きのう公示された衆院選。『ABEMA Prime』では22日までの間、主要政党から代表者を招き、各党の政策やビジョンについて聞いており、19日には国民民主党の玉木雄一郎代表が生出演した。
去年9月、立憲民主党(旧)と国民民主党(旧)が合流して誕生した最大野党・立憲民主党(新)。しかし玉木代表ら15人の国民民主党(旧)所属の議員たちは合流を選ばず、新たな「国民民主党」として再スタート。「野党であっても何かをしないために力を注ぐのではなく、何かをするために力を注がなければ」として、“右でも左でもない独自の改革中道派路線”で党勢拡大を目指してきた。
この路線について玉木代表は「停滞する日本をなんとか変えていく。そのために私たちは“対決より解決”を掲げている。とにかく国会を見ていると与党と野党がケンカばかりして役に立っていないのではないか、というのが国民の率直な思いだと思う。私もそう思う。もちろん、おかしいことに対して厳しくチェックをする。しかし解決策、ソリューションをきちんと示していくというのが、特にコロナの時代の与野党の役割だと思う。そして私たちは明るい政党だ。いい仲間が集まって、朗らかに政策議論をしている。中でも、強みは経済政策で、これはどの党にも負けない自信がある」と話す。
■「強みは経済政策。給料アゲアゲ戦略だ」
では、国民民主党の経済政策とはどのようなものなのだろうか。玉木代表は「給料アゲアゲ戦略だ」と話す。
「日本では1998年から物価の上昇を勘案した実質賃金が下がり続けているが、これは先進国の中では日本だけだ。ある人からは、“先進国だけじゃない。戦争している国を除けば、世界の中でも日本だけだ”と言われたこともある。一方、どの党も言ってこなかったことだが、いま言われているほとんどの問題は給料が上がれば解決する。一生懸命頑張って就職すれば給料が上がると思えれば、奨学金を借りることも怖くない。あるいは結婚も、子どもを第2子、3子を増やしていくこともだ。年金だって、厚生年金は報酬比例だから、現役のときの賃金さえ上がれば心配がいらなくなる。その根っこのところが上がらなくなったので、全てが壊れ始めているということだ。
私たちは、そこに対して総合的な政策を打ち出している。その点、与党・野党ともに申し上げたいのが、成長と分配、特に分配についてマクロ経済政策の視点がないということ。介護、看護、保育の人たちの給料を上げましょうというのはいいが、全就労者のうち5%もないわけで、全就労者の給料を底上げしていくための戦略がない。このことを30年も語らずにきた結果が、こういう結果だ。公定価格である保育士の給料を上げようというのは強制的に上げていく話だが、我々は経済が沸き立って、物は売れるわ、お客は増えるわで、人を雇いたくなる、そのためには高い賃金を出さなければ来てくれない、そういう状況があらゆる産業で起こる状態を作ったらいいですよと言っている。
企業で考えてみればわかる。パタッとお客さんが来なくなり、それがしばらく続くと人を雇うことをやめる、そして設備投資もやめることになる。研究開発投資もそうだ。このような生産能力やイノベーションの低下が経済全体で長期にわたって起きているのが今の日本経済だ。そのための最初のひと転がりをどこも生み出せないようであれば、国がお客さんになる。つまり、大規模な財政出動をする。財源は国債だ。一方、この戦略には低金利、マイナス金利の時だけで、世界の景気が良くなって金利が上がり始めたらできないという最大の弱点がある。特に日本がデフレ今だからこそやらなければならないし、期限は迫ってきている」。
■「ちまちま出していると、結果として使う税金が大きくなる」
ここで小籔千豊が運輸大臣などを歴任した亀井静香・元衆院議員も同じことを主張していたのではないか、と指摘。すると玉木代表は「亀井さんが仰っていたことは非常に合理的だったと思う。私は親しいから言うが、亀井先生が言うとちょっと怪しい感じがするというか(笑)、公共事業で特定業者に流れるんじゃないかというイメージになってしまったんだと思う。私がやるんだったら、将来の生産性向上に繋がったり、世界の課題解決に繋がったりする部分だ。具体的には環境、デジタル、それから人材育成や科学技術だ。その意味では、国産ワクチンを作れなかったのは痛恨の極みだ」と応じた。
また、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「コロナ禍もあり、欧米でもインフレにならない限りは財政出動してもいいじゃないかというのが趨勢になりつつあると思う。しかし日本ではいまだに緊縮しなければいけない、プライマリーバランスを取り戻さなければいけないというので議論が根強い」とコメント。
これに対し玉木代表は「メディアが一緒になってそっちの方がいいと言うからではないか。正直なところ、私も疑いはじめたのは10年くらい前で、2年前まではそういう考えだった。アメリカ留学時代、IMFとか世界銀行が唱えていた、途上国の構造改革をやるときの一つのモデルに“ワシントンコンセンサス”というのがあった。しかしうまくいかなくなっていることが分かり、ある程度は財政出動をした方がいいということになっていった。IMFもコロナの状況を抜けきるまで、短期的な財政均衡にはとらわれず、どんどん出せと言っているのに、日本だけはまだだ。岸田さんになっても、6月に閣議決定した骨太方針の中の“2025年プライマリーバランス黒字堅持”は変わっていない」と説明。
その上で「コロナから抜け出そうというときにチョロチョロ、ちまちま出していると、結果として使う税金が大きくなるというのは世界の常識だ。私は金融破綻処理にも携わっていたが、そういう時は、一気に大量に入れることで短期に終わり、投入する税金は少なくて済む。それがS&Lクライシスというアメリカの金融破綻があった80年代以降のセオリーの一つなのに、日本はずっと“戦力の逐次投入”をやって失敗している。こうした考え方について、“れいわ新選組のMMTとどう違うのか”と言われるかもしれないが、私としてはケインジアン的な、オーソドックスな経済政策を言っているだけで、景気が悪いときには財政出動と金融緩和をすればいいという話だ。特に法人税と所得税については景気が悪くなったら自動的に税収が減り、景気が良くなったら自動的に税収が増えるという、ビルトインスタビライザーもある」とした。
■“人づくりなくして国づくりなし”
また、「民間の力も引き出したいし、全ての人にチャンスのある社会にしたい。18歳被選挙権を導入し、高校生でも大学生でも衆議院議員になれるようにする。また、教育は子どもにチャンスを与えることだ。政府が将来のことを細かく決めるわけにはいかないので、優れた人材を送り込んでいけば、その時々の課題も解決してくれる。とにかく、“人づくりなくして国づくりなし”だ」として、教育格差の是正も訴える。
「今も昔も天然資源がない日本の唯一の資源が人材だ。AI、IoTの時代は、いわゆる“ナレッジソサエティ(知価社会)”になるので、人の頭が何を生み出すかというのがすべてになる。やはり教育や科学技術には惜しみなくお金を入れるべきだし、生まれてくる家や地域を選ぶことはできないので、それとは関係なく、学びたいという意識のある人には全員に等しく提供するべきだ。私は教育国債を発行して予算を今の倍にして、基本的に教育は無償ということを実現していきたい」。
今回の衆院選では、女性8人を入れた27人を擁立、クオータ制や選択的夫婦別姓についても賛成の立場を取る。
「国会で自民党の杉田水脈さんからヤジが飛んだのは、私が選択的夫婦別姓に関する質問をしていたときだった。あの時、若い男性の友人から“選択的夫婦別姓でないと、パートナーの女性から結婚できないと言われた”という相談を受けた。そういう切実な思いも頂いていたので、絶対にやろうと決め手発信を始めた。今はかなり意識されるようになってきたと思うし、声を届けるということが大事だ。特に政治家にとっては、自分が落ちるかもしれないという選挙期間が一番話を聞く。ネットでも何でもいいし、メールを送ってもいい。アプローチをすることが社会を動かす」。
■今はベンチャーなんだけど、そのうちアップルみたいになりたい
こうした政策の実現のため、与党に合流するといった選択肢はないのだろうか。
玉木代表は「野党ではあるが、孤独担当大臣を作れということを政策に掲げて、今年の2月にできた。これは大きな成果だったと思う。コロナに関しても、かなり積極的な提案をし、与党にも働きかけて実現してきた政策もある。実は自民党はパクリまくっていて、総裁選でも議論になっていた抗原検査キットの積極的使用も、去年11月に私が臨時国会で訴えたことだ。あのときは”こんなに精度の低いものを使ったら、かえって無茶苦茶になる”とケチョンケチョンに言われたが、河野さんが出てきてラピッドテストとホームテストをどんどんやれということになり、結果、“これはすばらしい”となった。いい加減にしろと思う(笑)。また、岸田さんが言っていた、業種や地域を問わない固定費を保障するというのも、4月に国民民主党が出した法案そのままだ。野田聖子さんが言った子ども国債だって、私が2015年から言っているし、高市さんの積極財政も同じだ。
ただ、自民党に入ってしまえば、それはもう自民党だ。私は民主主義の力を信じているので、選挙などを通じて変えていきたい。我々は小さい政党であるがゆえに意思決定が速いし、若い人からもらったDMをすぐに取り入れることもできる。例えば10万円給付をもう1回、という話もあったが、総合支援資金が最初の6カ月だったのに対し、あと3カ月×20万=60万円だけ貸し付けてくれないかという現場からのニーズがあることは、私も知らなかった。要望があったので、じゃあやろうと言って厚労省に働きかけたところ、実現した。世の中のニーズを繋げて政策を変更していく。代表質問で総理に直接聞く。そういう世の中の変え方もある。大企業に対抗する中小企業、ベンチャーの良さが意思決定や商品をどんどん出せるスピード感だ。我々も今はガレージで作っているベンチャーなんだけど、そのうちアップルみたいになりたい」。
■もっとキャラ立ちしてガンガンやらないといけない
玉木代表の話を受け、佐々木氏は「ネットを見ていると国民民主党の政策は非常に評価が高いと感じる。ただ、その割に党勢が足りない。やはり政策中心の政党だとアピール力が足りず、もっと情に訴えた方がいいということなのだろうか」と首をかしげる。
玉木代表は「正直、ずっと悩んできたことだ。本業なんだから、政策については譲らないでやっていこうということで来た。ただ、平時の報道は与党が中心だし、野党でも第1党だけが報じられる。その意味では、もちろん議席数は増やしていかないといけない。一方で、スキャンダルを取り上げたら報道ステーションやNews23に取り上げられるという、国民のためになってないビジネスモデルはそろそろやめなければならない。そこに抗い、困っている人を1人でも助けるという政治にどうやって変えていくのか。
選挙期間中の今は党首討論など、全ての地上波で各党が平等に扱われる唯一の“ハネムーン期間”だ。そのせいか、“比例は国民民主党に”“国民民主党にワクワク”みたいなハッシュタグができているので、すごく響き始めているとも感じている。今日(19日)も兵庫県の商店街を歩いていたら、若い店主が近づいてきて“玉木さん、見ていますよ。見比べたけど、経済政策は国民民主党が一番いい”と言ってくれた。“マニアだな、この人”とも思ったけど嬉しかった」。
作家の乙武洋匡氏は「党名を“子供・若者党”くらいに変えちゃって、未来のためにこういうことをやってる党だという戦略もあるのではないか」、視聴者からも、「政策はなかなかいいが、いかんせんPRが弱い。特にネット戦略。維新やれいわや共産党などは、ネットで人気が広がっている面がある」との質問が寄せられた。
玉木代表は「おっしゃる通りで、Twitterのトレンドを見ていると、れいわが上がってきて、“うまい”と感じる。私は党の中でもふざけている方だが、それでもキャラが薄いというところもあるので、もっとキャラ立ちしてガンガンやらないといけない。でも、そういうところで踏み切れない部分が私の、我々の真面目な部分。そこも含めてコーポレートアイデンティティ(CI)戦略だが、やっぱりなかなか伝統的なものを重視する方もいて…」と苦笑していた。(『ABEMA Prime』より)
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