「新しい手を作り出したい」48歳・木村一基九段、飽くなき向上心「体力と気力が続くうちは頑張る」

 自分より30歳近く若い天才棋士が将棋界を席巻する中、48歳のベテラン棋士は「中身は結構くたびれている」と苦笑いしながらも、その飽くなき向上心に衰えを見せない。「将棋の強いおじさん」「千駄ヶ谷の受け師」など、いろいろな呼び名でファンから愛される木村一基九段は、50代も近づく中、2年ぶりにタイトルに挑戦中だ。対戦相手は、自分より20歳近く若い永瀬拓矢王座(29)。また、今の将棋界は藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖、19)の話題で持ち切り。それでも木村九段は「体力と気力が続くうちは、もうちょっと頑張りたいなと思っています」と、意欲を見せる。目の前の勝敗だけでなく「新しい手を作り出したい」という目標も、心の中で持ち続けている。

【動画】「将棋日本シリーズ」二回戦第二局 渡辺明名人 対 木村一基九段

 46歳3カ月。2年前に木村九段が史上最年長でタイトルを取った年齢だ。昨年、藤井三冠が最年少でタイトルを取ったのが17歳11カ月。実に対照的ではあるが、ファンからは「中年の星」として祝福の声が殺到。本人も悲願達成に、対局後には目元を濡らした。ようやく手にした王位のタイトルを、その藤井三冠に奪われ、現在は無冠。ただ永瀬王座から奪取すべく、五番勝負の真っ最中だ。

 高勝率を誇る2021年度。ただ「あまりいいとは思っていません。実力の割に目立っている」と、そこまで手応えはない。「ポンポンと対局が入っているので、その点は充実しているのかなと思います。ただ、いい内容のものが続けられているかというと、よくわからないので、常に危機感は持っています」と、対局内容については安々と納得もしない。

 40代後半ながら、長時間の対局でも粘り強く指せる“将棋体力”は、棋士の中でも指折りだ。趣味でもあり、体力づくりでもあるランニングの効果もあるだろう。「表面には出ていないですけど、中は結構大変ですよ。くたびれている気がしなくもない。でも表に出ていない、対局に出ていないなら、いいことなんでしょう」と飄々としたが、深夜になっても時折ボヤキは出つつ、疲れも見せない様子は対戦相手からすれば実に脅威だ。

 将棋ソフトを活用した研究については「私にはそんなに合っていないかな。どうしても覚えなきゃいけないことが多くなっちゃって。40過ぎちゃうと、ダメだ…と思うところが多いですね」とこぼすが、抜かりはない。藤井三冠と豊島将之竜王(31)の間で繰り返されるタイトル戦も、当然確認する。「上の人がやっているもので、何を考えているのかがわかると、将棋というのはとてもおもしろいものだと気付かされることが多々あります」と、超トップクラスの棋士の指し手は十分理解している。ただ、それだけでは物足りない。「欲を言えば、新しい手を作り出したい。まだそこまでいっていないので。上の人が工夫を重ねているので、私自身もそういうものを出せるところまでいきたいですよね。常に空回りしちゃってダメというか、気持ちが萎えそうというか。なかなか難しいですが、姿勢としては持ち続けたいです」。新手に驚く側ではなく、驚かせる側になりたい。そんな野望にも似た気持ちが常にある。

 若い棋士の活躍、研究の成果を目の当たりにし、その差も痛感しながら、諦めずに前に進む。「目の前の一局一局を大事にした結果が、今の状況です。いい工夫が出来ている人を見ると、こっちが精一杯やってもまだまだ足りないと感じる」と、気を緩めたくなるところでもぐっと引き締めて、また盤を見つめる。その先に木村九段の求める新手がある。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
 

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2021年度「将棋日本シリーズ」二回戦第二局 渡辺明名人 対 木村一基九段
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将棋日本シリーズ JTプロ公式戦
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