9月26日の後楽園ホールで天を指差しながら「もう一度、ここに俺は立ってみせる!」と高らかに宣言したのはプロレスリング・ノア年間最大のリーグ戦『N-1 VICTORY 2021』Aブロックを1位で通過した清宮海斗。この日4ブロックに分かれてのリーグ戦最終戦が行われ、10月3日の後楽園における決勝トーナメント進出者が決定したのである。
清宮が1位通過したAブロックで勝ち残ったのは武藤敬司と清宮の2人。初戦で武藤と時間切れ引き分けになり「公式戦が3つしかないから負けに等しい」と顔を曇らせていた ナショナル&ZERO1世界ヘビー級王者の杉浦貴は、清宮に敗れて2戦目で脱落。もうひとりの征矢学は清宮、武藤に連敗して脱落。杉浦vs征矢は、杉浦に凱歌が上がった。
そして1勝1敗3点の武藤と2連勝4点の清宮が対峙。20年8・10横浜の初対決では足4の字固め、今年3・14福岡では腕ひしぎ十字固めでGHC王座を防衛している武藤は、勝たなければ1位通過にならないが「清宮は安パイ」の姿勢を崩さずに、この一戦に望んだ。
思えば「僕はホントにポジティブに考えちゃうんで、ネガティブに考えることがなくて」と言っていた清宮がスランプに陥ったのは福岡の武藤戦から。5月には田中将斗との一騎打ちに敗れ、さらにNOSAWA論外に大流血させられた上でリングアウト負けを喫して「あれがプロレスかよ?わかんねぇよ!」と絶叫。6月6日のさいたまスーパーアリーナにおけるサイバーファイト・フェスティバルでは稲村愛輝と組んでDDTの竹下幸之介&上野勇希との対抗戦に出陣したが、上野にフォールされてしまった。
だが6・13TVマッチで師匠・小川良成との37分54秒のロングマッチで久々にプロレスを楽しむことができ、7月にはマサ北宮とGHCタッグを奪取。リーグ戦直前には論外に雪辱することができた。そして9・18TVマッチでの征矢との初戦で、今までのキラキラ衣装と金髪から黒のロングタイツ、黒髪に変貌して出陣。タイガースープレックスで勝利し、続く杉浦戦にも逆転勝ちして「やっと進んだ!」と復活の狼煙。そして迎えた武藤戦である。
これまで2回の武藤vs清宮は、清宮が武藤のグラウンド戦法に食らいついていく展開だったが、今回は清宮が20分過ぎまでヘッドロック、アームロックを主体に試合をコントロールしてジャーマン・スープレックスで肉薄。結果、武藤がラッシュしても間に合わず、最後の3分は武藤が攻める展開だったものの、30分時間切れに。武藤=4点、清宮=5点で清宮が1位通過を果たした。引き分けでも清宮の1位通過が観客に支持されたのは、武藤と互角以上の試合を展開したからだ。
Bブロックは拳王、望月成晃、ケンドー・カシンの3人に可能性があったが、策に溺れたカシンが稲葉に不覚を取って脱落。カシンに負け、稲葉に勝って2点の拳王が稲葉、カシンに連勝4点の望月に胴締めスリーパーで勝利。望月と同点タイの4点になり、直接対決で勝った拳王が決勝トーナメントに駒を進めた。
Cブロックも昨年の覇者・中嶋勝彦、桜庭和志、田中将斗の3人に可能性がある激戦。ここから中嶋に勝ち、桜庭と30分時間切れの田中が0勝の鈴木鼓太郎に丸め込まれて脱落した。勝たなければ1位突破のない2点の中嶋と、時間切れ引き分け以上で突破の3点の桜庭の激突は、中嶋の打撃と桜庭の関節技の格闘技色の強い試合となり、桜庭のフロント・ネックロックを引っこ抜くヴァーティカル・スパイクで中嶋が逆転突破に成功。
Dブロックはマサ北宮と齋藤彰俊にそれぞれ連勝した藤田和之と船木誠勝が4点同士で雌雄を決した。この両雄は19年12月5日、リアルジャパンプロレスの後楽園でレジェンド王者・藤田に船木が挑戦するという形で1度だけ実現。藤田のチョーク・スリーパーで負けている船木が、回転エビ固めからすかさず顔面蹴りというプロレス&総合格闘技の二刀流戦法で1年9か月ぶりに雪辱を果たして決勝トーナメントに駒を進めた。
10月3日の決勝トーナメント1回戦は清宮vs拳王、中嶋vs船木。栄冠を手にし、10月10日のエディオンアリーナ大阪第1競技場でGHCヘビー級王者・丸藤正道に挑むのは誰だ!?
文/小佐野景浩