日々の報道は新規感染者数より重症者数を重視すべき? 子どもへの接種や3回目接種、“ワクチンパスポート”導入の必要性は?
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 1回目ワクチン接種率は65%を超え、2回目接種率も53%に達する中、ピークを越えたようにも思える日本のコロナ第5波。20日の『ABEMA Prime』では、今後の戦略について、新型コロナワクチン公共情報タスクフォース副代表理事で COV-Navi副代表の木下喬弘医師に話を聞いた。


■「重症患者数を見ながら対策を検討するのが合理的ではないか」

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 直近の感染状況、そして医療提供体制について木下医師は「皆さんが頑張って感染対策をされてきたおかげだと思う。また、重症者数、死者数がある程度抑えられているのは、ワクチンの効果が出ているということだと思う。“第5波”と言われる、これだけの感染者数でも高齢者の感染者、重症患者が少なく、死者に関してもぐっと抑えられた。これまで亡くなる方の大半だった高齢者がかなり守られたと思う。その上で、ここから新規感染者数ゼロまで目指すのか、それとも、ある程度は許容するのか、そこは皆で議論していかないといけないところだ」と話す。

 その上で、指標とすべき数字については「重症になるには時間がかかってくるので、今どういうことが起きているかを早く察知できるという意味では、新規感染者数を見る方が良い。一方でワクチンを打った人が増えてくると、感染者数が増えても重症者数は増えてこないことになる。例えばワクチンを打った人の感染がこれくらいで、打っていない人の感染はこれくらい、さらにそれを年齢別に見ていけば、どれくらいの人が重症化するかが分かるはずだ。そういうところから医療逼迫の予測をしつつ対策を取っていくのが、本来やるべきことだと思う。その意味では、医療提供体制を考えるための指標をどちらにするかは検討する必要があるし、例えばイギリスが新規感染者数を無視し、重症患者数で見ているように、多くの国で重症患者数にシフトしていくのではないか」と指摘する。

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 「(重症患者数へのシフトは)どこまでリスクを許容するかという問題であって、科学的に“これが正しい”という答えがある問題ではもちろんない。ただ、医療提供体制を指標に考えることについては、一定の合意に近いものがあるのではないか。今回、東京都では医療体制をかなり拡充したことで、前回より重症患者数が多かったにもかかわらず、おおむね多くの方が治療を受けられたと思う。次回の波に関しては、さらに重症者率が下がってくるだろうし、かなり戦いやすくはなると思っている。もちろん局所的に搬送できないという方もいたし、感染した妊婦から生まれたお子さんが亡くなったというような問題もあった。こうしたケースに対応できるよう、さらに拡充はしないといけないし、感染者数ではなく重症患者数を見ながら、どういう対策をするかを決めていこうというのが合理的かなと思う」。

■「子どもを守るためにも周りの大人が打つのが先だと思う」

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 とはいえ、接種後一定期間を経ることでの抗体価の減少、ブレークスルー感染なども盛んに報じられている。厚労省のワクチン分科会は17日、3回目接種、いわゆる“ブースター接種”については「必要がある」との認識を示し、年内に医療従事者、年明けに高齢者に接種を開始すべく調整を進めている。

 木下医師は「17日にはアメリカのFDA(食品医薬品局)でも審議が行われており、驚くことに、65歳未満の3回目接種はまだやらないという決定をしている。ベースにあるのは、アメリカでは重症化予防の効果が長く続くというデータが出ているし、もともと64歳未満に関しては重症化のリスクがそれほど高いわけではない。一方、3回目接種の安全性に関するデータがないという議論だ。1カ月ほど前までは、CDC(疾病予防管理センター)や、大統領の医療顧問でもある国立アレルギー感染症研究所長のファウチ医師も“3回目、いくぞ”みたいな感じだったし、だからこそ世界も、日本の厚労省も準備していた。デルタ株が出てきてからは90%以上あった感染予防効果が66%ぐらいに低下しているし、アメリカでは感染者数がむしろ増えていて、フロリダ州などでは大変なことになっている。そういう中で、独立審査機関としてFDAが冷静に待ったをかけた格好だ。これは本当に難しい問題で、今後、どれくらいの年齢の人に3回目を打つことになるのは、今の段階ではまだ分からない」と話す。

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 他方、木下医師は12歳以上の子どもに関しては、「ワクチン接種の機会は与えられるべきだ」との見方を示す。

 「世界的に見ても、メリットとデメリットを比較した時にメリットの方が概ね大きいだろうと考えられている。やはり未接種の親への感染やブレークスルー感染などを考えると、子どもへの接種を進める価値はある。ただし、そのメリットも流行状況にもよるし、最重要課題ではないことは明らか。12歳から15歳に関して言えば、高齢者の3回目が優先かなと思う。まずは年齢が上のハイリスクの方々から打つべきではあるし、子どもを守るためにも周りの大人が打つのが先だと思う」とした。

■「“ワクチンパスポートで修学旅行”みたいなのは良くない」

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 また、ワクチン接種を推進するため、義務化や、いわゆる「ワクチンパスポート」の導入を求める声もある。

 木下医師は「新型コロナワクチンを打てないのは、このワクチンに対するアレルギーがある人だけで、それは基本的には打たなければ調べることができない。ただ、アレルギーの専門家でも今まで見たことがないというぐらい頻度は低く、基本的に打てない人はほぼ存在しないと考えてもいい。もちろん、主治医と相談していただく必要があるし、本当にアレルギーのある人はやめたほうがいい。しかし疾患がある人は重症化リスクも高いので、普通の人よりも打つべきだ」とした上で、次のように話す。

 「スペインのように8割ぐらいまでいっている国もあるが、はっきり言ってアメリカの場合、もう無理だ。“バイデン大統領が打てと言うから絶対に打たない”という人もいるので、インセンティブをかけても何をしても、接種率が上がらない。さらに分断を生む雰囲気もある。やはり義務化よりも、とにかく納得して打っていただく人を増やす方が重要だと思う。

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 そしてワクチンパスポートについては、分科会が“ワクチンパスポートと呼ぶのはやめよう”と言っている。そうではなく、“ワクチン・検査パッケージ”と呼んで、ワクチンを打っているか、もしくは検査陰性証明があるかにして、ワクチンを打たなければ何もできないという選択はやめようということだ。もちろん、検査という負担をかけてしまっている意味では、“私権制限”ではある。それでも、打たない選択をしても代替案がある方向性にしているということは、議論する際に気を付けないといけない。

 お子さんに関しても同様で、“ワクチンパスポートで修学旅行”みたいなのは良くない。差別に敏感な世代だし、“打ってないから検査したの?”みたいな会話をさせてはいけないと思う。先ほども言ったようにリスクは高くないし、周りの大人が打っていれば子どもも含めて守られる。あとはマスクをして会話をしようとか、感染対策はちゃんとしよう、ということだと思う」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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