“軍とメディアは中国共産党を守る2本の剣だ” 習近平思想の貫徹のため、今度はメディアへの規制を強化?
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 中国政府は8日、民営企業が取材や編集など報道業務に携わってはいけないとする新たな規制案を公表。政治、軍事、外交、スポーツに至るまで、世論の誘導や重大事件の実況・中継を禁止する方針を示した。

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 中国にはCCTVを筆頭に3000局以上の放送局が、また、通信社の新華社のほか、1800を超える新聞が発行されている。

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 『現代ビジネス』編集次長でジャーナリストの近藤大介氏は「中国では全てのメディアが国有・国営企業だ。つまり、そもそも民間企業によるメディアの設立は認められていない。したがって今回の国家発展開発委員会による発表は、これまでの方針を新たに言い直した、というイメージだ」と説明する。

 「これに先立つ1月19日、新聞出版総署が“一号通知”というのを出している。そこでは、メディアは習近平国家主席の宣伝、思想、工作の重要思想を深く貫徹することと、記者がウェイボーとかWeChatなどに自媒体を作って“この報道の裏にはこんなことがあって…”とか、“実際はこうなっていて…”というようなことを個人的に発信してはならないということが示されていた。にもかかわらず、いまだにインターネットで勝手な発言をしているということで、引き締めを図ろうとしているのではないか。

 遡ると、習主席は2016年2月に新華社通信、中央テレビ、人民日報の主要3社を回り、“メディア統制論”を説いた。それはつまり、“共産党の名前に染まれ”ということだ。もともと習近平さんは毛沢東思想を徹底的に植え付けられている人で、毛沢東思想の中にある“軍(人民解放軍)とメディアは共産党を守る2本の剣だ”という言葉を実践したいのだと思う。人民解放軍が共産党を守るように、中国の全メディアは共産党を守らなければならない、そこからはみ出すような行為は徹底的に取り締まるということだと思う。

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 同様に、海外メディアに対する有形無形のプレッシャーという形での規制も始まっている。例えば“この町はゴーストタウンになっている”とか、“この人たちは失業している”といった、中国にとってマイナスの部分を報道しようとする海外メディアを妨害した人を褒め称える、といった現象も起きている。先日、フィリピンとロシアで民主化を報道していた記者がノーベル平和賞を受賞したが、中国共産党中央はこれに関する報道も禁じているので、ノーベル平和賞自体がなかったことになっている。

 中国には、“外交は内政の延長である”という発想があって、アメリカも日本もヨーロッパも内政の延長にあると考えている。これから6中全会が開かれ、来年秋には20回目の共産党大会が開かれるわけだが、いわばプーチン大統領のロシアのような“超一強体制”の中国を作るんだという発想に立ってやっていくはずなので、やはり習近平思想以外のものは全て排除したいというのが本音だと思う」。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「毎年、日中ジャーナリスト交流会議というのが開催されていて、僕が参加した時に印象的だったのが、上海のネットメディアのトップの方が“私たちは習氏にコントロールされているのではない。SNSで情報発信することで、党の本部を動かすことだってできるんだ”と自信を見せていたことだ。そうしたジャーナリストやインターネットの世論への警戒が政府内で高まっていることを実感する」と話す。

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 「中国国営メディアの記者の皆さんと日本の記者の皆さんがカンヅメになって喧々諤々やる貴重な機会だった日中ジャーナリスト交流会議そのものも、ここのところ開催ができていない。

 以前はそれこそ『ABEMA Prime』に上海からほぼスルーで生中継することもできた。“規制とかないの?”と聞いたら、新聞弁公室という部署の幹部が“いいよ、いいよ、これからいい時代が日中来るといいよね”と穏やかに言ってくれた。向こうの記者たちも、日本の記者以上に自由に語っているような会議で、“言論の自由はないけど報道の自由はあるんだ。日本の皆さんは逆ですよね”と嫌味を言われ、思わずうーんと言ってしまうくらいだった。

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 それが一気に急変しているということだと思う。香港の状況が厳しさを増しているが、他の地域でも、不正を正そうという新聞を運営していた方が別件逮捕され、起訴された。そうしたことに対し、国境なき記者団が世界に向けて“圧力をかけてほしい”と呼びかけている」。

 近藤氏は「おっしゃる通りで、来るところまで来ていると思う。先ほど紹介した新聞出版総署が発行していた新聞記者証の有効期間が5年間から、1月に更新をしなければならなくなったし、さらに習近平思想にどれだけ貢献するような報道をしたとか、どういった人と交流したといった話も報告しなければならなくなった。日中ジャーナリスト会議に関しても、仮に習近平思想にそぐわないような発言をした記者がいたとしたら、記者証を取り上げられたり、捕まってしまったりする可能性もあると思う」と懸念を示した。

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 中国政府は塾の非営利化や仮想通貨決済の禁止、アイドルの推し活やエンタメ業界への規制、オンラインゲームへの大幅制限など、矢継ぎ早に統制策を打ち出している。

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 近藤氏は「3期目を目指す習主席としては、自身の思想で中国人を統一していくんだと、方針をはっきり固めたのだと思う。例えば8月に開かれた教育部の記者会見では、2億5000万人いる青少年の頭脳を習近平思想で武装せよと言っている。そういう言葉はこれまで使われてこなかった。次元が1つ上がったと感じている。背景には、昨年来のコロナ禍で経済がかなりダメージを受けたことで、岩盤支持層だった人たちの生活がやられてしまったことがある。ここで引き締めないと、体制がぐらつくんじゃないかという不安が、ますます統制を強めることに作用しているのではないか」とした。(『ABEMA Prime』より)
 

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