8月31日、大阪府摂津市で、3歳の男の子・新村桜利斗(おりと)ちゃんが亡くなった。搬送の様子を見ていた近隣住民は「ちょうど心臓マッサージをしてるのが見えた」と当時の状況を話す。
【映像】熱湯で虐待死か 容疑者「遊びだった」 実際の音声データ(1分40秒ごろ〜)
「そのあと2~3人の警察官が1人の男性とお話をしているところを見ました。動揺もなく慌てることもなく、ただ立って会話をしていました」
そのおよそ3週間後の9月22日。桜利斗ちゃんの母親の交際相手で、同居していた、無職の松原拓海容疑者(24歳)が殺人の疑いで逮捕された。松原容疑者には、桜利斗ちゃんに熱湯を浴びせ、殺害した疑いが持たれている。桜利斗ちゃんの遺体には全身に火傷があり、中でも上半身の皮膚はただれていた。
松原容疑者は「熱湯を故意に浴びせていません」と、容疑を否認している。事件の数日後、当時の状況を説明している音声データが残っている。音声は桜利斗ちゃんの母親と金銭トラブルを抱える知人らが録音していた。
「(遊びで)給湯の温度を上げたりしていたんですよ。その遊び、そういうことをしたのが、今回はじめてじゃなくて、(湯を)かけているわけじゃないし、あっちに向けているからなんもならなかって(ならなかった)、普通やった。『おりちゃん』ってリビングから呼んだんですよ。何も応答とか返事みたいなのがなかったから、急いで見に行って、(浴室を)あけたら、おりちゃんが浴槽じゃない方の床にうつぶせになって……」(松原容疑者の声)
逮捕前、警察に対しては「温度をあげると桜利斗がびっくりするので、ふざけてやった」と、あくまで「遊びだった」と釈明していた松原容疑者。
母親の知人は「青たん、手形がほっぺたについていたりとか」「桜利斗がすごい泣く。大声で助けを呼んでいるような異常な泣き声(を聞いた)」と語る。この知人らが自宅を訪れ、帰ろうとすると、桜利斗ちゃんも一緒に靴を履いて、家を出ようとしたという。
「すごいなんか『行きたい、行きたい』みたいな感じで、SOSやったのか『助けて』っていう感じやった。ほんでもう『たっくん(松原容疑者)嫌』『たっくん嫌』って最後らへんは言い続けていたみたいです」(母親の知人)
日常的な虐待を疑った知人らは6月、摂津市への通報を決意。摂津市に「虐待があるし、このままだったら桜利斗が死んじゃう」と伝えたが、切羽詰まった第三者からの通報があっても、悲惨な事件を防ぐことはできなかった。
「今回、幼い子どもさんが亡くなられたことは非常に重く受け止めています。市としても二度と同じような事件を発生させてはならないと考えています」(摂津市 次世代育成部のコメント)
実は、市に虐待を疑う情報は、繰り返し寄せられていた。去年10月、松原容疑者と母親が交際を開始して以来、今年4月に桜利斗ちゃんが通う保育所が「頭にたんこぶ、あざがある」と通報。5月には、母親自らが「交際相手が子供をたたいた」と市に相談をしていた。
市は5月、松原容疑者と一度面会し、松原容疑者は「もう子供に手を出さない」と約束したという。その後、6月に知人からの通報を受けた際には、面会はせず、母親が『交際相手はたまに家に来るだけ』『もう暴力はなくなっています』などと説明したという。
母親の説明を聞いた摂津市は「日常的な虐待はない」と判断し、松原容疑者が同居していることも把握していなかった。さらに、警察には、虐待の情報が一切共有されていなかったことも判明。大阪府では、今年4月から府内全域の児童相談所が受理した虐待の情報を警察に伝える「全件共有」の仕組みが始まったばかりだったが、今回、市から児相に情報が共有されたものの、「児相が直接受けた情報」ではなかったため、全件共有の対象にはならなかった。
複数の通報があったにもかかわらず、防げなかった悲惨な事件。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演したコメンテーターのアーサー・ホーランド牧師は、この事件に「心が怒りでいっぱいになる」と吐露する。
「社会の問題として、こういうことが日常茶飯事のように起こっている。また、児童相談所と警察でコミュニケーションがちゃんと取れていない。連携プレーにもエラーが出ている状況だ」
自ら“不良牧師”と名乗り、独自のスタンスでキリスト教の活動を続けているアーサー牧師。「虐待する気持ちは僕には全く分からない」とした上で「僕にも孫がいる。本当にかわいい。桜利斗ちゃんの遺体には、ただれるほどの火傷の症状があった。同じ子供がこういった目に遭うことは本当に悲しい」とコメント。その上で「容疑者にも深い心の傷があるのかもしれない」と指摘する。
「過去に親からリグレクト(虐待)された経験があると、その親と同じような行動を大人になってする人もいる。世界的に有名な心理学者たちも言っているが、人にとって必要なのは愛されることだ。牧師として、悩み事を持っている人たちと話す機会がある。過去にリグレクトされた人が、両親から受けた傷を回復できずにいて、その傷をずっと抱えていた。傷を救えるのは愛だ。それをみんなに知ってほしい」 (『ABEMAヒルズ』より)
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