「親ガチャ」めぐる論争に夏野氏「所得以上に資産の格差の是正を考えなければならない時期が来た」
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 子は親を選ぶことができない、どんな親の元に生まれるかは“運次第”、ということを指す「親ガチャ」。今、そんな言葉がネット上で賛否両論だ。例えば子どもの教育に多額の投資ができる家庭に生まれた子どもは進学・就職で有利になり、次の世代で格差が再生産される傾向があることはよく知られている。実際、東大生の親の平均年収を見てみると、950万円以上という層が60%を超える一方、350万円未満の層は10%にとどまる。

・【映像】背景に深刻格差?「親ガチャ」は甘え?働きながら受験勉強"9浪"早大生と考える

■母子家庭に育ち、9浪した早大生「生まれ育った環境が必ず絡んでいると思う」

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 「恥ずかしい限りで、9浪だけに苦労した」と話すのは、母子家庭に育ち、働きながら9年かけて早稲田大学に合格した濱井正吾さんだ。

 「親ガチャ」という言葉について濱井さんは「『親ガチャに外れた』は甘えだ、努力しない言い訳をする人間なんだと認識しているという意見をよく見るけど、努力したら成功できるかもしれない環境にいる時点で運がいいんですよね。例えば受験戦争は限りなく平等なレースですが、その競争ができる土俵に立てる時点で恵まれていると僕は思います」とツイートしている。

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 この投稿の真意について尋ねると、「すみません、偉そうなことを言って。このツイートで言いたかったのは、成功している人は漏れなく努力はしていると思う。でも、努力の習慣とか、努力によって得た能力も、生まれ育った環境が必ず絡んでいると思う。失敗した人、努力できない人を責める方もいるが、自分の力のみで成功したと勘違いして、そういう人たちを見下すことはしてほしくないということだった」と説明。

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 その上で、「私が通っているのは東大ではなく早大だが、同じようなことを思う時がある。今までたくさんの早稲田生に会ったが、私よりもお金を持っていない学生はいなかった。私の家庭の今年度の世帯年収は185万で、私自身は3畳、月2万4000円の部屋に住んでいる。やはりある程度はお金がないと、勉強するのも厳しいのかなと思っているし、努力をするということ自体も難しいと思う。また、そもそも努力のベクトルが分かるかどうかという点でも、都心部の方々とは決定的な差があるんじゃないかと思う。私の出身は兵庫県の丹波というところだが、どうすれば自分がこの貧乏な家庭から脱却できるか、その情報を得る手段も分からなかった」と話した。

■安藤美姫「“親ガチャ”という言葉はなるべく使ってほしくない」

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 フィギュアスケート元世界女王の安藤美姫は「難しい問題だ。裕福な家庭に育ったとしても色々な方がいるし、大変な環境で育っても幸せという方もいると思う。その意味では、変われる、変えていくこともできると思う」と話す。

 「私は裕福な家庭には生まれていないが、かといって、お金に困ったかというと、そういうこともない。でも、それは子どもに苦労をさせないがために努力してくれたからだと思う。私の祖父母は戦争で家を失い、名古屋に来て、いちから喫茶店を開いた。それが私の実家だ。小さい頃はそういうことに気付くことができなかったし、思春期の頃は“親ガチャ”のような言葉を使い、母親とケンカしたこともある。

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 自分が母親になった今、そのことをすごく反省しているし、やはり娘にしてあげられることは、母が私や弟のために我慢して、工面してくれたからだと思っている。こうして番組に出させていただいたり、アイスショーで滑らせていただいているが、コロナのこともあり、余るほどお金があるかというと、そうではないのが正直なところだ。だから子どもたちには“親ガチャ”という言葉はなるべく使ってほしくないし、どんな親御さんでも、2人が出会ったからこそ、子どもである私たちがみんなと出会えて、いろいろなことを学び、見ながら成長できる。そのことだけで、本当は感謝なのかなと思っちゃう」。

■夏野氏「資産格差の問題とどう向き合っていくかを考えないと」

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 安藤の話に、ゲストの元経産官僚の宇佐美典也氏(東大卒)が「こういう言葉自体を肯定してはいけないし、それでは問題は解決しない。環境の良くない家庭に生まれた人を助ける環境、支援制度を社会が用意すべきだ」と賛意を示す一方、お笑いジャーナリスト・笑下村塾代表のたかまつなな(東大卒)は「その言葉によって心が救われる人がいたとしてもか。親との関係が切れないということで悩んでいらっしゃる方も本当にたくさんいらっしゃると思う。そういう人にとっては、自分だけじゃないんだと気づき、自助グループなどにつながるきっかけにもなるかもしれない」と反論。

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 テレビ朝日の渡辺瑠海アナウンサー(成蹊大卒)は「この言葉を使っていいのか、それともよくないのか、私は結論が出せなかった。ただ、進学もスポーツも家庭環境によって選択肢が狭まってしまうと思うし、やりたいことがやれなかったと本当に悩んでいる人もいると思う。そういう人が、ただ親と少し喧嘩をしたような人が安易な気持ちで“親ガチャ”とツイートするのを見たとしたら、それは不快な気持ちになるだろう」と話した。

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 さらに慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏(早大卒)は「“親”と“ガチャ”という言葉を繋げるとは思わなかったが、格差の問題にすごくハマってしまったということだろう。大切なのは、これで浮き彫りになった問題をどう是正していくかの議論につなげることだ」と指摘。

 「ここまで所得の話は出てきたが、じゃあ過去15年間どうだったのか、というのは分からない。日本の税制は、所得に関しては諸外国に比べると重い。他方で、実は資産への課税はすごく緩い。年収が1000万円あったからといって、東京都内にマンションが買えるわけではない。でも買える人がいっぱいいるのはなぜかと言えば、資産がある人だからだ。学生を見ていると、親が東京に家を持っているかどうかで、本当に生活レベルが違う。政治の役割には再分配ということがあるわけだが、今の日本は賃金も上がっていないし、フローの格差を是正したところで限界がある。しかし株なんかはどんどん上がっているから、資産がある人はどんどんリッチになっていく。やっぱりここら辺で資産格差の問題とどう向き合っていくかを考えないと」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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