NHK退職のたかまつなな「会社を3年以内で辞める罪悪感」 “自身の発信=NHKの発信”と見られ…副業時代の課題も
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 「この度、2年半ほどお世話になったNHKを辞めることにいたしました」

 7月中旬、自身のYouTubeチャンネルでこう発表した、お笑いジャーナリストのたかまつなな。たかまつといえば、フェリス女学院高等学校から慶應大学に入学し、お嬢様芸人として話題に。一方で、社会問題などを身近に感じてもらいたいと、2016年に自身の会社「笑下村塾」を設立した。さらに、そうした話題をもっと若者に向けて発信したいと考え、2018年4月にNHKに入局。NHKの許可を得て、自身の会社の取締役も継続してきた。

【映像】たかまつつななが明かす“NHK退職”

 しかし、先月末にNHKを退職。「本格的に時事YouTuberになりたいと思っている」との宣言通り、現在はYouTube上で若者に向けてニュース解説動画を配信している。

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 ニュースを報じるのであればNHKにいてもできたのではないか。6日の『ABEMA Prime』では本人をスタジオに招き、そうした疑問や今後の活動について考えを聞いた。

■スポンサーや視聴率に縛られない一方で歯がゆさも

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 たかまつはNHKにディレクター職として入局後、『NHK NEWS おはよう日本』を担当。異動はなく勤務地も希望通りの東京配属だったという。2年4カ月というタイミングで辞めた理由について、「若い人向けに政治や社会問題を伝えたいと思っていたが、なかなか実現するのが難しいなと思った。だったら今すぐやりたいという気持ちが1つ。もう1つは許可をもらって副業をやっていたが、2年毎に更新が必要で、今回そのタイミングで更新が叶わなかった」と話す。

 すでにあるフォーマットの番組ではなく、新しい番組を立ち上げたかったというたかまつ。それができる部署への異動希望を出して実現させる選択肢については、「それは私の実力不足。10年20年かかるなと思ったので、すぐにはできないと思った。ただ、その2年間腐っていたわけではなく、NHKの報道の使命とはなんだろうということはすごく考えた。NHKで報じたことは永田町や霞が関ですごく見られていて、政策が動く。これは他の民放に比べてもある部分だと思う。政策が動くようにどのタイミングで報じるかということを考えてやってきたつもり」と振り返った。

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 たかまつの決断について、YouTubeでコラボもしているお笑いコンビ・EXITのりんたろー。は「テレビ業界の人は、なんとなくやりたくて入ってきて、働いていく中で自分のやりたいものを見つけていくから時間がかかると思っている。ななちゃんぐらい自分の目標が定まっていたら、メリット・デメリットを自分の中で計算して『ここじゃない』って思った時に引くのはある種自然なことだし、それができないことの方がどうしたの?って思っちゃう」とコメント。兼近大樹も「人が生きている時は居場所探しをずっとするイメージがあって、たかまつさんはやりたいことが1つあって、そこに向けての生き方だと思う。NHKに入社したのはストーリーの一部に過ぎなくて、やりたいことがある上で簡単に辞めることができるのは正解だと思う」と理解を示す。

 たかまつがNHKを志望した理由には、スポンサーや視聴率に縛られないことがあったというが、一方で歯がゆく感じる部分もあったという。

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 「(縛られないのが)良い反面、若い人に見られていないという危機感も経営側にはあって、視聴率を中途半端に気にする文化はあった。例えば、民放では“たかまつが歌った瞬間に(視聴率が)上がった・下がった”というのが分刻みであるが、NHKはそこまでやっていない。中途半端に合わせているので、緩い情報番組化が進んでしまっているのではないかと感じた。硬派なテーマをNHKだからこそもっとやって欲しいし、国民・視聴者のためにできることがあるのに、なかなかできない現実があった」

 また、扱うテーマの選択、自身が伝えたい政治について踏み込んで報道することの難しさについて次のように語る。

 「NHKは受信料で成り立っているが、視聴者からのクレームを1件ずつ丁寧に回答しているのは本当に驚いた。自分が偉い立場だとしたら、リスクのあるテーマは選びにくくなると思う。そういった視聴者の方の声というのが1つ。もう1つ、政治的テーマに対してどこまで踏み込めるかというのは、良くも悪くもファクト(事実)を掴んでいないと報じられないところがあった。例えば、『森友問題でこういうことが起きているだろう』ということは報じられない。『ある程度の見立ては分かるが、事実はあるのか』と言われると、『では止めよう』となる。それを忖度だと言う人もいるし、やっていて難しさを感じた。ただ、すごいファクトを掴んだ時に報じられないということは、NHKにおいてはないと思う」

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 これに対しテレビ朝日平石直之アナウンサーは、「組織にいた人間がそう話すというのは、ものすごくNHKは健全だと思う。憶測ではやらないということを守り、そう考えていることを内部にいた人が言うのは、報道機関として健全な組織。ファクトベースでやっているのであれば、それは信頼に足るし、そうやって信頼度を維持していると思う」との見方を示した。

■かなり高い目標は「全く達成できなかった」、今後の活動は

 2年4カ月のNHK勤務で学んだことについて、たかまつは「霞が関・永田町がどう動いているかはすごく知りたかったが、それができた。今まで視聴者として“なぜマスコミはこれを報じないのだろう”“おかしい”と違和感を持っていたものが、“これは忖度なのかな”“政治家からクレームが来ているのかな”“ファクトが取れなかっただけだろう”という見立てがだいぶできるようになった。“ニュースの行間を読む”とよく言うが、それができるようになったのは大きなこと。ファクトを元に伝えていくというのは、足元をすくわれない意味でもすごく大事で、霞が関文学のようなものがわかる。本質的ではないかもしれないが、『という可能性がある』『など』と付けることでフェイクにならないという、テクニカルなところでも勉強になった」と明かす。

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 テレビ局の番組作りに関して、平石アナも自身の経験から「番組は1人ではできない。ものすごく多くの人数が関わってようやく動いていき、新しく入ってきた人は一番下にならざるを得ない。“自分はこうやりたい”というのが通るまでにものすごく時間がかかるし、それはマイナーチェンジでしかない。YouTubeを通して自分で発信できるのであれば、その方がよっぽど早いということはわからなくもない。待っている時間が惜しかったのかなと思う」と言及。

 これにたかまつは賛同し、「ファクトを掴めば報道できるが、ファクトを掴む前に『こういう見立てがある』と世の中に伝える人の方が少ないだろう。木村花さんのようなことがあった時に、ファクトがどこにあるのかを取って来るのはなかなか大変。しかし、『自分が演者としてこういう気持ちでテレビに出ていた。だからこういう問題があるのではないかと思う』ということは、今すぐにでも発信できる。企画を通すまでに、政治の問題などでは“脇を閉める”という言い方をよくするが、そこにすごくジレンマを感じるというか嫌になった時もあった」と振り返った。

 また、組織に所属したことで、SNS上の発信がしづらくなったことにも困ったという。「私が『選挙に行こう』とTwitterで発信すると、世間から“たかまつななの発信=NHKの発信”という風に見えてしまう。どの組織にいても表現の自由があり、それはおかしいこと。しかし現状は、代表電話に『あんな子NHKにいていいのか』『彼女があんな発言をしていた。見逃すのか』というクレームがきて、私のプライベートの活動によって上司を苦しめているというのは一番辛かった。NHKの職員だから発言が厳しくなるということはやりにくかった」。

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 全国の学校に出張授業に行き選挙での投票を呼びかける笑下村塾の活動を通して、「1回の授業で政治的関心はすごく高まるが、その後になんの番組を見ればいいかと聞かれた時に私の中で答えがなく、『賛成・反対両方の意見を聞きましょう』『情報を疑いましょう』というきれいごとしか言えなかった。本当は『こういう番組がある』といっぱい言いたかったのに、勧められる番組がなかった」と、課題を感じたというたかまつ。

 しかし番組は1人で作れないため、NHKで番組のフォーマットを作ることを決意。ジャーナリストの池上彰氏が憧れだったそうで、「『週刊こどもニュース』とか、池上さんは政治で数字が取れお金になることを証明した人。NHKでそういうフォーマットを作れば民放が真似してくれるんじゃないかとかなり高い目標を持ってNHKに入ったが、全く達成できなかった。フォーマットを作ってどんどん真似してもらうというのが一番の目的だった」と告白。NHKを志半ばで辞めたことには罪悪感もあるそうで、「会社を3年以内で辞めるという時、私がNHKに貢献できたものがどれくらいあるんだろうと考えると、自分はちょっと成長できたけどという気持ちはやっぱりある」と明かした。

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 「私は手段にはあまりこだわっていない。社会問題について若い人たちに当事者意識を持ってもらって、解決者になってもらうことが目的」と一貫して話すたかまつ。今後の活動については「YouTubeで若い人に向けて言い訳せずにやっていきたいと思っている。テレビにはできないスピード感溢れるような番組だけど、ファクトをしっかりと基にした番組にしたい」と語った。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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