生活が便利になるならOK? 郵便局が持つ顧客データ、事業外の利用はどこまで認めるべきか
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 金子恭之総務大臣は12日、日本郵政グループが保有する顧客データの活用に関する有識者検討会を設置することを明らかにした。

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 郵便事業を通じて集まった住所(日本郵便)や1億2000万件の貯金口座(ゆうちょ銀行)、さらに2500万件の保険契約(かんぽ生命)など、多岐に渡る顧客情報を保有する日本郵政グループ。金子大臣によると、こうしたデータを災害時に自治体に提供するほか、企業のマーケティング情報の提供も想定し、個人情報保護のガイドラインなどを見直す方針だという。

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 産経新聞は11日、『<独自>郵便局の顧客データ活用へ 総務省が来夏まで指針』として「郵便物の配達時の状況からリアルタイムの居住者情報や自動車の保有状況、商店の開店閉店情報などを把握している。今後、居住者情報を災害が発生した自治体に提供することで、安否確認に利用してもらうことや、自動車保有状況などをデータベース化して、自動車販売の営業に利用してもらうなどの新規事業が想定される」と報じている。

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 静岡大学学術院情報学領域の高口鉄平教授は「ゆうちょ銀行とかんぽ生命による連携に関しては検討ができるかもしれないが、郵便のデータに関しては非常に厳格なルールがあり、日本郵便であっても郵便事業以外の新サービスと連携させるようなことはできない」と話す。

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 「当然、配達に行って不在だったといった情報に関しては一定期間保有されていると考えていいと思うし、“多分、今はあの方はいらっしゃらないだろうな”みたいなノウハウが配達員の頭の中に入っているといったこともあるだろう。ただ、そうした情報が何年間も蓄積され、データベースのようになっているというわけではない。

 一方、位置情報に関しては本人の身に危険が迫っている場合は同意なしで使うこともできるようになっているし、災害発生時に使えるようにするためには準備をしておかなければならない。郵便に関しても、例えば自分のデータを使ってほしいという人から同意をとっておき、転居情報などを安否確認サービスに反映させる、といった可能性はある。

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 その意味では、さらに進んで自動車販売に使うといったことは現時点では考えにくく、せいぜい集計されたデータを“全体としてはこういう動きになっている”という形で使うといった議論が始められるくらいだろう。まずは現行の法制度の範囲内で可能なことを考えてみよう、ということだと思う。やはり地域に根づいた郵便局のネットワークは本当に大きいものなので、それを活かさない手はない。その一歩として、データをどうしていくのか、みんなで考えていかなければいけないテーマだ」。

■「“怖い、怖い”と言うだけでは進歩しない」

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 元経産官僚の宇佐美典也氏は「今の個人情報保護法では、災害の時などを除き、基本的に“使っていいですか”と聞いて“はい”と答えられた場合に使ってもいいということになっているが、この原則を崩す理由はないと思う。ただし、買い物弱者の問題や、ガソリンスタンドが減少する中、どうやって燃料を補給し続けるかといった社会課題との関係から考えることが必要だし、病歴や障害のある人が、そのことを人に知られたくないという時にどうするのか、といった問題もある」とコメント。

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 「自分が良ければ、どんどんどんどん、みんな情報を与えればいいというのは、そういうわけでもないし、弱者のことも考えなければならない。こういうのは“目標ありき”で、“何のために使うのか”ということがあって初めて、“じゃあ同意する”という議論が成立するもの。その意味では総務省だけで検討するというのは”頭でっかち”なところがあるし、空回りしてしまう可能性もある」。

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 また、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「例えばAmazonの場合、蓄積された買い物の履歴やプライム・ビデオの視聴履歴を元に“おすすめ”を提示してくるが、それが的確で便利なので“プライバシーの侵害だ”といって怒る人はあまりいない。つまり人々が不安に感じるのは、自分のデータがどこか知らないところで企業に売られ、マーケティングなどに利用されるというイメージがあるからではないか、ということだ」と指摘する。

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 「一方、本当に守られるべきクリティカルな情報が何なのか、その区分けもしなければならない。今回、産経新聞の記事を読んで、“そんな恐ろしいことをするのか”“なんで自動車販売店に俺の情報を売るんだ”などとツイートしている人たちがいっぱいいるが、現時点で想定されているのは、個人が特定される形での情報ではなく、ここの市では車を持っている人がどのくらいいて、といった統計情報だ。

 いまやAIとビッグデータがないと産業は成立しないというくらいになっているし、AIの研究開発のためには膨大なデータを集めるところから始めなければならないが、日本はそこがアメリカに比べ遅れてしまっている。これを挽回するためにも、とにかくデータを扱えるようにしてほしいというのが日本国内の事業者の求めだが、やはり個人情報保護法があるのでそう簡単には進まない。一方、EUでは自分の情報は自分で管理しようという方向だが、それはそれで面倒くさい。

 そうしたジレンマの中で、バランスをどう考えるかということだが、情報とテクノロジーによって買い物がしやすくなるというメリットが生まれるならば推進しよう、というのが今の流れなのは確かだ。しかし、ちょっとプライバシーの話が出てくると全てを一緒くたにして“怖い、怖い”と言う人がワイドショーなどに現れるから、みんなが及び腰になってしまう。しかしそれでは何の進歩もない」。(『ABEMA Prime』より)

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