週末の選挙戦を迎える衆院選。主要政党から代表者を招き、各党の政策やビジョンについて聞いてきた『ABEMA Prime』に20日、公明党の山口那津男代表が生出演。同党が描く“未来応援”について語った。
■“生命・生活・生存を最大限に尊重する人間主義”
公明党の理念、そしてビジョンについて「“生命・生活・生存を最大限に尊重する人間主義”だ。“大衆と共に”との立党精神を持っている。現場主義を大事にする。そして、いつも国会議員と地方議員のネットワークで連携をして物事を進めている。小さな声を聞く力が自慢だ。さらには“平和の党”、あるいは“福祉の党”というイメージができている。これは長い間の実績が皆さんに評価されたものと誇りを持っている。これからも公明党のこの特徴を活かして、連立政権の中で、なければならない力として頑張りたいと思っている。今回の選挙でも、その公明党の小さな声を聞く力。これを強く訴えて、連立政権の選択、公明党の勝利を皆さんに訴えている」と話す山口代表。
4年間の成果を振り返り、「教育負担を軽くするという公約は100%実現できた。政権も維持できる」と断言する。
「前の衆議院選挙では、特に実現していなかった幼児教育・保育の無償化、国では実現していなかった私立高校の授業料の実質無償化、そしてほとんどなかった大学など高等教育の無償化を強く訴えた。全てが完璧ではないが、負担の軽減ができたというところは良かったと思う。公約は他にもいろいろあるし、それらを含めれば、正直言って達成率は6〜7割かなと思う。そこは今も努力中だ。やはり掲げるからには、全く実現できそうもないことを掲げても信頼性がない。かといって、たやすく達成できることを掲げても、期待は小さくなる。これも国民の皆さんの声を聞いて、“ぜひやってもらいたい”というところを受け止め、財源や道筋も考えて提案をしている。だから公明党は公約の達成率が比較的高いのだと思う」。
今回の選挙でも、0歳から18歳(高校3年生)まで1人あたり一律10万円相当の給付をする“未来応援給付”の実現を謳う。
「公明党は、子育てや教育は国の戦略として社会全体で行うべきだという考えを持っている。ヨーロッパなどの先進国では、こうした子育て・教育に使われるGDPの比率は平均2.1%だ。日本は教育の無償化をやったが、それでもまだ1.9%。平均を超えられるくらい、施策を充実させていきたい。その考え方の一環として、今回はコロナで打撃を受けた子どもたちを一度限りでも応援するためにメッセージを送ろうと、“未来応援給付”を発表した。そして将来的には恒久的なものも含む“子育て応援トータルプラン”を充実させ、生まれてから社会に出るまで一貫して支援策を継続できるような全体像を作るという2段構えの考えだ。
今は子どもが0〜2歳のところの支援が弱い。出産費用の相場は50万円前後だが、一時金は42万円という低い水準で止まっているので、50万円まで引き上げ、産み育てたいという希望を持っている方に応えられるようにしたい。また、産後ケアのサービスを充実させるとか、あるいは家事や育児を手伝うようなサービスを増やしたい。そして子どもの医療費は自治体によってバラバラなので、高校3年生まで無償化できるよう段階的に進めたい。
その中には、教育負担を軽くすることも含まれる。教育格差の是正、つまり親の状況に関わらず、どの子どもにも機会、チャンスが平等に与えられるのが理想だ。その点から、親の所得で狭めるのでなく、やはり無償化してチャンスを与えることが大事だと思う。公明党は教科書の無償配布を野党時代に実現したこともある。また、今は当たり前に思われている児童手当も、最初は地方自治体で支給されていたものを、野党だった公明党が国でもやるべきだと主張して制度化され、発達していったという経緯がある。格差があるところを一つ一つ、きめ細かく埋めていく努力を行っているということだ」。
■一律給付の理由は?“ばらまき”には当たらない?
フリーアナウンサーの柴田阿弥は「家計の負担が増えた子育て世代への支援も含め、将来世代に向けた政策はとても大切だと思う。一方で、年収で切らず、一律とした理由もぜひ伺いたい」。
山口代表は「親の所得が多いか少ないかで子どもを区別するのは良いことではない。やはり日本の将来を担っていただく子どもたちを社会全体で育てよう、今は低い国の投資水準を少しでも高めていこう、という大きなメッセージを込め、一律でやるべきだと申し上げているということだ。また、所得制限を設けようとすると、いつの所得で、どういう基準でやるのか、不公平にならないようにはどうしたらいいかを調整するために時間がかかり、スピード感がない。今までのやり方の最大の欠点もそこだった。余裕がない、緊急性があるというときには、早くやるということが大事だ。コロナ禍で食費や光熱費がかさんでいる家庭が増えているし、不登校、あるいは自殺する児童生徒は過去最多になってしまった。今、子どもたちはとても厳しいストレスを抱えていると思う。そういう意味でも、子どもたちに焦点をしぼり、応援するというメッセージを送ることが大事だ」と説明。
また、視聴者からは「子どもに給付しても、管理するのは親ではないか」との質問も寄せられた。
山口代表は「現金でやれば、そういう問題も起きるかもしれない。しかし我々は“10万円相当の給付”と申し上げているので、例えば子育ての用途に限定し、10万円相当分のポイントを差し上げれば、親にとって都合のいい使い道は許されないし、溜め込むわけにもいかないし。そういう工夫もあり得ると思う。東京都では新生児に10万円相当のポイントを差し上げ、700ぐらいのメニューの中から物やサービスを選べるようにした。一方で、やはり現金給付にはスピード感がある。児童手当も、口座が分かっているのでそこへ振り込めばいい。もちろん、高校生で児童手当の対象になっていない人もいるから、今後も子育て支援の給付の仕方は工夫や議論が必要だと思う」と答えた。
一方、街頭演説では「あっちの党こっちの党が何十兆円だ、減税だと大層なことを言っているが、日本の将来の財政に責任ある発言かどうか」とも述べていた山口代表。お笑い芸人のパックンからは「やっぱり気になるのは財源だ。給付については一律の方がスピード感もあっていいだろうが、徴収についてはお金持ちの家庭、余裕のある家庭から多く徴収するのが当たり前ではないか。累進課税の加速、岸田総理もおっしゃっている“分配”についてはどのくらい前のめりになっているのか」と切り込んだ。
テレビ朝日の平石直之アナウンサーも「自民党の言う“分配”がどのくらいの規模を指しているかははっきりしないが、山口さんが“各党はバラまきすぎだ”という話をされていることからすると、岸田総理が分配しすぎだという場合、同じ与党としては止めるという方向になるのか」と尋ねた。
山口代表は「未来応援給付について申し上げれば、対象は2000万人弱になるので、財源としては約2兆円が必要だ。決算剰余金、つまり去年の予算の黒字が4兆5000億円あり、半分は国債整理基金に入れるルールになっているが、過去には特別な法律を作った全額を使ったこともあった。まさに国難というべきコロナ禍の被害だし、子どもたちの悲鳴は大きい。この決算剰余金を活かせば、未来応援給付の財源は生み出せる。
また、今の世代が負担をして借金を残さない。未来にツケをなるべく残さないというのが基本的な考え方だ。4.5兆円の決算剰余金以外にも、繰り越したものが30兆円近くあり、これも決まっていたが使わなくてよくなったという部分も出てくるはずだ。そのようにして、今ある財源を活用するというのが公明党の基本的な考え方だ。そして、累進課税で高額の所得者ほど大きい負担をしているから、これを子どもたちに配るということになれば、若い世代に移転されることになる。それが親の所得の低い子どもたちのところにもそれが行き渡ることになるのは、とてもいいことだと私たちは思っている」とした。
■選択的夫婦別姓、安全保障…自民党との食い違いはどうする?
平石アナが指摘したように、自民党とは1999年以来の協力関係にある政権与党でもある公明党。ただ、自民党とは考えが異なっている部分もある。例えば選択的夫婦別姓について、山口代表は「導入を早くから訴えている」と話すが、自民党は今回の衆院選の公約においても慎重な姿勢を崩していない。
山口代表は「自民党にはいろんな考え方がある。公明党が選択的夫婦別姓を言い出した20年近く前、自民党内では圧倒的に反対の人が多かった。しかし時代が変化する中で、自民党の中にも賛同する人が増えてきた。日本で暮らす外国人の中にはいろんな名前を併せ持っている人もいるし、夫婦別姓の国から来て暮らしている人もいる。また、一人っ子同士がカップルになり、それぞれが由緒ある、歴史ある名前を持っていて、どっちも失いたくないというケースも多い。そういった人たちの希望を叶えるためにも、やっぱり夫婦別姓は必要だと思う」と説明。
「夫婦別姓だけではなく、多様性を認める社会を作っていこうということで、性自認や性同一性などの理解増進法を作ろうということも訴えている。これも議員連盟に所属する自民党の方も含め、全会一致で合意ができている。あとは自民党がもう少し世の中との差を詰め、合意を作り出す努力をもう一歩頑張ってもらいたいということで、与党の中でも議論したい」。
さらにパックンからは「安全保障政策でも齟齬があると思う。総裁選で出てきた敵基地攻撃能力に関する議論や防衛費の問題について、公明党の“平和の党”のイメージに反するものもあるのではないか」と尋ねられると、「公明党は憲法の平和主義、それから専守防衛という理念をしっかり守った上で進めていきたい。敵基地攻撃能力というのは1956年頃に言われた、ちょっと古い考え方で、世の中は変化してきていている。もちろん、安全保障の環境も大きく変わっているから、それにふさわしい防衛は何か。日米安保体制の下での抑止力をどう確保するか。防衛費も限りがある。バランスよく主張していくという立場から、しっかり議論をして合意を作りたいと思う」と答えた。(『ABEMA Prime』より)
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