子どもを育てられない親、預ける親を認める社会に…3歳女児ネグレクト死事件から考える
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 長女の稀華ちゃん(3)に十分な食事を与えず放置し死亡させた疑いが持たれている梯沙希容疑者(24)が9日、送検された。

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 捜査関係者によると、梯容疑者は知人男性に会うため自宅に稀華ちゃんだけを残し、8日間にわたり鹿児島県に行っていたといい、「子どもの面倒を見るのが大変でリフレッシュしたかった」「居間のドアをソファで塞ぎ、開けられないようにして外出した」と供述。その一方、「エアコンはつけていた」「お茶や食事を置いていった」「死ぬとは思わなかった」とも話しているという。

 仕事の後にパチンコに行くなど、以前から稀華ちゃんを放置していたという梯容疑者。通っていた店の関係者は「遅くても終電くらいには帰る形で朝まで残ることはなかった。今回の話を聞いて初めてお子さんがいると知った」と話した。

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 厚生労働省によると、去年、ネグレクトを含む児童虐待の相談件数は15万9850件と過去最多となっている。NPO法人「児童虐待防止全国ネットワーク」の高祖常子理事は「報道によれば、夜に仕事に出る際に置き去りにしていたというし、5月にも旅行に行っているという。“あの時は大丈夫だったから”ということで、放置する期間が少しずつ長くなってしまったのではないか。供述からも、命を奪おうという意識は本当になかったのではないか」との見方を示す。

 「やはり子どもの世話ができない、ということであれば、“預ける”という選択肢を持っていただきたいということ。そのためにも、まずは自治体や児童相談所などに相談すること。様々なトラウマを抱えられている方も多いので、心療内科などに相談してもいいと思う。今回のケースでは、本人がどのくらい相談をしていたのかが気になる。“受援力”とも言うが、一般的に社会で元気にやられている方は周囲とのつながりがあり、協力し合えたり、手を借りたり、時にはSOSを出せる人だ。しかしネグレクトが起きている家庭の場合、そうでないことがとても多いからだ。また、保育園に登園しなくなってしまっていたということなので、母娘は社会とつながることがなく、見えづらくなっていたと思う。気になる泣き声が続いたり、子どもの姿を見かけなくなったりした場合、その家庭が何らの困りごとを抱えている可能性がある。実際に虐待があるかどうかは児童相談所が判断してくれるので、近隣の方は、ためらわずに通告ダイヤル“189”に情報を提供していただければと思う」。

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 琥珀さん(仮名・19)は、幼少期にネグレクトを受けたほか、姉ともども激しい暴力を受けて育ったという。「母親はそもそも子どもが嫌いだったらしく、父親も女の子が欲しかったのに、男の子が生まれたから気に食わなかったらしい。ただ、小さい頃はもちろん“虐待”の定義は分からないので、自分がいけないことをしたからこういうことをされているんだと思っていた」。

 転機は中学1年生のときに訪れる。「学校の先生が、“目にクマがある”“体に痣がある”と、児童相談所に通報してくれた。大きくなるにつれて、“そろそろ死ぬのではないか”と思うこともあった。それでも傷が分かりにくいところにあれば気づいてもらえなかっただろうし、見つけてもらえなかったら、その後どうなっていたかわからない」。

 その後、家に戻るか、それとも安全な場所に行くかという選択肢を提示された琥珀さんは、児童養護施設に入ることを選んだ。高校を卒業し、今は同じような境遇で育った人たちと一緒に暮らしているという。「なかなか他の人には言い出せないと思うが、アピールすることはできるのかなと思う。僕も小学校の時に、“虐待されていないか?”と疑われたことがあったが、親は否定したし、むしろそのことでまた怒られた。自分の身の安全も確保した上で、勇気を持って切り出せればいいかなと思う」。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「若くしてシングルマザーになった知り合いがいるが、“育てたくない”ということで、すぐに母親に預けた。田舎ということもあって、周囲からは“産んでおきながら、自分で育てずに別のところに暮らしている。ひどい”と言われ続けた。しかし、少なくともこれは“最悪のケース”ではないということだし、ある意味では正しく自己を認識して、責任を果たしていたとも言えると思う。産んだ子どもをちゃんと愛する、ちゃんとかわいがるというのが責任だというのが社会の常識になっているが、もしそれができないなら、安全な場所で育てられるようにするということが責任ではないか。それを社会が認めないから、隠してしまうということが起きるのだと思う」と指摘していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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