントを出した。

 なぜ安倍総理の「くつろぎ動画」には賛否両論が巻き起こったのか。臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は「コロナ禍でネット上を中心に人を批判したり攻撃する言動が増えているという背景もあると思う」と前置きした上で、「星野源さんは、非常に好感度が高いアーティストの一人。そういう人と並んでしまうと、好感度のギャップが顕在化する側面がある。また『うちで踊ろう』の“うち”というのは“home”だけではなく曲の英題にあるように“inside”という意味もある。星野さんご本人も言及しているように、自分の“心の中”でも楽しみを見つけようという意味も含まれているので、思いっきり家の中を意識した安倍総理の映像に『なんか違う』と違和感が抱かれたのでは」と分析した。

 さらに藤井氏は3つのポイントを指摘した。まず1つ目が「捉え方の余白が多い」点だ。「愛犬を抱き、優雅に飲み物に口をつけ、テレビを見るという安倍総理の動画は、多くの人にとって『リラックスしている』と直感的に感じるが、例えば仮に、犬を抱きながら今後の経済補償のことを真剣に考えていたとしたら相対的にイメージは変わる。映像からだけだとあたかもすごく余裕を持っているように想像されるし、動画の内容や意図について解釈の余白が多く、推測にゆだねるところが多いので、直感が優先されマイナスのイメージが強くなった」と、想像する余白がある分、負のイメージが入り込みやすかった可能性を指摘した。

 2つ目は「他者視点の欠如」だ。「これを見た国民がどう思うか。大変に苦しい思いをしている人もいる中で、どういう風に受け取られうるかのシミュレーションは無かったのか。総理ご本人もそうだし、周りにいる方も思いが至らなかったのは、ちょっと不思議」と、受け手の気持ちへの配慮に対して疑問を呈した。

 そして3つ目が「これまでの不満が噴出」だが、これは動画の内容そのものだけではなく、これまでに積もったマイナスの感情が要因だという。「普段から安倍総理に対してマイナスの感情を持っていたり、批判的な立場の人、あるいは何かあった時には物申してやろうという人がこの動画をきっかけに発言した側面がある」と解説した。

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 違った内容、媒体であれば、批判の声が少なかったかという点について、藤井氏の見解は「安倍総理の立場だとどういう媒体でも、どう伝えても、なかなか難しい」というものだ。藤井氏は「同じ政治家であっても、小池百合子東京都知事はセルフプロデュースの上手さもあってポジティブな印象を持たれやすい面があり、また最近の小池さんはコロナ対応にしてもオリンピック対応にしても“vs国”という姿勢で、国民の立場に心理的に近いポジションを取っていることも、共感や支持を呼ぶ理由の一つにある」と説明。

 「一方、安倍総理は国のトップという国民からかなり遠いところにいる存在でもあり、全員から賛成されないようなこともしなければいけない立場。いくらイメージ向上を狙った動画を作ったとしても、そう思わない人々の数は国という単位ではケタ違いなので、イメージよく映ったり、率直に肯定されるというのは、そもそも無理なこと。大事なことは特に、奇をてらわずに率直に発信しつづけるしかない」と加えた。

 13日には菅義偉官房長官が「ツイッターで確認できる範囲では過去最高の35万を超える『いいね』をいただくなど、大きな反響をいただいており、多くの皆様にメッセージが伝わることを期待している」と述べた。藤井氏は「実際には『いいね』が全て肯定の意味ではないが、賛否両論ではあると思う。また、批判する人が声を上げやすい一方で、良いと思っている人はあまり声を上げないという傾向もある。そこは冷静に見ないといけない」とも説明した。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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安倍総理と星野源コラボ動画に賛否
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