「理性がなくなったら自分がどうなるかわからない」咀嚼音、咳、くしゃみ…“特定の音”に激しい怒り ミソフォニア(音嫌悪症)の実態
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「食べ方が汚い人とかのクチャクチャ音とか(中略)特定の音が聞こえると怒りが一気にわき上がって不安が襲ってきてしまうんです」

【映像】「友達といるのはすごく楽しいのに――」 漫画『知り合いがミソフォニア(音嫌悪症)という病気だった話』(画像あり) ※冒頭〜

 2019年に漫画家・中川海二さんがTwitterで公開した『知り合いがミソフォニア(音嫌悪症)という病気だった話』が改めて注目を集めている。

「友達といるのはすごく楽しいのになんで――」

 ミソフォニアは音嫌悪症とも呼ばれ、咀嚼(そしゃく)音やくしゃみ、鼻をすする音など、他人が出す音を極端に嫌がる症状。耐えられずにその場から逃げ出したり、中には怒りの感情から相手を殴ってしまったり、攻撃的な衝動を伴う人もいる。

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 ニュース番組『ABEMA Prime』に出演した女子大生のサオリさん(仮名・19歳)も症状に悩む一人だ。「理性がなくなったとき、自分がどうなるか分からない」と話すほど、人の咀嚼音を不快に感じているサオリさん。中学2年生の頃から咀嚼音に不快感を持つようになり、家族と一緒に食事ができず、楽しかった友達との思い出さえ、かき消されてしまう。

 サオリさんの苦労は咀嚼音だけに限らない。オンラインで大学の講義を受けていると、口の中が乾いたような、ペチャクチャした教授の声が我慢できず、講義が受けられない状態に……。

 好きな動画を見て気分を落ち着かせても、感情のコントロールはうまくいかない。サオリさんは「トリガーの音を聞くと、その人に殴りたくなったり、“殺したい”という感情を持ってしまったりする」といい、湧きあがる怒りの感情を抑えようとしても、いつ爆発するか分からない。そんな不安な日々を過ごしている。

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 大学生のコウジさん(仮名・20歳)も過去、ミソフォニアに苦しんだ一人だ。不快感を自覚したのは、小学5年生の頃。鼻をすする音が気になり、徐々にくしゃみ、咳払い、あくびといった音に苦痛を感じていった。

「小学5年生あたりから徐々に花粉症の時期に鼻をすする音が気になっていった。ある日突然なったのではなく、最初、母親の鼻をすする音が発せられたときになんとなく不快感があって、少しずつ、自覚していった。それから、くしゃみに咳払いと、どんどん広がっていってトリガーになる音が増えていった。自分が出すそういった音も本当に苦手だ。鼻もすすったことがない。くしゃみとかは生理的に出してしまうが、何とか鼻をつまんだり、口を押さえたりして、何とか音を出さないように工夫していた」

 大学受験のときも、なかなか授業に集中できなかったというコウジさん。自分だけ明らかに周りと違うことに気づき、身近に同じような症状を持つ人もいなかった。家族にも相談できず、一人で耐えていた。

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 そんなコウジさんが、ある日、Twitterで症状に関連したワードで検索すると、類似の症状を訴える人を発見。ようやく自分がミソフォニアという症状であることを知った。コウジさんは徐々にトリガー音に慣れるよう、自身で考えた訓練を実行。現在、コウジさんはミソフォニアを克服し、当事者の会「日本ミソフォニア協会」を設立している。

「訓練は、内容を自分で考えたというより、そもそもミソフォニア自体、あまり治療法が確立されていない。治したくても、治療法がないように思う。なんとか、自己流で音に慣れる訓練をし続けたら、偶然治せたという感じだ」
(※番組より編集部注:大阪市立大学大学院耳鼻咽喉病態学の阪本浩一准教授は「当事者すべてに効果があるとは考えにくく推奨はしない」とコメント)

 静岡県内の特別支援学校で教諭として勤務し、ミソフォニアに悩む生徒を支援した経験がある鈴木雅義さんも「どのような症状なのか、分からない方もいると思う」と現状を語る。

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「私が担当した生徒も咳の音が苦手だった。曝露療法を調べて、本人の了承を得て試したところ、少し改善が見られた。ミソフォニアが、なぜ起こるのかというと、そこはまだ解明ができていない。本当にある一定の音に対してだけ、不快感や憎悪などの感情が生まれる。くしゃみと咳が同時に出たときに、咳が苦手な生徒が『(くしゃみじゃなくて)咳だったんだよ』と言うと『あ、そうなんだ、大丈夫』と言ったこともあったので、特定の音と認識したときに嫌悪感が強く出るのかなと思った。実際はイヤホンをしたり、ホワイトノイズ(広い範囲で同程度の強度となっているノイズ)だったり、そういったものを使いながら、対症療法を行うしかないと思う」

 ミソフォニアに悩む生徒を受け持ったことをきっかけに、当事者同士がオープンチャットなどで相談し合える場を作った鈴木さん。リーフレットなどを制作し、ミソフォニアについて理解を広める活動を行っている。

 ミソフォニアに悩む人たちに、周りはどのような対応をすればいいのだろうか。鈴木さんは「学校の現場は、我々教員の中で『この生徒はこういった音が苦手だ』と共通意識、共通認識をはかりながらやっていく必要がある」と話す。

「Twitter上で調査をさせてもらったが、ミソフォニアは小学生から中学生くらいで発症している人が多かった。教員に理解がなく『我慢して』『もうちょっと何とかならないのか』という接し方は減ってきていて、今は少しずつ改善されているように思う」

 前述のサオリさんも「友達に(症状について)伝えたとき『そうだったんだ。気を付けるようにするね』と言ってくれて、その後は普通に接してくれてうれしかった」と周囲からの理解に助けられたという。その上で「『神経質だから』や『気にしすぎ』といった、その人のつらい気持ちを否定するような言葉を使わないでほしい」と語った。

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 具体的な治療法が確立されていないミソフォニア。一人でも多くの人が症状を知り、理解を深めていく必要がありそうだ。(『ABEMA Prime』より)

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