「祭りの“エキストラ”というプライドがあるから辞めたくない」コロナ禍に苦しむ39歳の「露天商」
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 コロナ禍により、地域で続いてきた「祭り」が危機に瀕している。「オマツリジャパン」の調べによれば、昨年「開催されなかった」という祭りは68%に達し、開催された場合でも8割は規模縮小やオンラインでの開催を余儀なくされている。

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 それに伴い大きな打撃を受けているのが「露店商」だ。緊急事態宣言が明けた東京・巣鴨の商店街に出店していた人たちに話を聞いてみると、「(売上は)ほとんどゼロに等しいんじゃないだろうか。緊急事態宣言がなくなったといっても、基本的に人集めはダメだから」「90%くらい落ちた。巣鴨のこの縁日だけで、あとは全部無しだったから」と厳しい状況が伝わってくる。

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 また、店舗を構える業態ではないため、行政からの支援も得られにくい。ある露天商は「飲食店の人たちは1日3万、4万、6万ともらえているけど、店舗を構えていないと対象外だから。持続化給付金とか、ちょっとしかないから、貯金を切り崩すか、バイトに行くしかない」と明かした。

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 関西地方を拠点に露天商を営む水井商店代表のようすけさん(39歳、業歴10年)の場合、従業員と一緒に各地のお祭りに出店していた。「年間100日祭りがあればメシを食っていけるが、0%になった。材料をしまっておく冷凍庫代、トラックの維持費、それを置いておく倉庫、となってくるから、店舗でやっているくらいの経費はかかってくる。厳しいという状況を超えている。もう何でもします、という感じで、知り合いの建設業にアルバイトに行ったりしていた」。

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 売上を回復させ、従業員の雇用を守るため、今年6月にはたこ焼きとクレープなどを販売する店舗をオープンした。しかしゼロから集客するというチャレンジに四苦八苦。売上はコロナ禍前の10分の1程度にとどまっているという。「僕たちはお客さんがいるところで商売していたから、今まで集客ということは考えずに、作る方だけに力を入れていけば良かった。SNSの力ってすごいなと思ったのが、近くに住んでいる人だけじゃなくて、遠くからやってきてくれる人もいること。それで何とかやれているが、厳しいことには変わりない」。

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 道の駅などに出店することもあるというが、やはり売上回復とまではいかず、辞めていった従業員もいる。「建設業で働いている子もいるし、保険の外交員になった女の子もいる。辞めていないって僕らが信じているだけで、お祭りが始まったら戻ってきてくれるかなってポジティブに思うしかないが、そのままシフトチェンジする人もいると思う。それなりに経費もかかるし、全く儲からない時もある。ご飯を食べていかなければならないし、辞めたらあかんということもないが、祭りを盛り上げたい、文化を守りたい、という気持ちは半分以上はある。だから小学校の生徒数が5人とかという村であっても“今まで来てくれていたから、今年も来てもらえませんか”と言われたら、やっぱり行く。賑やかしというか、大げさかもしれないけど“祭りのエキストラの一員”というプライドがあるし、なかったら寂しいし、僕は辞めたくない」。

■「唯一“今日からでも働ける”という受け皿ではあってほしい」

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 もともと減少傾向にあった露天商。「祭りの屋台って暴力団がやってるんじゃないの?」「テキヤと聞くと反社のイメージが強い」といった声もあり、なり手不足も深刻だ。日本のお祭りに彩りを添えてきた存在が、コロナ禍を気に一気に見られなくなってしまう可能性もある。

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 露天商の経験を持つノンフィクション作家で龍谷大嘱託研究員の廣末登さんは「反社会的勢力との関係が全くないとは言い切れないが、非常に関与しにくくなっている状況にはある。組合でも身分確認はあるし、排除に尽力していこうしている」と話す。

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 「もちろん、そういうふうに見える人も多いが、プロレスボクシングと同じで、男臭い感じが前に出ているだけで、オラついているのとは違う。ただ、露天商のことを悪く言うわけではないが、僕も含めて、他の場所でも通用するのであれば露天商を選ばかなかっただろうな、という人も少なくない。それでも警察が見ていて、全員分の免許証のコピーを提出させてデータベースに照らし合わせ、一軒一軒“商売していいよ”とやってくれているので、暴力団のような方が入ってくるのは難しいと思う。

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 ただ、元不良で頭が良くなくて学歴も資格もない、経験もないという人たちが唯一“今日からでも働ける”という受け皿ではあってほしいと思っている。だから(元反社の人であっても)真面目に仕事がしたいと言われたら、“大きなお金は渡せないし、仕事は洗い物しかないけど、うちに来る?”と言うようにしている。実際、辞めてから5年経たなければいけないので、警察署に行って、“うちで雇いたいんだけど、あと何年かかるかな”と聞きに行くし、まずはお祭りに連れていかず、倉庫で洗い物とかをしてもらう。うちの場合、そうやって1年くらい経って、晴れてお店に立つことができる」。

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 さらにようすけさんは、高齢化や若い人たちの変化も指摘する。

 「寄り合いみたいなものもあるが、高齢化が進んでいるし、良くも悪くも『男はつらいよ』のような流れがずっと続いていて古い。営業許可や助成金の申請にも明るくない人たちが多いので、“代わりにやってくれ”と頼まれたこともあった。親方が高齢化して引退し、継ぐ人がいないという後継者問題も大きい。

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 逆に、若い人たちはキッチンカーを買ったり、新しいことには達者だが、お祭りが終わった後の掃除や挨拶をするような、“修行的”な部分が難しかったりする。決してテキヤは楽な商売ではなく、肉体労働の部分もあるので、続かないという問題もある。不良が圧倒的に減ったことと、不良の質が変わり、怖いイメージがあるということでちょっと敬遠してしまうといった“草食化”の傾向もあると思う。お金だけを追いかけるのであれば、店舗でチョコバナナを売る方が儲かるから」。(『ABEMA Prime』より)

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