世界で最も食べられているエビの一種「バナメイエビ」。日本では寿司のネタやエビフライなど、幅広い用途で使われている。
そんなバナメイエビについて、養殖業者が抱えているのが海外由来の伝染病だ。バナメイエビの稚エビは、ベトナムをはじめ海外から輸入することが多く、養殖業者によると「(伝染病によって)全滅するリスクがある」という。
こうした問題を解決するためにNTTドコモ、リージョナルフィッシュ、奥村組、岩谷産業といった日本企業が立ち上がった。
奥村組は“ろ過システム”を使って飼育水を浄化しながら循環利用する「閉鎖循環式養殖」のシステムを構築。リージョナルフィッシュは養殖用の水中に炭素源を加えることで「バイオフロック」と呼ばれる微生物の塊をつくりだし、その力で水質の浄化を図る「バイオフロック養殖」を実施。NTTドコモはアプリを通じて水温やpHなどのデータをスマートフォンで確認できる「ICT水質遠隔監視システム」を用意するほか、岩谷産業は効率的な酸素供給を担うという。
また、リージョナルフィッシュは世界で初めてバナメイエビの「ゲノム編集」にも成功。ゲノム編集とは、遺伝子組み換えと違い外部からの遺伝子を加えず、もともとある遺伝子を変化させる技術のこと。先月には京都大学と近畿大学の協力のもと「マダイ」の可食部を1.2倍に増やして肉厚に品種改良。農林水産省と厚生労働省に届け出を完了している。
朝日新聞によると、ゲノム編集食品の届け出は去年12月、血圧上昇を抑える効果などがあるとされる「GABA(ギャバ)」の蓄積量を通常より約5倍高めたトマトに続いて2例目で、動物性食品では初めてだという。
このニュースに日本初の個人向け大規模遺伝子検査・解析サービスを手がけるGenequest(ジーンクエスト)の代表取締役・高橋祥子氏は、開発の上で「社会とコミュニケーションをとっていくべきだ」と話す。
「ゲノム編集食品は昨年からトマト、マダイといった開発が続いていて、今後も増えてくるとみられています。今回のバナメイエビにも注目していますが、ゲノム編集で何をやっているのか、安全性が担保されているのか、社会とコミュニケーションをとっていく必要があると思います。例えば『ゲノム編集食品は危ない』『ゲノム編集食品を食べるとがんになる』といったデマ報道もすでに出ています。消費者がメリットをとれるよう、コミュニケーションをとりながら、正しい情報を広めていく必要があります。今後、より消費者にメリットがあり、環境にいいゲノム編集食品が誕生して、社会の課題を解決するものになってくれることを期待したい」
食品のゲノム編集・開発が進むに伴い、今後は野生生物の生育の影響や食の安全性、また各国のルール作りなどにも注目が集まっている。(『ABEMAヒルズ』より)